溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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お互いを知るために。

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ーーーーー



「すみません・・・。あ、よかったらこれに着替えて外に出ませんか?天気もいいですし海岸をぐるっと回りません?」


そう聞いてくれた結城さん。

本来ならお断りするのがいいと思うけど、私は結城さんのことを知りたいと思っていた。


(好きって言っていただいたことに対してお断りはしたけど・・・私、結城さんのこと知らないんだよね・・・。)


さっき、店員さんたちに採寸されたときに結城さんの話を聞いた。

その時に知った結城さんの仕事。


(まさか『YKホールディング』の社長さんだったなんて・・・)


YKホールディングは国内有数のトップ企業だ。

業務用の大型機械の製造を始め、宿泊施設やアパレル、小売り業なんかも大元がYKホールディングになってるとこが多い。

かく言ううちも、コーヒーを抽出するマシーンや業務用冷蔵庫、食洗器なんかYKホールディングから卸してもらってる。


(店員さんたちも結城さんの会社の人たちなんだよね・・・。)


採寸しながら世間話をして私の好みを聞き出していく店員さんたちの手腕は見事なものだった。

話をしていくうちに私の好きなものは言い当てられていき、好みが丸裸になっていっていく。

その中で結城さんとのことを聞かれて黙ってると・・・


『結城社長は桜庭さまのことをすごく大事に想ってらっしゃると思いますよ?』


そんなことを店員さんが言い出したのだ。


『えぇ!?』

『あんな優しい表情、初めて見ましたもの。』

『そうなんですか?』

『いつも仕事一筋で女性関係の話とか聞いたことないですよ?』

『そうなんですか・・・。』


全然知らなかった結城さんは、毎日毎日お仕事を頑張ってる方だった。

カフェでコーヒーをテイクアウトされる姿しか知らない私は、彼のことを全然知らないのに『ごめんなさい。』なんて言ってしまったのだ。


「・・・海、行きたいです。」


結城さんに結城さん自身のことを教えてもらおうと思い、私は彼の提案に乗ることにした。

大きな紙袋から出された服を一つにまとめ、私はソファーから立ち上がった。


「着替えてきますね?ちょっと待っててください。」

「!・・・もちろんです。」


用意されていたものすべてを持ち寝室に入ると、私は服を全部脱いだ。

花柄の巾着を解くと、中には真っ白のレース柄で揃えられた上下下着セットとキャミソールが入っていた。

それを身に付け、さっき見たスカートとタンクトップを合わせていく。

すると紙袋の一番底に白いカーディガンが入ってるのが見えた。

まだタンクトップは早すぎる季節だからか、入れてくれていたようだ。


「もうほんとにかわいいんですけど・・・。」


全てを身に纏ったあと、私は寝室にあった姿鏡を見た。

上から下までコーディネートされ、同一ブランドで揃えられた服は本当にきれいだったのだ。


「鞄の中身を入れ替えないと・・・。」


そう思いながら私は靴を持って寝室から出た。

ゆっくり歩いてリビングまで行き、ひょこっと顔を出すと結城さんが嬉しそうな眼差しで私を見たのだ。


「とても似合ってますね・・・!」

「・・ありがとうございます。ちょっと鞄の中身を入れ替えてもいいですか・・?」


そう聞くと結城さんは嬉しそうに首を縦に振ってくれた。


「もちろん!」


私は荷物を入れ替えていった。

財布やスマホ、ハンカチに化粧品なんかが入ったポーチをきれいに並べていく。


「お待たせしました、準備できました。」


そう言うと結城さんは立ち上がり、私の手にあった靴をそっと持ってくれたのだ。


「持って行きますね。」

「あ・・・ありがとうございます。」


気遣いをしてくれてることに気がついた私は、これまでたくさんの気遣いをしてくれていたことにも気がついてしまった。

カフェで忙しい時に結城さんが来店されてることに気がつかなかったときは笑いながら待っててくれて、お支払いの時に私の好きなアメを一つ、手渡してくれて『お疲れさま』なんて言ってくれた時もあったのだ。


(嘘・・私、結城さんの好意をずっと気づかずにいた・・?)


思い返せば他にもある。

暑い日に近くでイベントかなんかがあったとき、アイスコーヒーが飛ぶように売れて外まで行列ができてしまって困ってると、結城さんが列を店沿いに這わせるようにしてそっと誘導してくれたのがちらっと見えた記憶も蘇ってきた。

あれもこれも全て・・『私がいたから』してくれたことだったのだ。


(!!・・・そんなことをしてくれてたなんて知っちゃったら意識しちゃうよ・・。)


そんなことを考えながら私は部屋の扉に向かい、靴を履いて結城さんと一緒にホテルを出た。




ーーーーー



「桜庭さん、海、お好きなんですか?」


ホテルを出て車に乗せてもらったあと、少ししてから結城さんが聞いてきた。

慣れたハンドル捌きをチラチラ見てしまう。


「海は好きですけど・・・結城さんのことを教えてもらおうと思ってお誘いを受けたんです。」


正直にそう言うと、彼は手の甲で口を押えてクスッと笑った。


「?」

「あ、すみません、笑ったりなんかして・・・。」

「いえ・・何かありました?」


そう聞くと結城さんはチラッと私を見て笑った。


「もしかして、俺のことを何も知らないのにお付き合いを断ったから罪悪感でも生まれました?」

「!?」

「あ、図星ですね?」


笑いながら前を向いてる結城さんは、ほんの少し車の窓を開けた。

微かに入ってくる風が火照る顔を冷ましてくれる。


「なっ・・・なんで・・・」

「なんでって・・・ずっと桜庭さんのことを見てきたんで考えてることは大体わかりますよ?」

「!?!?」

「まぁ、それなりに歳も食ってますからね。」

「・・・。」


結城さんは見た目から考えたら20代後半くらいだ。

ワイシャツ姿だけど、体つきはごつくて、逞しそうだ。


「結城さんっておいくつなんですか?」

「俺ですか?32ですよ?」

「32!?」

「お?もっと若く見えてましたね?」

「!!」

「ははっ、わかりやすい反応ですね。」


きっと私の方が若いと知ってるだろう結城さんだけど、敬語で喋ることはやめない。

それは私を尊重してくれてることでもあり、壁を作ってるってことでもある。


「あの・・・」

「どうしました?」

「その・・・どうして敬語なんですか?私24歳なので私のほうが年下なんですけど・・・」


そう聞くと結城さんは驚くような答えを返してきた。


「あぁ、ブレーキかけてるんですよ。」

「・・・『ブレーキ』?」

「はい。まだ店員と常連客の関係なのに敬語を止めると、きっと止まらなくなってしまいます。」

「止まらなく・・・?」

「俺のことを好きになってもらうまで、『好き』って言い続けてしまいそうですから。ちょっと仕事モードを入れて自制してるんです。」

「・・・へ!?」

「一度・・止めてみますか?」


不敵な笑みを浮かべた結城さん。

身が持たない予感がして私は首を何度も横に振った。


「ははっ、残念ですね。」

「~~~~っ。」


そんな話をしてるうちに、窓から入ってくる風に微かに潮の匂いが混ざり始めたことに気がついた。

遠くの方で海もチラッと見えてきてる。


「ふぁ・・・!」

「あともうちょっとですかね。駐車場があれば降りましょうか。」


そしてしばらくすると車は海岸沿いを走り始め、私の視界に海が飛び込んできた。

結城さんはすぐ近くに見つけた駐車場に車を止めてくれ、私達は海岸を歩くことに。


「行きましょうか。」












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