溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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消える姿。

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佐伯の言葉に俺は我に返った。

男の首を絞めていた手を離し、俺は桃の側に屈んだ。


「・・・悪い佐伯、毛布かなんかあるか?」

「もちろんです!」


佐伯は部屋から出て行き、代わりに警察が中に入って来た。

俺に伸された男と裸の女。

どっちに非があるかは一目瞭然で、警察は男の腕を引っ張り上げて立たせていた。


「少し落ち着いてからでいいので、事情聴取させてください。」


桃の様子を見て気を使ってくれたのか、警察はそう言って男を連れて出て行った。

現場の写真を何枚か撮り、全員が引き上げていく。


「社長!毛布です!」


車に乗せてあった毛布を取って来てくれた佐伯が部屋に戻ってきた。

俺はその毛布を受け取り、桃にそっとかぶせていく。


「桃・・・?毛布かぶろうな・・?」


そう言って頭の上から毛布をかけると、桃の体がびくっと跳ねた。

恐怖からか、何をしても怖いようだ。


「やだっ・・・!いやぁっ・・・!」

「大丈夫、かけるだけだから・・・」


壁に自分の体を押し当てて逃げようとする桃。

その姿を見た佐伯が言葉を失ってる。


「社長・・今日の業務、できるだけ後日に回しますけど打ち合わせだけはどうしても外せないです。」

「わかってる。」

「最大限に遅らせますけど・・・19時が限界なんで・・・それまでに戻ってきてください。」

「・・・・・わかってる。」


今日はどうしても外せない打ち合わせが一件ある。

それは俺抜きでは進めれない話だ。


(よりにもよって無人島のリゾート地計画の打ち合わせの日にこんなことが起きるなんて・・・)


島を丸ごと買って、そこにホテルや飲食店、ショップなんかを建てる計画をずっと前から進めてきていた。

ビーチの整備や、環境問題、それに移動手段の確保なんかで苦戦してきたものの、観光地として軌道に乗ってくれれば今以上に業績を伸ばせられる。

従業員は家族ごと移住できるように街も作るよう手配し、もう一つの国を作ってるような感覚で進めてきたプロジェクトだ。

ここでこけるわけにはいかない。


「19時には戻る。大丈夫だ。」


そう佐伯に伝えると、佐伯は頭を下げて桃の部屋から出て行った。

しーんと静まり返った部屋の中で、桃が震えて衣擦れする音だけが聞こえてくる。


「桃、病院に行きたいんだけど・・・行けそう?」


なるべく優しく問うものの、桃は俺が動くたびに怯えてしまって話ができるような状態じゃなかった。

酸素がまだ体中に行きわたってない影響か、視界がぼやけてるみたいでピントが合ってない。

俺が目の前にいてるのに・・・わからないようだった。


「やだ・・もういや・・・・」

「桃?病院、わかる?」

「もう許して・・・・っ」


ぼろぼろと涙を流して耳を塞ぐ桃。

強引に連れて行くこともできたけど、こんな状態の桃にそんなことできるはずなかった。


「どうしたもんだか・・・」


悩んでるうちに時間は過ぎていき、辺りは薄暗くなっていった。

腕時計を見ると時間はもう18時。

あと30分ほどでここを出ないと、打ち合わせに間に合わなくなってしまう。


「桃?俺がわかる?」


毛布にくるまって壁にもたれかかってる桃に問うと、返事がなかった。

恐る恐る手を伸ばして毛布をめくると、目を閉じで微動だにしない桃の姿があった。


「眠ってる・・・?いや、気を失った感じか・・?」


どっちにしても意識がないなら好都合だ。

俺は桃の体を毛布ごと抱きかかえ、家を出た。

車の後部座席に寝かせ、一旦部屋に戻り、桃の荷物を持って鍵をかける。

そして猛スピードでうちと提携してる病院に向かった。


「だいぶ長い間目が見えてなかったみたいだし・・・後遺症とか残らないといいんだけど・・・」


そんな心配をしながら着いた病院で、俺は医師と看護師に桃を引き渡した。

意識を失った状況を説明し、全身の検査をお願いする。


「脳を重点的にお願いします。結果は俺に・・・」

「わかりました。すぐに検査します。」


ストレッチャーに乗せられて運ばれていく桃を見送り、俺は会社に戻った。

会議室に集まった100人の面々と話を詰めていく。


「集まっていただきありがとうございます。各々進捗からお願いします。」


そう声をかけ、どうしても外せない打ち合わせが始まっていった。




ーーーーー



ーーーーー



「ん・・・・あれ・・ここどこ・・・・」


いつの間にか知らないところに来ていた私は目を覚まし、辺りを見回していた。

視界はぼやけてるものの、鼻につく消毒液の匂いや独特の空気感から・・・どうも病院のようだ。


「なんで病院・・・」


そう思ったとき、私は目を覚ます前に何があったかを思い出した。

大和さんと一緒にアパートに戻ったとき、慎太郎が部屋にいて襲われたんだった。


「首を絞められたとことまでは覚えてる・・・そのあと・・・どうなったの?」


外に大和さんがいたことから、きっと大和さんが慎太郎をどうにかしてくれたに違いない。

でも大和さんが私の部屋に入ってきたのなら、きっと・・・私の酷い姿を見たことだろう。


「服を脱がされて首を絞められてるとこ・・・見られたよね・・・」


もしかしたら慎太郎に無理矢理犯されてるところも見られたかもしれない。

そう思うと私の目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちていったのだ。


「やだ・・・見られたくなかったよ・・・」


好きな人には自分の一番かわいいところだけを見ててもらいたい。

誰だってそう思うはずだ。

首を絞められて苦痛に顔を歪め、気絶するような姿は見られたくなんてない。


「もうやだ・・・・」


私は何もかもが嫌になり、ベッドの上でごろんっと横を向いた。

目に入るのは三つの点滴だけだ。


「ケガとか・・してない・・のに・・・・・」


痛いところは特にない。

でも視界が急にぼやけてきて、私はかろうじて意識を保つことで精いっぱいだった。

重くなる瞼は重力に抗えない。


「結城社長、お連れ様はこちらのお部屋です。」

「ありがとう。」


部屋の外からそんな声が聞こえてきて、私は耳をそちらに向けた。

目は開けることができないけど、『結城社長』という言葉に大和さんだとわかったからほんの少し意識が保てそうだった。


(大和・・・さん・・・・)


会いたくないけど動くことすらできない私はそのまま寝てるしかできなかった。

ガラガラと扉が開く音が聞こえ、足音が二人分近づいてくる。


「意識はまだ戻らないものの、検査結果は大丈夫でした。脳にも異常はありません。」

「よかった・・・。あ、だいぶ目がぼやけてたみたいなんですけど・・・」

「一時的なものと精神的なものが重なってしまったのかもしれないですね。ケアに長い時間を要すると思います。」

「そうですよね。どういったことが効果的ですか?」

「一概にこれとは言えないんですけど・・・本人さんの好きなこととかですかね。しばらくは何度も思い出すでしょうし、できるだけ現場には近づかないほうがいいかもしれませんね。」

「そうですか・・・。」

「退院できそうになるまでこちらで様子も見ますし、本人さんが希望されるならカウンセリングもありますので、またお声がけくださいね。」

「ありがとうございます。」


そんな会話ののち、大和さんはベッドの隣で屈んだ。

布団の中にある私の手をそっと握り、瞼を開けれない私の頭を撫でてるのがわかる。


「ごめん、すぐ気づいてあげれなくて・・・。異常が無くてほんとよかった。」


大和さんはずっと私に話しかけてくれ、今回のことを話してくれていた。

慎太郎は警察に捕まり、このあと裁判が待ってるらしく、一番軽い刑でも懲役がつくことは間違いないらしい。


「慰謝料とかも請求できるし、また目が覚めたらゆっくり話そうな?・・・あれ?泣いた跡がある・・・まだ消えてなかったのか?ちょっとハンカチ濡らしてくるから待ってて?」


そう言って大和さんは病室から出て行った。


「・・・大和さん、優しすぎるよ・・・」


軽蔑されても仕方ないくらいの状況だったはずだ。

それなのに私の心配をしてくれる大和さんが優しすぎて・・・辛かった。


「・・・へへ、優しいのが辛いなんて・・・おかしいね。」


私は重たい体を起こし、点滴の針を抜いた。

近くにあったプラスチックのトレイに、ぽたぽたと垂れ落ちる針先を入れてベッドから降りる。

そしてベッド脇の棚に置かれていた私の荷物を取り、病室を出た。


「着替えなきゃ・・・。」


私は男子トイレの個室に入り、服を着替えていった。

鞄から小さい鋏を取り出し、髪の毛を少しずつ切っていく。


「よいしょ・・・よいしょ・・・・」


切った髪の毛は鞄に押し込んでいく。

そして感覚だけでまばらなショートヘアを作り、スカーフを腰に巻いた。

これだけでかなり印象が変わるはずだ。


「体・・重たい・・・」


私は気合を入れ、トイレの個室から出た。

ここで体調が悪いような歩き方をすればすぐに声をかけられてしまう。

だから病院から出るまでは『お見舞いに来てる人』のフリでもしながら歩かないといけない。


(大和さん・・ごめんなさい。・・・ほんとに・・・っ・・・ごめんなさいっ・・・)


心の中で何度も謝りながら私は病院内を歩き続け、外に出て行ったのだった。







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