溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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桃。

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「あちらが幼小中高一貫校で、現在700名程通っております。交番は住宅エリアに3か所、リゾートエリアに3か所です。観光客が住宅エリアに入らないよう、出入り口となる道路は通行許可制にしてあります。島の真ん中は森が広がってますので観光客が立ち入って住宅エリアには来ないと思いますのでそのままにしてあります。」


部長は従業員として来てる住人たちの意見を聞き、いろいろ対策をしてくれたようだった。

細かいところまで考えてくれるのは、熱量が人一倍あるからだろう。


「助かるよ。俺じゃ考えが回らないことが多いから。」

「いえいえいえ!仕事ですから!!・・・住人のプライベートは大事ですからね。広いとはいえ『島』という閉鎖的空間にいるわけですし、見ず知らずの観光客が入れ代わり立ち代わりやってくるわけですし。」

「住人の為の娯楽も必要になってくるか・・・?その辺また追々調べて報告してくれるか?」

「もちろんです!」

「頼むよ。」


その後の案内は、部長は上機嫌で色々話してくれていた。

車から見える島の景色はどこを見てもきれいで、非日常を味わうにはまさにぴったりの場所だ。

海も穏やかだから泳ぐのもいいし、潜るのもよし。

朝早くから砂浜を歩いてみたり、夜は星を見るために空を仰ぐのもいい。

三日間くらい滞在してくれたらまた来たくなる場所に違いないのだ。


「これは想像以上だったかもな・・・。」


絶対当たると確信しながら俺は部長との島めぐり5時間コースを終えていったのだった。




ーーーーー



ーーーーー



「帰ってきたら夜って・・・桃がいるかどうか見にいけなかった・・・」


統括部長との島めぐりが終わった後もひっきりなしに呼ばれてしまい、宿泊場として取っておいたホテルに戻ったのは深夜だった。

今からメインホテルに行ったところでもう大半の従業員は帰ってるだろうし、今、勤務の従業員は初めての客の対応に追われてる頃だろう。


「くそ・・・明日だな・・・。」


そう思った俺だったけど、翌日はシステムに不具合が起きて駆り出され、一日中パソコンとにらめっこすることになってしまい、さらに翌日は住宅エリアの幼小中高一貫校に視察に行くことになり、なかなか桃のいるメインホテルに足を運ぶことができない日々を送ることになってしまった。


「明日・・!明日は絶対に行く・・!!」


そう決め、俺は四日目の朝早くにホテルを出た。

メインホテルまでは歩いていける距離で、せっかくだから砂浜を歩きながら行こうと思い、ビーチに降りれる階段を下っていく。

朝が早いのと、まだそんなに多くの観光客がいるわけではないからか人はいなさそうだ。


「ここから見える朝陽に一目惚れしたんだよなー・・・。」


数ある島でこの島を選んだ理由の一つが景色だった。

見渡す限りの海に反射する朝陽は『綺麗』なんて言葉で収まるものじゃなく、大切な人と見たい景色だと体で感じたのを今でもまだ覚えていたのだ。


「桃と一緒に見たい・・・。」


そう思いながら砂浜を歩いてると、前から女の人が歩いてきてることに気がついた。

白いスカートを浜風になびかせ、サンダルを砂に少し埋めながら地面を見ながら歩いてきてる。

帽子を目深にかぶり、少しふらついてる様子はどこか不安気だ。


(足・・怪我でもしてるのか・・?)


そんな心配さえしてしまうような様子を見ながら歩くうちに、女の人との距離が縮まっていく。

波があるから距離をあけてすれ違うことができそうになく、すぐ近くをすれ違いそうに見えた。

そしてゆっくり歩く女の人とすれ違う瞬間、強い浜風が吹いて女の人の帽子を吹き飛ばしてしまったのだ。


「きゃっ・・・!?」

「わっ・・・!」


俺は飛ばされた帽子を拾いに行き、帽子についた砂を手で払った。

そして女の人のところに戻り、その帽子を差し出す。


「どうぞ。」

「あ・・ありがとうございます。」


礼を言いながら女の人は帽子を受け取ったけど、俺はその声と姿に覚えがあった。

すこし低いけど甘い声に、長い髪の毛。

大きい目に小柄な体をしていた女の人は・・・桃だったのだ。


「え・・・っ?」


驚きのあまり、俺は『桃』と呼べなかった。

桃は俺から受け取った帽子を目深にかぶり、歩き出そうとしてる。


「ちょ・・ちょっと待って・・・!」


思わずそう呼び止めると、桃は帽子が飛ばないように両手でつばを押さえながら振り返った。


「?・・・なんでしょうか?」

「え・・いや、なんでしょうかって・・・・」

「?・・・どこかでお会いしましたか?」


その時、俺は桃の視線に違和感を感じた。

じっと俺を見てるものの、どこか焦点が合ってない気がするのだ。


「目・・・・」

「すみません。ちょっと目が悪くて見えなくて・・・私の知り合いでしょうか?」

「!!」

「ぼやっとは見えてるんですけど・・・ハッキリとはわからなくて・・・・」


2年ぶりに会った桃は、視力が悪くなっていたのだ。

原因はおそらく2年前の事件。

あの時首を絞められた後に視界が悪くなってそうだったのを俺は覚えていた。


(後遺症・・・・)


恐らく桃は後遺症を持ったまま病院から出て行ったのだ。


「あの・・・?御用が無いなら私・・仕事があるので失礼します・・・ね?」


そう言って桃は歩き出した。

どう声をかけたらいいかわからずに固まっていた俺だったけど、どうしても俺に気がついて欲しくて・・・かすれる声で呼んだ。


「も・・も・・・・?」


俺の声を聞いた桃は、歩いていた足をピタッと止めた。

そしてゆっくり・・・ゆっくり振り返った。


「や・・大和さん・・・・?」

「・・・うん。」

「どうしてここに・・・・」

「俺が聞きたいくらいだけど・・・この島、俺が所有してるんだよ。」


俺はこの島を買い取り、リゾート地にしたことを桃に説明した。

これは桃に出会う前からの計画で、何年もかけて作り上げた観光地なことを。


「うそ・・・・だってYKホールディングの名前は無かったはず・・・」

「これは別事業だから違う名前でしてるんだよ。」

「!!」


桃は驚いたのか、後ろに後ずさりし始めた。


「わ・・私・・仕事があるので・・・・」


そう言ってこの場を去ろうとした桃だったけど、後ろは海。

波で濡れた砂浜に足を取られ、桃の体がぐらっと傾いてしまった。


「きゃっ・・・!?」

「危ない・・・!」


姿勢を崩した桃を助けようと手を伸ばすものの間に合わず、俺は桃の体を支えるようにして波打ち際に一緒に倒れてしまった。


「・・・・。」

「・・・・。」


海水をかぶってびしょ濡れになってしまった俺は立ちあがり、桃に手を差し出した。


「桃、手・・・」

「大丈夫です。」


海水を吸って重くなったスカートを抱えながらゆっくり立ち上がった桃。

裾を持ってぎゅっと絞り、スカートをバサッと広げてパンパンっと叩いていた。


「一回帰らないと・・・」


そう呟いて来た道を戻ろうとした桃だったけど、俺は彼女の姿を見てぎょっとした。

海水に濡れた服のせいで下着が透けて見えてしまってるのだ。


「ちょ・・・!」

「?」


俺は濡れてしまった自分の上着を脱ぎ、桃の体にかけた。

そして桃の膝裏に手をあて、ひょいと抱え上げる。


「ひゃあっ・・!?」

「服、透けてる。」

「へ!?」

「俺が取ってるホテル、すぐそこだからそこで着替えて。」


そう言って俺は歩き始めた。

『下着が透けて見えてる』と言ったからか、桃は体に力を入れてぎゅっと身を小さくしていたけど、少し歩くとその力も抜けていったのを腕で感じた。

心なしか細くなったような気もする桃の体は相変わらず軽くて小さくて・・・腕の中にずっと閉じ込めていたくなりそうだ。


「仕事は欠勤の連絡入れておくから、シャワー浴びて体温めて。いい?」

「・・・・」


ホテルの部屋の前で桃を下ろしながら言うと、桃はそっぽ向いて返事をしなかった。

このままだと濡れたまま逃げるかもしれないと思った俺は、笑顔で桃に言う。


「・・・返事しないなら俺と一緒に入ることになるよ?」

「!!・・・はい。」

「いい返事。じゃあ行っておいで。」


扉を開けて桃を中に入れ、俺はフロントに戻った。

このホテルの支配人のところに行き、小声で頼みごとをする。


「悪い、従業員用のシャワー室貸してくれないか?」

「社長!?え・・!どうされたんですか!?」

「ちょっと海に落ちたんだよ。部屋のシャワーは事情があって使えなくてさ・・・頼む。」

「それは構いませんが・・・・」

「助かるよ。・・・あ、あと予備で置いてある制服、ちょっと借りるな。後で新品で返すから。」


俺は従業員用の扉をくぐり、備品室から服を一式頂戴してシャワー室に入った。

ざざっと海水を洗い流して制服に着替え、ホテルの部屋に戻る。


「・・・桃はまだシャワーみたいだな。」


バスルームからシャワーの水音が聞こえてくる。

けど、ここで俺は桃の着替えが無いことに気がついた。

用意させようにも佐伯は別件の仕事だ。


「仕方ない。」


俺は自分の荷物からワイシャツを取り出し、バスルームに向かった。

そっと扉を開けて、桃に聞こえるように大きな声で話しかけた。


「桃・・桃ー?」

「は・・はいっ。」

「着替えないからこれ着て?置いとくから。」

「・・・ありがとうございます。」


目につきやすいようにとタオルのところに置き、俺は扉を閉めた。

ソファーに座って桃がシャワーから出てくるのを待つ。


「桃・・・」


いろいろ聞きたいことがある。

どうして病院から抜け出したのか、どうしてここで働いてるのか・・・どうやって佐伯の目を掻い潜って島に来れたのか・・・あの目はどれくらい見えてるのか・・・。


「教えてくれるだろうか・・・。」


そう思ったとき、ガチャっと音がして桃がバスルームから出てきた。


「大和さん・・・シャワーありがとうございました・・・。」




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