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ゆりと桜介が食事を楽しんでいるころ、あるフォトギャラリーでちょっとした騒ぎが起こっていた。
「これ…同じカメラで撮ったのか?」
「あの場にはこのカメラしかなかったし、それにチェキだからほかの写真と同じだ。」
そう言いながら見ているのは、フィンが撮ったゆりの写真だ。
ゆりの写真を見つめながら話をしているのは、水着のCMを手掛けているプロデューサー。
フォトギャラリーを使って一般人からモデルを選ぼうとしていたのだ。
でも、予想外に写し方がいいチェキに、モデルとカメラマン両方が気になっている。
「光の取り込み方もいいし、なにより被写体がいい表情をしてる。」
「これ、誰が撮ったか調べます?」
「そうだな。撮ったほうと、被写体と両方から連絡が来るように出そう。」
そういって二人はゆりとフィンを探し出すため、ある行動に出たのだった。
ーーーーー
ゆりと桜介が同じ会社で働いていていたことがわかってから数週間の時間が流れた。
ゆりの働いている姿が見たくて、桜介はこっそり見に来るのが日課になっている。
(林田に聞いたけど、ユリアって20か国くらい話せるって本当だったのか…)
来る客に合わせて言葉を巧みに操るユリア。
それは英語だけでなくロシア語にイタリア語、中国語にも及んでいたのだ。
(ほんとすごい人材だな、ユリアは。)
そんな人材をしっかり採用してくれた林田に感謝していると、スマホが鳴った。
相手は林田だ。
「もしもし?どうした?」
『社長!大変です!SNS見てください!』
「SNS?」
言われた通りに見てみると、トレンドの1位に『謎の美少女探しています』とあった。
そこから最新情報を見てみると、そこにユリアの写真が載っていたのだ。
「!?」
『これ、秋篠さんですよね!?今、メディアがこぞって探してます!』
なぜそんなことになってるのかと思ってSNSを見ていくと、ほかの文字も現れ始めた。
そこには『カメラマンの手腕』や『コンテスト優勝』などといった文字がある。
「一体何が起こってるんだ…?」
原因を究明すべくSNSを見ていくと、ある一つの画像が目に留まった。
それは、大手メディアの自社ビルの壁に掛けられたユリアの写真だ。
「これ…写真を引き伸ばしたのか!?」
ビルの壁一面を覆うほどの巨大な写真だ。
画像にはそれをじっと見つめてる人もいるように見える。
「すぐに撤去の要請をしないと…!」
俺は急いで社長室に向かい、そのメディアに電話をかけた。
当事者ではないけれと、身内ということにしてなんとか撤去を頼む。
「本人は現在仕事中です!あとで電話をかけさせますので、先に撤去してください!」
個人情報がだだ洩れになることを懸念して言うと、向こうは驚く言葉を言ってきたのだ。
『ご本人様から許可は頂いておりますので、本人様から連絡がありましたら撤去の要請に応じます。それまでは掲載させていただきます。』
「は…?許可取ってあるって…?」
俺は一旦電話を切り、急いでユリアのもとへ向かった。
そこにいたほかの受付たちに断りをいれ、ユリアを社長室に連れていく。
「ど…どうしたの?急に…。」
「ユリアの写真がメディアの自社ビルに掲げられてる!ユリアがSNSのトレンドの1位になってるんだ!」
「え…!?」
エレベーターに乗ったとき、俺は自分のスマホから話題のSNSを見せた。
するとユリアはそれを見て、小さな声で呟いたのだ。
「これ…フィンと一緒にフォトギャラリーに行った時のだ…。」
「フォトギャラリー?」
「う…うん、なんかコンテストみたいなのをしてて、そこでフィンが撮ったんだけど…。」
「それ、同意書か何か書かされたりした!?」
「同意書…?あ、あったわよ?チェキを自社所有の壁に貼ることを許可しますとか、コンテスト入賞者を探すため、SNSで呼びかけますとか…。」
「!!…それか!」
ちょうどエレベーターが到着し、ドアが開いた。
ユリアの手を引きながら部屋に向かう。
「でも入賞とかすると思えないんだけど…。」
「入賞どころか優勝だよ。とりあえず、向こうはユリアを探してる。その写真の掲載を取り下げてもらうために電話かけるから!」
「う…うん…。」
俺は社長室に入るなり電話をかけた。
そしてユリアに代わり、スピーカーでことの詳細を聞いていく。
「えっと…私に何かご用でしょうか?」
『ご足労をおかけしますが、弊社に足を運んでいただけますでしょうか?お話はそこでさせていただきたいと思います。』
「わ…かりました。それって私一人じゃないとダメですか?」
『いえ、同伴者様をお連れでも構いません。』
「わかりました。では行きます。」
『お待ちしております。』
スピーカーでの電話を終えたあと、俺は車の鍵を持った。
そのままユリアを連れて、メディアの本社に向かう。
「サク、仕事は!?」
「そんなのいいから!ネットに流れてる情報を止めないと回収できなくなる!」
車に向かうまでの間に林田に連絡を入れ、俺は片っ端から削除依頼をかけるように伝えた。
インターネットを扱う会社の代表を務めているんだから、横のつながりは結構あるほうだ。
(それでも1カ月はかかるだろうな…。今はこれ以上増えないように手配して…)
どうするのが一番早く回収できるかを考えながら、俺とユリアはメディアの本社に向かったのだった。
ゆりと桜介が食事を楽しんでいるころ、あるフォトギャラリーでちょっとした騒ぎが起こっていた。
「これ…同じカメラで撮ったのか?」
「あの場にはこのカメラしかなかったし、それにチェキだからほかの写真と同じだ。」
そう言いながら見ているのは、フィンが撮ったゆりの写真だ。
ゆりの写真を見つめながら話をしているのは、水着のCMを手掛けているプロデューサー。
フォトギャラリーを使って一般人からモデルを選ぼうとしていたのだ。
でも、予想外に写し方がいいチェキに、モデルとカメラマン両方が気になっている。
「光の取り込み方もいいし、なにより被写体がいい表情をしてる。」
「これ、誰が撮ったか調べます?」
「そうだな。撮ったほうと、被写体と両方から連絡が来るように出そう。」
そういって二人はゆりとフィンを探し出すため、ある行動に出たのだった。
ーーーーー
ゆりと桜介が同じ会社で働いていていたことがわかってから数週間の時間が流れた。
ゆりの働いている姿が見たくて、桜介はこっそり見に来るのが日課になっている。
(林田に聞いたけど、ユリアって20か国くらい話せるって本当だったのか…)
来る客に合わせて言葉を巧みに操るユリア。
それは英語だけでなくロシア語にイタリア語、中国語にも及んでいたのだ。
(ほんとすごい人材だな、ユリアは。)
そんな人材をしっかり採用してくれた林田に感謝していると、スマホが鳴った。
相手は林田だ。
「もしもし?どうした?」
『社長!大変です!SNS見てください!』
「SNS?」
言われた通りに見てみると、トレンドの1位に『謎の美少女探しています』とあった。
そこから最新情報を見てみると、そこにユリアの写真が載っていたのだ。
「!?」
『これ、秋篠さんですよね!?今、メディアがこぞって探してます!』
なぜそんなことになってるのかと思ってSNSを見ていくと、ほかの文字も現れ始めた。
そこには『カメラマンの手腕』や『コンテスト優勝』などといった文字がある。
「一体何が起こってるんだ…?」
原因を究明すべくSNSを見ていくと、ある一つの画像が目に留まった。
それは、大手メディアの自社ビルの壁に掛けられたユリアの写真だ。
「これ…写真を引き伸ばしたのか!?」
ビルの壁一面を覆うほどの巨大な写真だ。
画像にはそれをじっと見つめてる人もいるように見える。
「すぐに撤去の要請をしないと…!」
俺は急いで社長室に向かい、そのメディアに電話をかけた。
当事者ではないけれと、身内ということにしてなんとか撤去を頼む。
「本人は現在仕事中です!あとで電話をかけさせますので、先に撤去してください!」
個人情報がだだ洩れになることを懸念して言うと、向こうは驚く言葉を言ってきたのだ。
『ご本人様から許可は頂いておりますので、本人様から連絡がありましたら撤去の要請に応じます。それまでは掲載させていただきます。』
「は…?許可取ってあるって…?」
俺は一旦電話を切り、急いでユリアのもとへ向かった。
そこにいたほかの受付たちに断りをいれ、ユリアを社長室に連れていく。
「ど…どうしたの?急に…。」
「ユリアの写真がメディアの自社ビルに掲げられてる!ユリアがSNSのトレンドの1位になってるんだ!」
「え…!?」
エレベーターに乗ったとき、俺は自分のスマホから話題のSNSを見せた。
するとユリアはそれを見て、小さな声で呟いたのだ。
「これ…フィンと一緒にフォトギャラリーに行った時のだ…。」
「フォトギャラリー?」
「う…うん、なんかコンテストみたいなのをしてて、そこでフィンが撮ったんだけど…。」
「それ、同意書か何か書かされたりした!?」
「同意書…?あ、あったわよ?チェキを自社所有の壁に貼ることを許可しますとか、コンテスト入賞者を探すため、SNSで呼びかけますとか…。」
「!!…それか!」
ちょうどエレベーターが到着し、ドアが開いた。
ユリアの手を引きながら部屋に向かう。
「でも入賞とかすると思えないんだけど…。」
「入賞どころか優勝だよ。とりあえず、向こうはユリアを探してる。その写真の掲載を取り下げてもらうために電話かけるから!」
「う…うん…。」
俺は社長室に入るなり電話をかけた。
そしてユリアに代わり、スピーカーでことの詳細を聞いていく。
「えっと…私に何かご用でしょうか?」
『ご足労をおかけしますが、弊社に足を運んでいただけますでしょうか?お話はそこでさせていただきたいと思います。』
「わ…かりました。それって私一人じゃないとダメですか?」
『いえ、同伴者様をお連れでも構いません。』
「わかりました。では行きます。」
『お待ちしております。』
スピーカーでの電話を終えたあと、俺は車の鍵を持った。
そのままユリアを連れて、メディアの本社に向かう。
「サク、仕事は!?」
「そんなのいいから!ネットに流れてる情報を止めないと回収できなくなる!」
車に向かうまでの間に林田に連絡を入れ、俺は片っ端から削除依頼をかけるように伝えた。
インターネットを扱う会社の代表を務めているんだから、横のつながりは結構あるほうだ。
(それでも1カ月はかかるだろうな…。今はこれ以上増えないように手配して…)
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