溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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『お願い』してみた交際。

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ーーーーー



俺の突然の申し出に、彼女の動きが固まった。

じっと紅茶を見つめた後、ゆっくり顔を上げて俺を見たのだ。


「・・・え?」

「もう一年近く桜庭さんのことが気になってたんです。俺の彼女になってくれませんか?」


そう言うと彼女は挙動不審な動きを見せ始めた。

手を動かして何かを考えてるようだ。


(こうやって見てるだけでも何を考えてるのかわかっちゃうんだよなー・・・ほんと素直。)


表情と動きから、『俺と付き合った場合』と『俺と付き合わなかった場合』を考えてるようだ。


(こっちに手を動かしたから今は『俺と付き合わなかった場合』を考えてるな。・・・お、手が動いた。『付き合った場合』を考えてる?)


そんな予測をしながら見てる時、彼女の顔が急に赤く染まった。

俺の言葉の意味を理解したようだ。


(ほんとかわいいなぁ。ずっと見ていたい。)


頬杖をつきながら彼女を見てると、急に暗い表情に変わった。


「どうかしましたか?」


気になって声をかけると、彼女は手で自分の体をぎゅっと抱きしめたのだ。

これは自分の身を守りたい現れだった。


「・・・ごめんなさい。」


まさかの答えに、俺は頬杖を止めた。

真剣に彼女の方を向く。


「・・・理由を聞いても?」

「それは・・・・」


彼女は理由を言わず、ただ身を守るように体を小さくしようとする一方だった。

これ以上聞いても意味はない。


「返事はすぐじゃなくていいので、ゆっくり考えてみてください。」

「・・・。」

「ところで・・・荷物を取りにカフェに行きませんか?桜庭さんさえよければお家まで行きますし・・。」

「!!・・・お願いします!」

「じゃあ飲んだら行きましょう。」


彼女は紅茶を冷ましながらごくっと飲んでくれた。

飲み干すまで彼女を見ながら待ち、俺たちはホテルを一旦後にする。


「どうぞ。」


車の助手席に彼女を乗せ、俺は車を走らせ始めた。


「あの男の事なんですけど、昨日の深夜、警察署から解放されたあとカフェに現れたそうです。念のためにと警察の方が見回りしてくださってる時に現れたそうで・・・」

「!!・・・そうなんですか。」

「一応巡回はしてくれるそうです。でもずっとではないと言われてます。」

「そう・・ですよね。」


ぎゅっと自分の体を抱きしめる姿が横目で分かった。

恐怖はそう簡単には拭えそうになさそうだ。


「しばらくホテルのほうがいいと思います。費用は本当にいらないので泊まってもらえませんか?何かあってからでは遅いですし・・・。」

「・・・。」


悩んでるのか『うん』と言ってくれない彼女。

強要したくてもこれはできるものじゃない。


「・・・あ、見えてきましたよ。」


しばらく車を走らせて見えてきたカフェ。

本社の人間が来てるからか、通常通り営業はされてるようだった。


「荷物取ってきてください。俺、ここで待ってますので。」

「・・・ありがとうございます。」


カフェの裏に車を寄せると、彼女は助手席のドアを開けて降りて行った。


(あー・・これが恋人同士だったらなー・・。)


そんな妄想を膨らませてると、俺のケータイが鳴った。

相手は・・・佐伯だ。


「もしもし?」

『社長、調べ終わりましたよー。』

「もう!?」

『はい。お伝えしたいので一度社にお戻りください。』

「わかった。」


佐伯のあまりの仕事の早さに驚きながら電話を切ると、カフェの裏口から桜庭さんが出てくるのが見えた。

こっちも仕事が早い。


「お待たせしてすみません。」


そう言って助手席の扉を開けた彼女は、そのまま乗り込んでくれた。

思いのほか信用はされてそうだ。


「いえ、大丈夫ですよ。・・・次はお家に行きますか?」

「あー・・・はい、お願いしてもいいですか?」

「もちろんですよ。住所を伺っても?」

「はい。場所はーーーーー」


言われた住所をナビに入れ、俺はまた車を走らせ始めた。

大きなリュックサックを抱きしめるように足に乗せてる彼女は、どことなく気持ちが沈んでそうだ。


「どうかしました?」

「え?・・・あ、しばらくお休みをいただくことになりました。結城さんの・・・おっしゃった通りでした。」


荷物を取りに行ったときにいた本社の人に、『1ヶ月』の休養を提案されたそうだ。

調子が良ければ最短で6月1日復帰扱いで、給料はそのまま支払ってくれるとの話だったらしい。


「まぁ、あんな事件でしたし、それは妥当かと。」

「そうですね・・・。」


何が不満なのかと思いつつも聞けない俺はただ車を走らせるしかなかった。

そしてほどなくして見えてきた彼女のアパート。

そのアパートに不審な影を見つけ、俺は少し離れたところに車を寄せた。


「?・・・アパートあっちですけど・・」


振り返りながら指をさす彼女に、俺はその指に自分の指を重ねるようにして不審な影を差した。


「あれ、昨日の男じゃないですか?」


そう聞くと彼女は指の先をじっと見た。

そして顔色がどんどん青くなっていく。


「し・・慎太郎・・・・」


不審な影は昨日の男だったようで、男は一つの部屋の前をウロウロしていた。

小窓を除くような仕草まで見えることから、彼女が家にいると思ってそうだ。


「お家、バレてますね。一旦ホテルに戻りましょう。」


そう言うと彼女は首を縦に振った。

何度も上下に首を振る姿から、心底恐怖を感じてそうだ。


「どうしよう・・・。」


震えながら消えそうな声で言ったのを俺は聞き逃さなかった。


「・・・あの男と何があったのか教えてもらえませんか?」


力になれることならなりたいと思っての言葉だった。

できることなら何でもすると思うのに、彼女は暗い表情を見せたのだ。


「・・・すみません。」

「・・・。」


話してくれない彼女から無理矢理聞くことはできず、ホテルに戻るしかできなかった。


(まぁ・・佐伯が調べたって言ってたし、あとで会社で聞くか。)


少し震えてそうな彼女を心配しながらもホテルに送り届ける。

ホテルのエレベーターの前でドアマンに引き渡し、俺は手を振った。


「すみません、桜庭さん。ちょっと仕事に戻らないといけないのでお部屋でゆっくりしてください。」

「あ・・・はい、ありがとうございます・・・。」


暗い表情のままエレベーターに乗り込む彼女。

何とかしてその表情を明るくしてほしくて、俺は一つ提案をしてみた。


「よかったらお風呂にでも入ってゆっくりしてください。部屋のお風呂、大きいと思いますし、温まれば気もまぎれると思います。」


不安なときは体温も下がる。

温まれば少しはマシになると思ったのだ。


「!・・・そうですね。ありがとうございます。」

「ではまた来ますので。」


そう言ってエレベーターが閉まるまで見送り、俺は隣にいたドアマンに告げた。


「俺以外の者は誰も通さないでくれ、絶対に。」

「承知いたしました。」

「誰かが彼女を訪ねてきたら『知らない』と。そして誰が来たのかは会社に・・・『YKホールディング』に連絡を。」

「はい。」


そう伝え、俺は会社に戻っていった。







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