溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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海辺。

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ーーーーー



「きれいですねー・・・。」


駐車場の側にあった幅の広い階段を一段ずつ降りると、目の前に広すぎる海が広がっていた。

太陽の光を受けてきらきらと水面が輝いてる。


「桜庭さんは泳いだりする人なんですか?」


人一人分くらい開けて立ってる結城さんは、片手をポケットに入れて同じ海を見つめてる。


「うーん・・・海は無いですねぇ・・・」

「じゃあプールとか?」

「プールも・・・小学生くらいの時の記憶しかないですねぇ・・。うち、私が小さい時に両親が事故で他界してるので、祖父母が育ててくれたんですけど、あまりお金を使わせたくなくて・・・」


10歳の時に交通事故で二人が他界してから、母方の祖父母が私を引き取ってくれて育ててくれたのだ。

高齢だった祖父母はすでに年金暮らしをしていて、遊びに行くお小遣いをもらうなんてことできるはずもなく、私は家で本を読んだり料理を手伝ったりして中学を卒業するまでを過ごした。

高校に入ってすぐにアルバイトを始めて家計の足しになるように頑張ったけど、祖父母は私が高校3年生の時に他界してしまったのだ。


「え、じゃあ一人暮らししてたんですか?」


結城さんが階段を降り始めたのを見て、私も同じように足を進めた。

一段一段をしっかり降りながら、続きを話していく。


「はい。家は祖父母の持ち家でしたし、不動産の遺産があったのでそれを売って学費にあてて・・・って感じですね。」


大学を卒業するまでは祖父母の家で暮らし、付き合っていた慎太郎とは卒業と同時に同棲を始めたのだった。

今思えば同棲する必要があったのかわからない。


(まぁ・・あの事が無ければずるずる付き合ってたかもしれないし・・そう考えたらよかったのかも。)


そんなことを考えながら最後の一段を踏み、私は砂浜に立った。

柔らかい砂の上にはところどころ石があり、小さな貝殻なんかも見える。


「住んでいたお家はどうしたんですか?」

「あ、売りました。再開発かなんかで立ち退きも来てたんで・・・。」

「なるほど・・・。」


ここまで話をしたとき、私は結城さんを覗き込むようにして見た。


「?」

「結城さんはどんな生活をして来たんですか?」

「え、俺ですか?」

「はい。私も話したんで・・・結城さんのことも聞きたいです。」


結城さんのことを聞くために乗った海ドライブ。

上手く話を振れたと自分でも思った。


「うーん・・・普通の子供だったと思いますけど・・・。」

「普通?部活とか・・・」

「あー・・ほぼ帰宅部だったんですよ。高校の時に起業して忙しかったですし・・・。」


その言葉を聞いて私は歩いていた足をピタッと止めてしまった。


「へっ・・・?」

「貯めていた小遣いやお年玉なんかを全部使ってパソコン一式を買いそろえて・・・今の『YKホールディング』の基礎を作ったんです。」


結城さんは独学で流通の勉強をし、『何に』需要があるのかを見つけ出して投資をしてお金と人脈を作って今の大きさにまで成長させたと教えてくれた。

ほぼ何を言ってるのかわからなかったけど、先見の目と判断力に優れ、揺るがない信念がある人なことだけ私には理解することができたのだった。


「すごい・・・。」


ぽかんと口を開けて聞くことしかできない私に向かって、結城さんは困ったように笑いながら言った。


「すごくはないですよ。ただ『こうしたらいいんじゃないか』とか『こうすればもっと楽に全員が同じことをできるんじゃないか』とか考えちゃうだけで・・・。」


その考え方が今のYKホールディングを作り上げてるけど、まだ満足はしてなさそうな表情だ。

こんな人に『好きだ』と言ってもらえる私は・・・一体何ができるんだろうと思ってしまう。


「・・・すごいですよ。私、高校の時は毎日アルバイトしかしてなかったですし・・勉強もそんなにできるほうでもなかったんで・・・」


大学卒業後、ずっと働いていたカフェで採用してもらえることが決まり、引っ越し先のここで店長という役職をもらえたくらいだ。

結城さんと比べて勝手に落ち込んでると、彼は私の前に回り込んで少し身を屈めた。

同じ高さの視線に、少し胸がどきっとする。


「・・俺は桜庭さんのほうが凄いと思いますけど?」

「え?」

「毎日来るお客さんの顔と名前、全部覚えてますよね?」

「それはもちろん・・・」


毎日来店される方は注文されるものもいつも同じだ。

そのコーヒーを作りながら世間話もするもので、名前や職業、年齢、家族構成なんかがその会話に入ってきて覚えてしまう。

そしてその会話から得た内容に合う話を次回来店時にして話が弾み、また来店してくれるのだ。


「俺はそういうきめ細かい気配りができないほうなんで・・・尊敬してますよ?」

「---っ。・・いや、十分できてると思いますよ?私なんかを助けていただいて・・泊まるところやこうやってお洋服まで用意していただいて・・・・」


倒れた日は食事まで用意してくれていた結城さん。

気配りができないほうだなんて言われても信じられるものではなかった。


「それは・・・桜庭さんだから。」

「え?」

「好きな人には・・・良く見られたいんですよ。」


この細やかな気配りが全て私のことだけを想ってのことだと言われたようで、私の顔が熱くなっていくの感じた。


「ははっ、かわいいですねー。」

「~~~~っ。」


これだけぐぃぐぃ来られて惹かれないほうが無理だと思いながらも、私は過去に目を向けた。

誰かと付き合って、慎太郎と同棲していたときのようなことになるくらいなら・・・まだ一人の方がいいと思ってしまう。


(でも・・ちゃんと理解わかってなかっただけで、きっと前から結城さんに惹かれてることは間違いないんだよね・・。)


カフェで会うくらいならきっと気づかなかったことだと思いながらも私たちは話題を変えて海辺を歩いて行った。

行き止まりになってるところまで歩いて行き、同じ道を通って駐車場に戻っていく。


「そろそろホテルに帰りましょうか。」

「あ・・はい。」


どきどきした海辺のデートはもうおしまいだ。

そう思うと少し寂しい気もしたけど、そんなことを思っていい立場ではない。


「明日、どこか行きたいところとかありますか?」


車に乗り込んでシートベルトを締めてると、結城さんがエンジンをかけながら聞いてきた。


「え?行きたいところですか?」

「はい。俺、1ヶ月の間夕方まで仕事無いんですよ。だから毎日デートしましょう。」


しれっとした顔で言った結城さんだったけど、私はその言葉を聞いて、締めていたシートベルトを間違って外してしまった。


「へっ!?」


ひゅんっと戻ったシートベルトをそのままにして結城さんを見ると、彼は私のシートベルトに手を伸ばしてカチャっと締めてくれた。

そしてそのついでのように私の頭を一撫でして・・


「この1ヶ月で俺に落ちてもらうから。・・・覚悟しておいて?」


そう言ったのだ。


「!?!?」

「ははっ。・・・さ、戻りますよー。」




その帰り道、私は結城さんと何を話したのか覚えてなく、『はい』とか『そう・・ですね・・』くらいしか言えなかった記憶しかない。








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