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思ってもみなかったプレゼント。

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三橋さんに相談をした翌日、私は兄と会うことになり電車に乗っていた。
4時間ほどガタゴトと揺られて待ち合わせ場所である駅に辿り着き、喫茶店に入る。

「いらっしゃいませ、おひとり様でしょうか?」
「いえ、待ち合わせなんですけど・・・」
「左様でございますか。では入り口がよく見えるお席にご案内致しますね。」

長い髪の毛を一つに束ねたきれいな女の人に4人掛けの席に案内され、私は席に着いた。

「ご注文はどうされますか?お連れ様が来店されてからにします?」
「あー・・いえ、ホットティーをお願いします。」
「かしこまりました。」

注文を済ませた私は鞄を隣の席に置いた。
兄が入って来るであろう喫茶店の扉を見つめる。

(いつも時間はきっちりしてるからもう来るかな?)

そんなことを考えながら腕につけてる時計を見た時、喫茶店の扉が開く音が聞こえてきた。

「いらっしゃませ。お一人様でしょうか。」
「いえ、待ち合わせしてまして・・・あ、あそこです。」

兄が入ってきたのに気がついた私は手を振って合図を送っていた。
兄は気づいてくれたようで、店員さんに説明をしてる。
そして私が座ってる席までやってきて、向かいに座った。

「待った?」
「ううん?今着いたとこ。」
「悪いな。俺が行けたらよかったんだけど・・・。」
「いいよ、私の方が動きやすいんだし。」

兄は人気な弁護士だからか、クライアントさんとの打ち合わせがびっしり入ってる人だ。
だから遠出があまりできず、会うときはこうして私が出向く形を取ってる。

「凜華から『空き巣に入られた』ってメール来た時、ゾッとしたぞ?」
「ごめんごめん。」
「で?進捗は?」
「それが・・・」

私はまだそんなに進捗がないことを兄に伝えた。
警察の方からの連絡は無いし、正直、捕まえれるのかどうかも怪しいところだ。

「転売されてたんだろ?それなら誰が転売してるのかはわかるから捕まえれるとは思うけどな。」
「そうなの?」
「あぁ。ネット世界は匿名で活動できるけど実は匿名じゃない。だから下手打つと全部調べ上げることができるんだ。」
「へぇー・・・。」

私にとっては難しいことでも、兄にとっては容易いこと。
よくわからないけど、兄が『捕まえれる』というのなら間違いは無さそうだ。

「『窃盗』は罪だからな。犯人が捕まったら取れるだけ取ってやるよ。」
「ふふ。その辺はお任せしますよ。敏腕弁護士さん?」
「任されよ。・・・じゃあお前の進捗を聞かせてもらおうかな。」
「!!・・『任されよ』?ふふっ。」

私と兄は時間の許す限り、お互いの近況を話していった。
最近始めたことや、大変だったこと、それに・・・恋の話なんかを。

「え、お前、気になってるやついんの?」
「気になってるというか・・・告白?みたいなのをされて・・・」
「へぇー?どんなやつ?」

兄の言葉に、近衛さんの職業を伝えるか迷った。
相容れない職業なのは、向こうもこっちも同じなのだから・・・。

「えっと・・・」

言い渋るようにして視線を反らすと、兄は私の顔を両手で包み込み、ぐぃっと視線を合わせさせられた。

「なに?俺に言えない職業?まさか検察官とか?」
「う・・・近いものが・・・?」
「近いもの?なら・・・警察官?」
「えと・・・そう・・です・・・。」

しっかり合わせられた視線に逆らうことができずに答えると、兄は笑みをこぼしたのだ。

「お前のことだから俺の職業も伝えたんだろ?」
「!?・・・なんでそれ・・・」
「妹のことなんか手に取るようにわかるさ。・・で?その後に告白されたのか?」
「う・・うん・・・。」
「なるほど。」

少し考えるようなそぶりを見せた兄だったけど、私の手をガシッと掴んで今度は真剣な顔になった。

「お前が『いい』と思うなら兄ちゃんは反対しない。」
「『反対しない』って・・・え、だって警察官だよ?」
「『お前が』いいって思うならな。お前の言い方だったら向こうも嫌悪感ださなかったんだろ?」
「!!」

確かに兄の言う通り、近衛さんは何も言わなかった。
それどころか兄を褒めてさえいたのだ。

「・・・いいやつに好かれたな。」
「----っ。」
「ま、付き合うようになったら一度会わせてくれよ?兄ちゃんが品定めしてやる(笑)」
「えー?近衛さんが驚いちゃうよ。」

そう言うと私の言葉に驚いたのか、兄の動きが一瞬止まった。

「『近衛』?そいつ、近衛っていうのか?」
「え?うん、そうだよ?近衛さんがどうかした?」
「あ・・・いや・・・。」

また何か考え事をするような仕草を見せてる兄。
気になりながらも紅茶を一口飲むと兄が口を開いた。

「お前さ・・テレビとか見てる?」
「テレビ?見てないよ?家に無いもん。」
「だよな・・。じゃあ音楽とか・・・」
「?・・聞く媒体がないよ。」
「だよな・・・。」
「?」

一体何が聞きたいのかと思ったけど、ふと腕時計の時間を見るともうタイムリミットが近づいてきていた。

「あ、お兄ちゃん。もうそろそろ行かないと・・・。」

兄は兄でこのあと仕事がある為、戻らないといけない。
私はホテルに一泊する余裕なんてないからこのまま帰るのだ。

「もうこんな時間か。このまま帰るんだろ?」
「もちろん。」
「ならこれ持って帰れ。」
「?」

兄は持っていた鞄から小さな紙袋を取り出し、私に渡してきた。
何が入ってるのかと思いながら中を見てみると、そこに・・・スマホがあったのだ。

「え!?」
「月々は俺が払ってやる。一応全部使い放題にしてあるから自由に使ったらいい。」
「え!?ちょ・・・自分で払うよ!?」
「ばーか。お前は借金返すことだけ考えろ。早くペイしないと生活が苦しいままだぞ?それに連絡が仕事場のPCのメールだけとか使い辛いんだよ。」
「う・・・。」
「しっかり稼げるようになったら、兄ちゃんにプリンでも買ってくれ。じゃな。」

そう言って兄は喫茶店の伝票を持ち、お会計をしに行ってしまった。

「ありがとう・・・っ!お兄ちゃん!」

そう叫ぶと同時に会計が終わり、兄は手を振って喫茶店から出て行ってしまったのだ。
残された私も電車の時間があることから鞄を持ち、喫茶店を後にする。

「初めてのスマホだ・・・。」

早く触ってみたい気持ちを押さえながら、私は駅の改札をくぐった。
そしてやって来た電車に乗り込み、席に座って紙袋からスマホを取り出す。

「すごい・・・。」

普段からパソコンを触ってる私は操作方法がなんとなくわかるようで、無事電源を入れることができた。
そして出てきた画面を、説明書を見ながら触っていく。

(えっと・・・電話帳がこれで・・・って、お兄ちゃんの電話番号が入ってるじゃん。)

1件だけ入っていた連絡先。
それはもう覚えてしまってる兄の携帯番号だった。

(あとはメール・・・あ、LINEがあるのか!)

よく聞く『LINE交換』という単語。
メールのツールであることは知っていたけど、自分が使うのは初めてのことだ。

(わぁ・・・楽しい・・・!)

いろいろ考えながら見てると、ピコンっ・・!と通知の音が鳴った。
画面を見るとLINEのところに『1』という数字が出てる。

(?)

何が起こったのかわからずにタップしてみると、『兄』と書かれたところにメッセージが来ていたのだ。

(なんだろう。)

気になってタップすると『もう電源入れたか?』というメッセージが。

(ふぁ・・・!どうやって返事するのかな。)

画面の隅々まで目をやると、キーボードらしきマークを見つけた。
そこをタップするとキーボードが現れ、文字を打てるような表示が現れたのだ。

(えっと・・・『今、頑張ってる』・・・と。)

送信マークのようなものを押すと、私が打った文字がLINEの画面に表示された。
そしてすぐに兄から返事が来たのだ。

『家での充電器とモバイル・・・持ち運びできる充電器は中に入ってる。家に帰るまでに電池が無くなるだろうから使え。あとイヤホンも使えるようにしてあるから好きに使えよ。』

(えー・・・なんかいっぱい言われたけど・・何がどうって・・・?)

兄の言ってる意味が分からず、私は電車の中で使い方を覚えながら帰路についたのだった。




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