溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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軟禁・・・?

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ーーーーー



翌日、仕事に行く準備が終わった私がホテルのエントランスホールに向かうと、そこに結城さんの姿があった。

黒いスーツに身を包んだ人数人と一緒にいて、何か話をしてるようだ。


「?」

「あ、おはよ。桃。」

「お・・はようございます。お仕事・・ですか?」


そう聞くと黒いスーツの人たちはバラバラな方向に散っていってしまった。

仕事にしては何かおかしい気がする動きに、私は散っていった人たちに忙しく視線を向けてしまう。


「あぁ「、桃専用のSPの配置に来たんだよ。」


不思議な単語を聞いた私は首を大きく右に傾けた。

『SP』なんて単語、映画の中でしか聞いたことがない。


「へ・・・・?」

「ホテルの中と外に配置しとくし、カフェの周りも配置しておくね。移動するときは一緒についてきちゃうけどそこは気にしないで?」


その言葉を聞いて、私は結城さんが一体何をしたのか理解した。


「え!?ちょ・・!!・・はい!?」

「これで俺がいない時にあいつが来ても大丈夫。桃は仕事に専念できるよ?」


にこにこ笑いながら言う結城さんに、私は開いた口が塞がらなかった。

どこからどう突っ込んでいいのかわからず、口をぱくぱくさせることしかできない。


「桃、鯉みたいになってるけど・・・大丈夫?」

「いやいやいや・・・・!」

「そんな桃もかわいいな。」


結城さんは私の手を握り、ホテルの外に向かって歩き始めてしまった。


「ほら、仕事遅れるんじゃない?急がないと。」


そう言われ、ホテルのロビーにある時計に目をやると、時計は『8時半』を指していた。

9時には店についてないとオープンに間に合わない。


「わぁ・・!!」

「ほらほら。あ、帰りは何時くらい?閉店までいる?」

「そ・・うですね、閉店まではいます。パートさんはたぶん来てくれると思うんですけどアルバイトの子は来ないと思うので・・・」


昨日の状況から考えたら今日も来ないだろう。

『融通が利く』ということを売りにして雇った人たちだし、仕事より優先しないといけないことだってあるものだ。


(ミキちゃんはもう一つのバイトが落ち着いたら来てくれるかもしれないなぁ。)


そんなことを思ってるうちに私は結城さんの車の助手席に乗せられていた。

走りだした車の中で、気になってることを結城さんに尋ねてみる。


「あの・・結城さん?」

「ん?どした?」

「お名前・・・存じてないのですが・・・お聞きしてもいいですか?」


そう、私は結城さんの下の名前を知らないのだ。

経営者ということだから調べたら出てくるだろうけど、本人の・・・結城さんの口で教えてもらいたかったのだ。


「!!・・・照れるんだけど。」


結城さんは自分の手の甲を口にあて、少し恥ずかしそうに前を向いていた。

思っても見なかった表情を見てしまい、自然と私の頬が緩んでいく。


「・・・ふふっ。」

「俺、桃に名前で呼ばれたら一生幸せになれる自信ある・・・」

「えー?じゃあ何度もお呼びしないとだめですね?」

「あー・・・もう。」


結城さんは照れながらも、少し小声で名前を教えてくれた。


「・・・大和やまとだよ。」

「やまと・・・さん。」

「~~~っ。」

「ふふっ。」


名前を呼ぶだけで幸せな気持ちになる。

こんな時間を過ごせるようにしてくれた結城さんに感謝しながら、私は彼の名前を呼んだ。


「・・・大和さん。」

「!!・・・もう苗字で呼んで欲しいくらいだよ。」

「『結城さん』に戻します?」

「~~~~っ。・・・好きにして。」


照れまくってる大和さんを『かわいい』と思ったことはナイショだ。

いつも余裕ぶってる彼がこんなに照れるのは、恋人である私しか見れない一面かもしれない。


「そういえば・・・大和さん、寝てるんですか?夜にお仕事されてるって前にお聞きしたんですけど・・・」


朝は私と一緒にいて、夜は仕事だったら寝てる時間がなさそうだった。

顔色は特に悪くなさそうだけど、無理をしてないか気になったのだ。


「寝てるよ?」

「そうですか。・・・え、ちなみにどれくらい・・・?」


私の言葉に大和さんは見事なまでに明後日のほうを向いた。

きっと言えないくらい短いんだろう。


「・・・今度、お休みの日が決まったら一緒にお昼寝しませんか?睡眠不足は体に悪いですし・・。」


運転される大和さんなら、一瞬の判断ミスで大事故に繋がってしまうかもしれない。

ケガとかして欲しくない私は、少しでも体を休めて欲しくてそんな提案をしたのだ。

なのに・・・


「一緒に昼寝?」

「はい。」

「それって・・・ベッドで二人で寝転がるの?」

「え?・・・そうですけど・・・」


寝るのならふかふかなベッドが一番だ。

ぐっすり眠れることは間違いない。

そう思ったとき、大和さんが私の手を握り、手の甲にちゅっとキスをした。


「寝かせないかもしれないけど・・・いいの?」

「・・・え?」


信号待ちで私を真剣に見つめてくる大和さん。

その意味はわかるけど、私は返事に困ってしまった。


「なーんて、冗談だよ。」

「へ?」

「俺、一度寝たらなかなか起きないし、桃が起こしてくれるなら昼寝もいいかもね。」

「そう・・なんですか。」


大和さんは握っていた手を私の膝の上に戻したあと、手を離した。

そして私の手をぽんぽんっと優しく叩き、ハンドルに手をあてた。


「ほら、そろそろ着くよ?SPが近くにいるから何かあったら大声で助けを求めるんだよ?」

「あ・・・はい。」


大和さんは車をお店の裏口に止めてくれ、私は助手席から降りた。

すると一人、黒いスーツを着た人が近くに立ってるのが見えた。


「いってらっしゃい。」

「・・行ってきます。」


助手席の扉を閉めると、大和さんは車を走らせ始めた。

姿が見えなくなるまで手を振り、私はこの日一日SPの人たちに見守られながら仕事をしたのだった。



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