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「着物と袴と羽織、あと帯と長襦袢と・・・」
フルセットで一から和服を揃えようと、私は必要なものを全てらくがき帳に書いていた。
足袋も必要だし、雪駄もいる。
できれば扇子も揃えたいし、私の和服もお揃いポイントを付けて作りたいのだ。
「生地・・・反物も仕入れたいけどどこで仕入れれるのかな・・・。」
もう、一人では考えきれないところに来てしまい、私はスマホを取り出した。
連絡先一覧から『那智さん』を探し出し、コールしてみる。
『もしもし?柚香さん?』
「!!・・・那智さんー・・・助けてぇ・・・」
『え?え?どうしたの?』
電話に出てくれた那智さんに、私は今考えてることを話していった。
圭一さんに和服をデザインしてプレゼントしたいこと、それは私もお揃いで作りたいこと、それと・・・その作成を那智さんにお願いしたいことなんかを・・・。
『・・・私!?』
「無理・・ですか・・?」
『いや、無理ではないけど・・・恋人さんと柚香さんの分だけでしょ?それならまぁ・・他の仕事もあるから1か月もあれば大丈夫だけど・・・』
「ありがとうございますっ!・・・ところで反物を仕入れれるところとかご存知ないですか?私、デザインする側なので仕入れ先とかあまりないんですー・・・。」
『あー・・・今度仕入れの人と連絡とるから聞いてみるね?希望の生地とかある?』
その言葉に、私は和服を作ると決めた時から気になっていた生地を答えた。
「・・・『本場大島紬』。」
『!?・・・最高級じゃない!え、予算とか大丈夫なの?』
「まぁ・・・。あ、ちゃんと仕立て代をお支払いしますので乗せてくださいー・・。」
『わ・・わかったわ・・・。とりあえず寸法を送ってくれる?どれくらいの金額になるか試算出してみるから・・・。』
「はいっ!・・・あ、あと圭一さんの会社には内緒でお願いします・・・」
『ふふ。それくらいわかってるわよ?じゃあまたねー。』
電話を切り私は飛び跳ねたい気持ちを押さえながらスマホを握りしめた。
『デザイン』という二次元の状態から形にまで持っていけそうなのだ。
「やったぁぁっ・・!!」
引き受けてくれた那智さんに感謝しながら私は寸法をデータ化し、那智さんのパソコンに送信した。
那智さんからの連絡を心待ちにしながら、圭一さんにバレないように計画を立てていったのだった。
ーーーーー
ーーーーー
「姐さん、最近忙しそうですね。何かしてるんですか?」
那智さんと連絡を取りながら和服作りを進めていたある日、陽太さんが聞いてきた。
仕事場であるタワマンにしょっちゅう行ってることに気付かれたみたいだ。
「べっ・・別に・・・?ちょっと仕事が詰まってるだけだよ・・・?」
「?・・・そうですか。あまり忙しいと体調崩しますんで気を付けてくださいね?」
「う・・うんっ、ありがとう。」
気が付けばもう年が明けて結構な日にちが経っていた。
私が眠っていた期間や、退院するまでにかかった時間、それに体力が戻るまでに結構な時間を要したみたいで、今はもう1月の末。
気を使ってくれたのかイベント事は全てスルーしてくれたようで、ずっと『日常』状態だったのだ。
(来年は・・・ちゃんとしたいな。)
そんなことを秘かに思いながらも、私は今日も仕事部屋であるタワマンに足を運ぶことにした。
陽太さんが運転してくれ、夕方くらいにお迎えをお願いして仕事に取り掛かる。
今日は那智さんと最終確認をするのだ。
「もう仮縫いが終わってるってメールで教えてくれたけど・・・仕上がったらどうしよう、送ってもらおうかな。」
私が寸法を送った数日後に那智さんは生地の仕入れ屋さんに反物のことを聞いてくれ、私の希望だった本場大島紬を仕入れてくれたのだ。
色と柄はオビデオ通話で見せてもらい、順調に縫ってくれてる。
「ほんと那智さん、神。」
報酬を上乗せして支払うことを決め、ビデオ通話を開始する。
スマホをスタンドに立てて、私はメモ用紙を取り出した。
「もしもしー?那智さーん?」
『はいはい、おはようっ。柚香さん。』
「いつもお世話になっております。急かすようで申し訳ないのですが、進捗状況は・・・」
そう聞くと那智さんはカメラを持ち、作ってくれてる作業場でもうほとんど出来上がってる着物たちを見せてくれたのだ。
『どうかしら?ちょっと余裕ができたから一気にしたの。あとは全体のチェックしたらもう送れると思うんだけど・・・』
「もうできたんですか!?・・・ほんっとすごいですぅっ!私のデザイン通り!!」
『まぁ、柚香さんとは長い付き合いだしね、わかるよー。』
「ありがとうございますっ!」
那智さんは普段の仕事が落ち着いたらしく、一気に縫い上げてくれたらしい。
真那ちゃんはあの時いた男の人が預かってくれてるらしく、気兼ねなく縫えたのだとか・・・。
『扇子とか雪駄はどうするの?用意しようか?』
「あ、それはもう別で手配してありますので・・・!」
『オーケー。じゃああとで配送手配するけど・・・時間と日にち指定にする?バレたくないよね?』
「!!」
基本的に圭一さんが荷物を受け取ることはないけど、もし・・・もし受け取ってしまったりすると確実にバレる。
一平さんや陽太さん、藤沼さんが受け取っても、きっと圭一さんに話がいくだろう。
「し・・指定がいいですっ!」
『だよね(笑)じゃあ日にちと時間、あと場所も決まったらメールしてくれる?それで手配するから・・・。』
「はいっ!何から何まですみませんー・・・。」
何から何までお世話になりっぱなりの私は電話を切った後、那智さんへのお礼を考えていた。
報酬は払うとして、他にも何か送りたいのだ。
「私・・デザインしか能がないんだけど・・・どうしよう・・・。」
とりあえず『消えもの』が一番いいかと思いながら、私は日にちと時間、それと場所を指定して那智さんにメールを送ったのだった。
「着物と袴と羽織、あと帯と長襦袢と・・・」
フルセットで一から和服を揃えようと、私は必要なものを全てらくがき帳に書いていた。
足袋も必要だし、雪駄もいる。
できれば扇子も揃えたいし、私の和服もお揃いポイントを付けて作りたいのだ。
「生地・・・反物も仕入れたいけどどこで仕入れれるのかな・・・。」
もう、一人では考えきれないところに来てしまい、私はスマホを取り出した。
連絡先一覧から『那智さん』を探し出し、コールしてみる。
『もしもし?柚香さん?』
「!!・・・那智さんー・・・助けてぇ・・・」
『え?え?どうしたの?』
電話に出てくれた那智さんに、私は今考えてることを話していった。
圭一さんに和服をデザインしてプレゼントしたいこと、それは私もお揃いで作りたいこと、それと・・・その作成を那智さんにお願いしたいことなんかを・・・。
『・・・私!?』
「無理・・ですか・・?」
『いや、無理ではないけど・・・恋人さんと柚香さんの分だけでしょ?それならまぁ・・他の仕事もあるから1か月もあれば大丈夫だけど・・・』
「ありがとうございますっ!・・・ところで反物を仕入れれるところとかご存知ないですか?私、デザインする側なので仕入れ先とかあまりないんですー・・・。」
『あー・・・今度仕入れの人と連絡とるから聞いてみるね?希望の生地とかある?』
その言葉に、私は和服を作ると決めた時から気になっていた生地を答えた。
「・・・『本場大島紬』。」
『!?・・・最高級じゃない!え、予算とか大丈夫なの?』
「まぁ・・・。あ、ちゃんと仕立て代をお支払いしますので乗せてくださいー・・。」
『わ・・わかったわ・・・。とりあえず寸法を送ってくれる?どれくらいの金額になるか試算出してみるから・・・。』
「はいっ!・・・あ、あと圭一さんの会社には内緒でお願いします・・・」
『ふふ。それくらいわかってるわよ?じゃあまたねー。』
電話を切り私は飛び跳ねたい気持ちを押さえながらスマホを握りしめた。
『デザイン』という二次元の状態から形にまで持っていけそうなのだ。
「やったぁぁっ・・!!」
引き受けてくれた那智さんに感謝しながら私は寸法をデータ化し、那智さんのパソコンに送信した。
那智さんからの連絡を心待ちにしながら、圭一さんにバレないように計画を立てていったのだった。
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「姐さん、最近忙しそうですね。何かしてるんですか?」
那智さんと連絡を取りながら和服作りを進めていたある日、陽太さんが聞いてきた。
仕事場であるタワマンにしょっちゅう行ってることに気付かれたみたいだ。
「べっ・・別に・・・?ちょっと仕事が詰まってるだけだよ・・・?」
「?・・・そうですか。あまり忙しいと体調崩しますんで気を付けてくださいね?」
「う・・うんっ、ありがとう。」
気が付けばもう年が明けて結構な日にちが経っていた。
私が眠っていた期間や、退院するまでにかかった時間、それに体力が戻るまでに結構な時間を要したみたいで、今はもう1月の末。
気を使ってくれたのかイベント事は全てスルーしてくれたようで、ずっと『日常』状態だったのだ。
(来年は・・・ちゃんとしたいな。)
そんなことを秘かに思いながらも、私は今日も仕事部屋であるタワマンに足を運ぶことにした。
陽太さんが運転してくれ、夕方くらいにお迎えをお願いして仕事に取り掛かる。
今日は那智さんと最終確認をするのだ。
「もう仮縫いが終わってるってメールで教えてくれたけど・・・仕上がったらどうしよう、送ってもらおうかな。」
私が寸法を送った数日後に那智さんは生地の仕入れ屋さんに反物のことを聞いてくれ、私の希望だった本場大島紬を仕入れてくれたのだ。
色と柄はオビデオ通話で見せてもらい、順調に縫ってくれてる。
「ほんと那智さん、神。」
報酬を上乗せして支払うことを決め、ビデオ通話を開始する。
スマホをスタンドに立てて、私はメモ用紙を取り出した。
「もしもしー?那智さーん?」
『はいはい、おはようっ。柚香さん。』
「いつもお世話になっております。急かすようで申し訳ないのですが、進捗状況は・・・」
そう聞くと那智さんはカメラを持ち、作ってくれてる作業場でもうほとんど出来上がってる着物たちを見せてくれたのだ。
『どうかしら?ちょっと余裕ができたから一気にしたの。あとは全体のチェックしたらもう送れると思うんだけど・・・』
「もうできたんですか!?・・・ほんっとすごいですぅっ!私のデザイン通り!!」
『まぁ、柚香さんとは長い付き合いだしね、わかるよー。』
「ありがとうございますっ!」
那智さんは普段の仕事が落ち着いたらしく、一気に縫い上げてくれたらしい。
真那ちゃんはあの時いた男の人が預かってくれてるらしく、気兼ねなく縫えたのだとか・・・。
『扇子とか雪駄はどうするの?用意しようか?』
「あ、それはもう別で手配してありますので・・・!」
『オーケー。じゃああとで配送手配するけど・・・時間と日にち指定にする?バレたくないよね?』
「!!」
基本的に圭一さんが荷物を受け取ることはないけど、もし・・・もし受け取ってしまったりすると確実にバレる。
一平さんや陽太さん、藤沼さんが受け取っても、きっと圭一さんに話がいくだろう。
「し・・指定がいいですっ!」
『だよね(笑)じゃあ日にちと時間、あと場所も決まったらメールしてくれる?それで手配するから・・・。』
「はいっ!何から何まですみませんー・・・。」
何から何までお世話になりっぱなりの私は電話を切った後、那智さんへのお礼を考えていた。
報酬は払うとして、他にも何か送りたいのだ。
「私・・デザインしか能がないんだけど・・・どうしよう・・・。」
とりあえず『消えもの』が一番いいかと思いながら、私は日にちと時間、それと場所を指定して那智さんにメールを送ったのだった。
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