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安心感。

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「・・・そろそろいけるか?」


桜庭さんが寝息を立て始めて2時間が経ったころ、呼吸が少し楽になったような気がして俺は彼女を抱えてゆっくり立ち上がった。

自分の胸に押し当てるようにしてぎゅっと抱きしめて歩き始める。


(心なしかちょっと顔色もよくなったような?)


彼女の顔をじっと見る機会なんてそうそうない俺は、これを機にじっと見つめてしまっていた。

きれいな肌に長いまつげ、ちいさな唇が目に入りその頬に手を添える。

俺の手で顔が全部隠れてしまうほどの小さい顔に、胸がきゅっと締め付けられた。


「何もかも小さくて愛しいな・・・。」


男は守りたい生き物だ。

何もかも小さい彼女はすぐに壊れてしまいそうで、庇護欲が生まれてくる。


「早く元気になって俺のことを好きだって言って・・?待ってるから。」


そう呟きながら寝室に入り、ベッドに寝かせる。

ぐるぐる巻きにした毛布はそのままにしてそっと寝かせ、手を離そうとしたとき俺のシャツがぎゅっと握られてることに気がついた。

離そうにもぎゅっと握られていて離せそうにない。

それどころか彼女の表情が少し険しく見えた。

どうも悪い夢でも見てるようだ。


「・・・仕方ない。」


俺は彼女の隣に寝転び、その小さな体をぎゅっと抱き寄せた。

腕枕をし、背中をよしよしと撫でていく。


「大丈夫。俺がいる。俺がいるから。」


そう言って撫で続けていくうちにだんだん眠くなってきた俺は大きなあくびをした。

ふわっと香る彼女のいい匂いにもあてられ、瞼が重たくなっていく。


「・・・起きれる自信はないな。」


夜に溜めこんでる仕事をこなし終わるのは明け方5時。

そこから2時間ほど寝てこのホテルにくる毎日を過ごしてる。

年ということもあり、さすがに限界が来てるようだ。


「悪い、佐伯・・・今日は夜も仕事に戻れない・・・」


そう呟きながら俺は柔らかい彼女を抱きしめて深い眠りについていったのだった。




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翌朝・・・。


「ゆっ・・結城さん・・・?」


桜庭さんの驚いたような声が聞こえた俺はまだ半分夢の中だった。

側でずっと聞いていたいかわいい声が聞こえてきて、手探りで小さな体を探して抱き寄せる。


「ふぁっ・・・!?」

「んー・・・よしよし・・・・。」


ぎゅっと抱きしめて撫でると、最初こわばっていた体から力が抜けるのを手で感じた。

ほんのり温かい体温に、熱が下がったことを実感する。


「・・・ん?」


何かおかしいことに気がついた俺は目を開けた。

すると顔を真っ赤にした桜庭さんが俺の胸のあたりにいたのだ。


「あれ?桜庭さん・・・?」

「~~~~っ。」


寝ぼけてるからか状況が上手く呑み込めず、今、起こってることを頭で整理する。


(えーと・・昨日桜庭さんは熱を出したけど、今は体はそんなに熱くなかった。でも顔は赤くて・・・ん?なんで顔は赤いんだ?)


俺はもう一度彼女を見た。

すると俺の腕が彼女をがっちり抱きしめてしまっていたようで、抜け出せれずに顔を真っ赤にして照れていたのだ。


「わっ・・・ごめん・・・」

「~~~~っ。」


自分のしてたことに驚きながら腕から解放すると、彼女はゆっくりその体を起こした。

そして毛布にくるまりながら恥ずかしそうに俯いた。


「・・・おいで?」


恥ずかしそうな顔をしていた彼女だったけど、その表情は少し嬉しそうにも取れた。

安心感を求めてるのなら、目いっぱい抱きしめてあげたいと思ったのだ。


「う・・・・」

「ほら・・・」


右手を差し出すようにして挙げ、空間を作ってあげると彼女は悩みに悩んで俺の腕の中に倒れ込んできた。

その勇気を褒めるために、ぎゅっと抱きしめて背中を擦っていく。


「ふぁ・・・。」

「よしよし。」


何度も何度も擦っていきながら俺は自分の顔を彼女の頭に摺り寄せた。

すると彼女はゆっくり顔をあげ、俺と目を合わせてくれた。

まだ完全に目が覚めてない俺は、その甘えるような目線に視線に俺は彼女の頭を撫でた。

そしてそのまま顔を近づけ、彼女の唇に自分の唇を重ねていく。


「んっ・・・」

「柔らか・・・」


軽く唇を重ねただけの軽いキス。

それだけだけど俺が彼女のことをどれだけ想ってるのか伝えたくて気持ちを目いっぱい込めた。

そして息を絡め合いながらそっと唇を離す。


「六日あげるから俺に『愛してる』って言わせて?ちょっと昨日仕事さぼったからたぶん・・・次に来れるのは六日後だと思うんだ。」


そういうと彼女は顔を真っ赤にして両手で隠した。

隠しながらも首を微かに建てに振ってくれてる。


「かわいいな。・・・ごめん、そろそろ行かないと。」


俺はベッドから出て彼女に布団をかけた。

まだ病み上がりだから今日一日は寝ていて欲しいくらいだ。


「あとで胃に優しそうなもの届けてもらうね。しっかり寝てるんだよ?」


そういって彼女の体をぽんぽんっと叩き、俺は寝室を出た。



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寝室から出て行った結城さんの気配が消えるまで布団に潜りこんでいた私は、また頭の中がパニックになっていた。


(キスしちゃった・・・!?)


目が覚めたとき、結城さんの腕の中にいたことに驚いた私は身を捩ってなんとか出ようとがんばっていた。

でもがっちり抱きしめられていてそれは敵わず、仕方なくその逞しい体に身を寄せていたのだ。


(何かスポーツでもしてそうなくらいがっちりした体だった・・・。)


逞しい体は『守られてる』という安心感を与えてくれ、心地がいいものだった。

ぎゅっと抱きしめられてるのも『必要だ』と言ってもらえてるようでうれしく感じた自分がいたのだ。


(『おいで』って・・・すごくくすぐったいけど喜んでいっちゃう言葉だ・・・。)


初めて言われた『おいで』なんて言葉。

あんな優しい声で言われたら誰だって飛び込んでいきそうだった。

私に限らず、他の女性だって結城さんに言われたら迷うことなく飛び込んでいくだろう。


(結城さんに・・他の女性・・・)


そう考えたとき、私の中で初めて嫉妬心が生まれた。

彼が私じゃない他の女性に『おいで』って言ったり、さっきのキスをすることを想像したらもやっとした気持ちが生まれたのだ。


(そんなの・・やだ。)


知恵熱を出して頭の中がクリアになった私は自分の気持ちの整理ができた。

六日後、迷うことなく結城さんに返事ができそうだ。


(ちゃんと体調を整えないと。)


いつもの自分に戻るため、私はベッドから起き上がった。

六日後の為にできることをしようと、身を引き締めて行動を開始したのだった。



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