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繋がるピース。

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シャワーから出てきた桃は俺のワイシャツを着てくれていた。

ぶっかぶかすぎるシャツは桃の太ももまで長さがあり、腕も余りまくってる。

体格の差がありすぎる事実を再確認した俺は、ソファーから立ち上がった。


「座ってくれる?聞きたいことがいっぱいあるんだけど・・・」


そう聞くと桃はゆっくり歩いて手でソファーを確認し、座ってくれた。

俺はその隣に座り、順番に聞いていく。


「病院を抜け出した後・・・どこにいたの?」

「・・・大家さんのとこです。」

「そこでずっと暮らしてたの?」

「1週間くらい・・・」


真っ直ぐ前を向きながら喋る桃は、ゆっくり2年前のことを俺に教えてくれた。

桃は病院を抜け出した後、大家のところに行って匿ってもらい、仕事を辞める手続きと家を引き払う手続きを進めていたらしい。

1週間ほどでその手続きは全て終わり、遠くに引っ越そうと思って船に乗ったそうだ。

そこでこのリゾート島の就職話を知ったのだとか。


「船に一緒に乗り合わせた人が『やっぱり離島で働くのは嫌!』って言って・・・近くにいた私に話を振って来たんです。『代わりに離島に行って!』って・・・。」

「え・・・。」

「就職先も探してましたし、住むところも付いてくるって聞いて、ちょうどいいと思って・・・」

「そういうことか・・・。」


現地であるこの島に来た桃は統括部長に『代理で来た』と申し出て、登録をしてもらったそうだ。

現地登録だったから佐伯のチェックから外れてしまったようだ。


「工事のお手伝い・・・はできないのでできる仕事を振ってもらってここに住んでたんです。今はホテルの備品の詰め替えとか、アメニティのセットとかの仕事してます。・・・目が見えにくいんで・・」

「!!」


俺は手を伸ばし、桃の頬をそっと触った。


「その目・・・後遺症だよね・・・?」

「・・・・。」

「病院は?行った?」


俺の問いに桃は目を伏せ、首を横に振った。


「なんで・・・・」

「どの病院も大和さんの息がかかってるから・・・この島の診療所は詳しく調べれる検査機器もないし、薬だって少ない。だから生まれつきってことにしたんです。」


俺は自分の手を桃の顔の前でゆっくり振ってみた。


「どこまで見えてる?」

「手は見えてますよ。ただ、それは予測で『手』だと思ってるだけで・・・ほんとは何かわからないです。」

「俺の顔は?」

「・・・・わからないです。」


俺は思わず桃を抱きしめてしまった。

小さい体で後遺症を抱え込んで、かなり見えにくい世界で2年も過ごしてきた桃に何もしてやれない自分が悔しい。


「あの日・・・どうして姿を消した・・?俺が心配するって思わなかった・・?」


一番聞きたかった事だ。

どんな返事が来るのか怖くて聞けなくて・・・でも聞きたいこと。

桃の言葉を聞くのが怖くて・・・俺は自分の腕が微かに震えてるような気がした。


「・・・思いました。」

「ならどうして・・・!」

「大和さんだったら・・・きっと私を大事にしてくれると思って・・・」

「それ・・どういう意味・・・・」

「あの日・・・私の悲惨な姿・・見ましたよね・・・?」

「それはもちろん・・・・」


遅くなってしまったけど桃を助けに入った俺は、桃が一糸纏わぬ姿で怯え狂っていたのを見ていた。

首にはあいつの手の痕があり、髪の毛を引っ張られたのか乱れていたことも覚えてる。


「そんな姿・・・っ・・見られたくなかった・・・っ。」


桃は大粒の涙をぼろぼろこぼしながらそう言った。


「桃・・・・」

「すっ・・好きな人に・・っ・・そんな姿見られたくなかったの・・・っ。うぅっ・・・」


桃の体をぎゅっと抱きしめ、俺は背中や頭を撫でた。


「俺がそんなこと気にしないのわかってるだろう?」

「わかってる・・・っそれが嫌なの・・っ・・」

「え?」

「絶対大和さんは私に優しくする・・・っ・・首を絞められるような私に優しくするっ・・・」


桃は自分への評価が著しく下がってしまってるようだった。

優しくされる価値なんてないと思い込んでるのか、俺の気持ちが重たく感じてしまってるようだ。


(あの男にされてきた洗脳的なものがずっと残ってたのか・・・。)


それに気づかなかった俺にも責任はある。

でも桃に優しくすることしかできない俺は、他に手段が思いつかないのだ。


「俺は桃が好きだから優しくするんだよ?嫌いな奴には容赦しないし。」

「私は・・・一人がいい・・・っ」

「俺は桃が欲しい。」

「---っ。」


桃は俺の手で幸せにすると決めてる。

それは何があっても覆らないのだ。


「桃は気づいてないかもしれないけど・・桃は俺無しじゃ生きていけないんだよ。」

「え・・・・?」

「これ・・・好きだろ?」


そう言って俺は桃の頭を優しく一撫でした。


「!!」

「安心しない?」


桃の中に積もらせてきた『一撫で』。

不安なときにいつもしてきたことは必ず積もっていて、桃の一部になってるはずだ。


「しっ・・・しない・・っ。」

「本当?」


何度も何度も撫でると、桃はまた大粒の涙をぼろぼろとこぼし始めた。

自分の手で拭うけど、いくら拭っても溢れてきてる。


「桃?俺は桃が安心できる場所を作りたいんだよ。・・・ここじゃだめ?」


そう言って俺は両手を広げた。

金で解決できることもあるけど、桃の安心できる場所は俺の腕の中が一番だと思ったのだ。

桃の中で消えない傷は、俺と時間で癒してあげたい。


「---っ!・・・私、大和さんのところから逃げたんだよ!?」

「それは桃が優しいからだろ?俺に迷惑をかけない為。」

「それでも黙って消えたことは事実だよ!」

「でも今回は逃げなかった。それはどうして?」

「それは・・・・」






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