溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。

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最高級ホテル。

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「うぁ・・・・・」


部屋の眩しさに目を覚ました私の目に見たことも無い景色が映っていた。

シャンデリアのような照明に、大きくとられた窓。

重厚感のあるカーテンはクリーム色で、住んでるアパートの窓何個分かわからないくらい幅がある。


「え・・・え・・?」


一体ここがどこなのかと思いながら体を起こすと、この部屋の扉がガチャっと静かに開いた。

そして入ってきたのは・・・


「・・・結城さん?」


そう、いつもカフェに来てくださる常連さんの結城さんだったのだ。


「あ、桜庭店長、目が覚めました?」

「は・・はい・・・え・・あの、ここは・・・」


辺りをきょろきょろと見回しながら聞いたとき、頭に痛みが走った。


「いっ・・・!」


ズキズキと響くような痛みに手で頭を押さえると、結城さんが駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか?過呼吸起こして倒れたみたいなんで、ちょっと頭痛がするのかもしれないですね。」

「過呼吸・・・?」

「覚えてないですか?」


結城さんの言葉に、私は自分の中にある記憶を手繰り寄せた。


(確かお店で私一人になって掃除しようと思って・・・)


テーブル席を三つくらい残すつもりで掃除をしていた時、慎太郎がカフェに入ってきたことを思い出した。

仕草を見せられ、急に怖くなったのだ。


「あ・・・・」

「思い出しました?」

「はい・・・。え、でもどうして結城さんが・・・?」


慎太郎に手を引っ張られて無理矢理立ち上がらされた時、結城さんがカフェに入って来たことも思い出した。

そして警察の人も入ってきて、私はテーブルの下に逃げたのだった。


「そろそろ仕事が終わるころかと思って・・食事に誘おうとお店に行ったんですよ。そしたらあの男がいて・・・」


結城さんはただならない様子を見て警察に連絡を入れたと教えてくれた。

交番が近かったことから警察官はすぐに駆け付けてきてくれ、慎太郎を取り押さえてくれたようだ。


「あ・・ありがとうございます。助かりました。」

「いいえ?桜庭さんが無事でよかったですよ。・・・あ、カフェのほうは本社の人を寄越してもらったんで大丈夫ですから。」

「何から何まですみません・・・。」


優しく笑いながらそう言ってくれた結城さんだけど、私はまだ気になることが残っていた。

それは・・・ここがどこなのかということだ。


「あの・・結城さん・・・?」

「どうしました?」

「ここ・・・どこなんでしょうか・・・。」


辺りを見回すようにして聞くと、結城さんはポケットからカードキーを取り出した。


「救急を受け付けてくれるところが遠くて、急遽ホテルを取りました。」

「ホテル・・!?」

「セキュリティの高いところなので、安心して眠れますよ。」


結城さんは慎太郎の今後のことを予測として話してくれた。

とりあえず今は警察署にいるらしいけど、事情聴取が終わったらすぐに解放されて戻ってくるだろうと。

そしてまたカフェに現れるかもしれないと。


「恐らく、今回の事から数日は出勤しなくていいと連絡が来ると思います。その間、ここを使ってください。」

「使うって・・・」

「食事はルームサービスを取れますし、何日でもいてもらって構いません。・・・あ、もちろんすべての支払いは俺が持ちます。」

「!?」

「そのカードキーをフロントに返すとこの部屋はもう使えないので、外に出るときもキーは持って行ってくださいね?・・・じゃあゆっくり寝てください。また明日様子見にきます。」


そう言って結城さんは部屋から出て行ってしまった。

寝室らしき部屋に残された私は、渡されたカードキーとにらめっこするしかない。


「結城さんって・・・何者・・・?」


カードキーには『ホテル・ルミエール』と書かれる。

その名前は国内で知らない人はいないと言われてるほどの高級ホテルだ。


「・・・一泊何万!?」


こんな高級ホテルに泊めてもらうわけにいかず、私はベッドから降りた。

扉を開けて部屋を出ると長い廊下があり、右左にいくつか扉も見える。


「待って待って・・・こんな広い部屋、見たことないんだけど・・・」


そう思いながら廊下を抜けると、広いリビングが現れた。

大理石でできてるような大きいテーブルに、湯気が立ち上る食事たちがたくさん置かれてるのが見える。


「嘘・・・これ、私に・・・?」


軽めのサンドイッチやスープ、リゾットに温野菜のサラダ、それにティーセットまで用意されていた。

重くないメニューに、結城さんの優しさを感じる。


「慎太郎に襲われてる現場を見ちゃったから同情してくれたのかな・・・。」


そんなことを思いながらも私はカードキーを手にしたままホテルの部屋の扉に向かった。

部屋の広さから考えても多分一泊何十万もする部屋で寝れるはずもなく、早々にチェックアウトしようと思ったのだ。


「えっと・・靴は・・っと、あったあった。」


シューズクローゼットにしまわれていた私の靴を取り出し、扉を開ける。

すると目の前にエレベーターの扉があった。


「ふぁ・・・目の前・・・。」


あまりの近さに驚きながらボタンを押すと、エレベーターの扉がすぐに開いた。

どうも誰かが上って来た後だったようだ。


「えーと・・多分フロントって1階だよね?」


そう思って『1階』のボタンを押そうと指を出した。

でも不思議なことにこのエレベーターの到着階として表示されてるのは『1階』と『25階』しかなかったのだ。


「?・・・間違えてスタッフさん用のエレベーターに乗っちゃったかな?」


とりあえず1階にさえ行けたらどうにかなると思った私は、そのまま1階のボタンを押した。

エレベーターの扉は閉まり、重力を感じないまま時間が過ぎていく。


「・・・ちゃんと下りてる?」


そう思ったとき『ポーン』と音が鳴って扉が開いた。

するとドアマンが立っていて、私に向かって頭を下げたのだ。


「桜庭さま、お出掛けでしょうか。」

「!?・・・えと・・あの・・・」

「何かご入用のものでもございますか?」

「いや・・・チェックアウトをお願いしたくて・・・・」


そう言うとドアマンの人は驚いた顔を見せた。

そしてそのあと困ったような顔になっていった。


「・・・桜庭さま、大変申し訳ございませんが、チェックアウトはできません。」

「え・・できないってどういうことですか?」

「結城さまより言付かっておりまして・・・・あ、どうぞこちらへ。」


私はエレベーターから降り、ホテルのエントランスにあるフロントに連れていかれた。

そこには支配人らしき人がいて、姿勢正しくぴしっと頭を下げてくれた。


「桜庭さま、お出掛けでしょうか?」


同じ言葉を言われ、私はこの人にカードキーを差し出した。


「チェックアウトをお願いしたいのですが・・・」

「チェックアウトでございますか?」

「はい。」


私の言葉にこのフロントの人とドアマンの人は目を合わせていた。

難しい顔をしながら目くばせをしてる様子を交互に見る。


「・・・申し訳ございません、桜庭さま。チェックアウトは受け付けることができません。」

「え・・どうしてですか?」

「結城さまより、『最低1ヶ月はチェックアウトはしない』と言われておりまして・・・」

「1ヶ月ですか!?」

「はい。お部屋の代金ももうお支払い済みでございます。なので・・・申し訳ございません。」


二人から頭を下げられ、私はチェックアウトができないことを了承するほかなかった。


(そうは言っても1ヶ月もお世話になんてなれないし・・・)


どうにか明日以降の宿泊のキャンセルができないかを聞くものの、答えは『できない』だった。

ホテルの仕組みはわからないけど、『できない』というのならできないのだろう。


「どうしよう・・・。」


恐らく高額すぎる宿泊費。

『支払わなくていい』と言われたもののそんなわけにはいかない。


(とりあえず家にあるお金を取ってきて明日渡すしかないよね・・・)


そう思って私はフロントの人に出かけることを伝えた。


「お出掛けですね。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

「ありがとうございます。」


ホテルの外までドアマンに送られ、私は空を見上げた。

真っ暗な空に少ない街の灯り。

きっと深夜であることを意識しながら歩き始める。


「荷物って全部カフェだよねぇ・・・え・・待って、ここからどれくらい距離あるの・・?」


電車に乗ろうにもお金を持ってないから乗ることはできない。

家ならなんとか歩いて帰れそうな距離だけど、肝心の家の鍵はカフェにある鞄の中だ。

そして地図として使えるスマホも、鞄の中。


「・・・だめじゃん。」


どこにも行けないことに気がついた私は踵を返すほかなかった。

ホテルを出てまだ数メートルの距離だけどUターンして中に入っていく。


「桜庭さま、おかえりなさいませ。」

「ただいまです・・・。」

「必要なものがございましたらお部屋にございます電話機の受話器を上げるとフロントに繋がりますのでご利用くださいませ。」

「あ・・ありがとうございます・・・。」


ドアマンがさっきのエレベータのボタンを押し、すぐに開いた扉が閉まらないように手で押さえてくれた。

そのエレベーターに乗り込んで振り返ると、ちょうどエントランスの向こう側にエレベーターがあることに気がついた。

そっちは何人かの人がエレベーターを待ってるようだ。


「あの・・・」

「どうなさいましたか?」

「あっちのエレベーターとこっちのエレベーターって・・・なにか違うんですか?」


よくよく見ると向こうのエレベーターにはドアマンがいないようだった。

数もこっちは一基だけど、向こうは何基も見える。


「こちらは最上階専用のエレベーターでございます。今は桜庭さまが宿泊されてますので、桜庭さま専用のエレベーターになります。」

「へぇー、そうなんですか・・・・って、え!?私専用!?」

「はい。ごゆっくりお休みなさいませ。」


エレベーターが閉まるのに合わせてドアマンは頭を下げた。

『私専用エレベーター』という言葉が理解できずにぼーっと立ってると、『ポーン』という音が鳴りって扉が開いた。

さっき見た景色が目の前に広がってる。


「待って・・まさかここって一部屋しかないの・・・!?」


辺りを見回すものの、目の前の扉以外に扉は見えない。

この空間は玄関前のエントランスのような場所だったようだ。


「スマホが無いから調べれないけど・・・私、宿泊費返せるのかな・・・。」


そんなことを思いながら私は部屋の扉にカードキーを差し込み、中に入っていった。






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