溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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行方不明の桃。

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ーーーーー



桃の顔を拭いてあげようと思ってハンカチを濡らしに行った俺は、病室に戻った瞬間、そのハンカチを床に落とした。

さっきまでベッドで寝てた桃の姿が・・・どこにもないのだ。


「・・・桃?」


辺りを見回しながら俺はベッドの周りを見て回った。

もしかしたら桃がベッドから落ちてしまったのかもしれないと思って。

でも・・・


「いない・・・。」


ふと点滴を見ると、針がおかしな場所に入ってるのが見えた。

医者か看護師が外したのならちゃんと処理されてるはずなのに、無造作にプラスチックのトレイのようなものの中に入れられていたのだ。

まるで針からぽたぽたと垂れ落ちてどこかを汚すのを防ぐように施された処理に桃の影が見える。


「出て行った・・・?」


意識を取り戻したばかりの桃がそんな行動をするとは思えなかった。

でも現に桃の姿はない。

なら誰かに連れ去られたか、出て行ったかの二択なのだ。


「あっ・・!鞄・・・!」


俺は部屋にあるはずの桃の荷物を探した。

もしここに桃の荷物があったら、桃はここがどこだかわからずに部屋を出てしまった可能性が出てくるのだ。

でも・・・


「ない・・・。」


荷物はおろか、桃の服も消えていたのだ。


「桃・・・!!」


俺は病室を飛び出た。

辺りを見回して桃が行きそうなところを覗いていく。


「桃っ・・・!桃!!」


トイレや空いてる病室をくまなく探すものの、桃の姿はない。

俺は近くにいた看護師に桃がいなくなったことを伝えた。

手のあいてる職員たちが総出で桃を探し始める。


「髪の毛がロングの女の子を探してます・・・!」

「桜庭さーん・・!桜庭さん、どこですかー!?」

「こっちにはいません!」

「こっちもです!」


大きい病院で人の目を掻い潜って桃を外に連れ出すことはほぼ不可能だ。

そう考えたら桃は一人で出て行った可能性が高くなってくる。


「どうして出て行った・・・?」


桃の真意がわからず、俺は廊下で壁にもたれかかった。

すると廊下に髪の毛が不自然に落ちてるのが見えたのだ。

長くて茶色い髪の毛で・・・まるで桃の髪の毛のようだ。


「なんでこんなに髪の毛が?」


不審に思った俺はその髪の毛を探して、廊下を見つめながら歩いた。

まるでヘンゼルとグレーテルのように感じながら歩いて行くと、男子トイレのところにもその髪の毛が落ちていたのだ。

ここは桃の部屋に近いトイレだ。


「まさか・・・」


俺は中に入り、個室を一つ一つ覗いていった。

すると一つの個室に髪の毛が大量に落ちていたのだ。

毛色と長さから桃の髪の毛だ。


「自分で切って出て行ったのか!?一体どうして・・・!?」


俺は慌てて病院の外まで走っていった。

目を覚ましたばかりの桃はまだ足取りは軽くない。

追いかければ追い付くと思ったのだ。

でも病院の外に出ても桃の姿は見つけられず、右に向いて走って行けばいいのか、左に向いて走って行けばいいのかわからなかった。

正解の方向を見つけないと桃に出会える確率がぐっと減るからだ。


「桃・・・。あっ・・!ホテルに戻るかもしれない・・・!」


そう思った俺はホテルに電話をかけ、桃が帰ってきたら足止めするように頼んだ。

他にもカフェや桃のアパートの大家の家なんかにも電話をして、桃の姿が見えたら俺に連絡するよう頼んでいく。


「すぐ見つかる・・・よな・・・?」


俺は一抹の不安を覚えながらも桃が見つかる・・もしくは自分から出てきてくれることを願うしかなかった。



だけど・・・桃が見つかることはなく、ただただ時間だけが無情にも流れていったのだった。


ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー



桃が行方不明になったあと、俺は幾度となく桃のアパートを訪ねていった。

鍵を持ってないから開けることもできず、ただ外から様子を見ることしかできなかったけど、ここに桃がいるかもしれないと思って俺は声をかけに通っていた。


「桃ー?いるー?いるならそろそろ出ておいでー?」


暇さえあればそう声をかけていたけど、桃が行方不明になって2週間の時間が流れたとき、状況が変わった。

桃の部屋が・・・・空き家になっていたのだ。


「・・・え?」


扉が開いたままの状態にされた桃の部屋。

覗き込むと中は空っぽになっていて・・・きれいに掃除されたあとだった。


「どうして・・・・」


そう思ったとき、腰を曲げ、ゆっくりとした足取りで一人の老人が俺の側にやってきた。

随分なお歳のような女性は、俺を上から下までじろじろと見てる。


「YKホールディングの社長さんかい?」

「え?・・・えぇ、そうですけど・・・」

「桜庭さんを気遣っていっぱい電話をかけてきてくれてありがとうね。」


その言葉にこの人がこのアパートの大家であることを理解した俺は、桃の居場所を聞きたくて老人に詰め寄った。


「桃は!?桃はどこに!?」

「そのことだけど・・・桜庭さんから伝言を頼まれてるんだよ。」

「伝言・・・?」

「あぁ。」


老人は一つ咳ばらいをしてから話し始めた。


『大和さん、私を助けてくれてありがとう。これ以上お世話になるなんてできないから・・さよならさせてください。本当に・・ごめんなさい。』


「桃は今どこに・・・?」

「それは教えられないよ。桜庭さんはあんたの優しさが辛いと言っていたからね。」

「辛い?」

「何があったか聞いてるけど、きっとあんたは桜庭さんの傷を癒そうとする。それが辛いんだとさ。何も返せないから。」

「・・返して欲しくて優しくしてるわけじゃないですよ。」

「それでもあの子にとっては辛いんだよ。ならもうそっとしておいてやるのが・・・最後の優しさなんじゃないかい?」

「・・・。」


確かに、桃が望むとおりにするならこのまま放っておくのが一番いい。

でも桃は傷ついてる。

元カレに殺されかけて・・・傷ついてるはずだ。

その傷を俺じゃない誰かが癒すなんて・・・考えただけでも嫉妬ものだった。


「俺の優しさが辛いなら・・・その辛さも優しさで包むまでのこと。」


そうつぶやき、俺は老人の目を見た。


「教えてください。桃はどこに?」

「だからそれは言わないって・・・・」

「言わないなら強硬手段を取りますよ?」

「え?」

「アパートの周りの土地、全部買い取ってマンション建てます。コンシェルジュをつけて警備体制もバッチリにします。家賃はこのアパートの半額。」

「えぇぇ!?」

「アパートに住む人はいなくなるかもしれませんねぇ・・・」


教えてくれないならアパートを潰すと脅しをかけてみた。

桃と収益を天秤にかけさせるわけだけど、どうしても桃の情報を手に入れたい俺は卑劣な手段だって喜んで使うのだ。


「・・・はぁー・・・全く・・・」

「教えてくれますか?」


これで折れてくれなかったらどうしようと内心思いながら聞くと、老人は俺に背を向けた。

歩きながら顔だけ俺のほうに向け、ぼそっと呟くように言った。


「教えなくてもそのうち会えるだろうよ。」

「え?それってどういう・・・」

「お前さんが進めてるぷろじぇくとがあるだろう?それが鍵さ。」

「?」


そう言って老人は去って行ってしまった。

どうやら俺が脅しとして使った言葉が嘘だったことを見抜かれていたようだ。


「待て待て待て・・・プロジェクトの話、なんで知ってるんだ・・?」


まだ内々で進めてる事業だ。

誰も知らないはずなのにあの老人が知ってることに俺は驚いていた。


「どっから情報仕入れてるんだか・・・。」


そんなことを思いながらも俺は老人の言葉を思い返していた。

『プロジェクトが鍵』という言葉が桃の居場所のヒントらしい。


「『教えなくてもそのうち会える』とも言ってた・・。プロジェクトと関係あるのか・・・?」


よくわからない内容に頭を悩ませていた俺だったけど、その言葉を元に桃を探し始めた。

でも1週間経っても1ヶ月経っても桃を見つけることができず、とうとう2年の月日が流れてしまったのだった。






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