シンデレラストーリーだけじゃ終われない!?

すずなり。

文字の大きさ
上 下
24 / 41
本当の家族。

新しい出会い。

しおりを挟む
ーーーーー



「ここだー・・。」


楽譜屋さんの最寄り駅で電車から降りた私は無事に目的地に着いた。

3階建ての建物で、1階入り口に『楽譜屋』と書かれた小さな看板がある。


「中・・入ってもいいよね・・?」


私は扉に手をあてて、ぐっと押した。


「いらっしゃいませー。」


ドアを開けると中は一面、棚があった。

棚にはびっしりと本のようなものが入ってる。


「わぁ・・・すごい・・・。」


お店に一歩入ったところで足を止め、私は辺りを見回していた。

いろんな色の、いろんな大きさの本がある。

これは全部『楽譜』なんだろう。


「・・こんなにいっぱいあったらどれがいいのかわからない・・。」


どれから見たらいいのかわからず、足を止めたままでいると、カウンターから店員さんがでてきたのが見えた。

笑顔でこっちに向かって歩いてくる。


「いらっしゃいませ、お探しのものでも?」


そう聞かれ、私は自分の欲しいものを伝えた。

子供向けの曲でイベントの邪魔にならないような曲を探してることを。


「あー・・それならこの辺の曲がいいかな?有名な映画の曲。」

「・・・映画!!」

「ちなみにレベルはどれくらいかな?」

「あ・・・それが・・・」


私のレベルは自分でよくわかってない。

聞けば弾けるものも多いけど楽譜を見て弾くとなったら格段にレベルが下がる。


「明日弾きたいんです。一番初心者のものってありますか?」


そう聞くと店員さんは棚にある楽譜を探し始めた。

指をあてながら一つ一つ探してくれてる。

でも・・・指は何度も同じところを往復していた。


「うーん・・最低でも中級からかな・・・。」

「中級・・・ですか・・・。」

「無理そう?」

「無理・・というか、耳で聞けたら弾けるんですけど・・楽譜がまだ読めなくて・・。」


そう言うと店員さんはなにか思い付いたのかお店の奥に行ってしまった。

そしてすぐにまた戻ってきた。


「そういうことならこれがいいかな?」


そう言って店員さんは私に細長いプラスチックの板のようなものを手渡した。


「?・・・これ、なんですか?」

「『USB』だよ?これにピアノの音源が入ってる。」

「ピアノの音源がここに!?」


初めて見るものに、私は興味深々だった。

家でお母さんのピアノを聴くときはCDで聴いてる。


「聞いてみる?ちょっとおいで?」


そう言って店員さんはカウンターに行った。

私もその後ろをついて行く。


「ちょっと待ってねー。」


店員さんはカウンターにあったパソコンに、USBを指した。

カチカチと何かすると、パソコンからピアノの音が流れ始めた。


♪~


「わ・・すごい・・・。」

「どう?これならわかる?この楽譜もあるけど・・・。」

「え!?両方あるんですか!?」

「うん。これはね・・・」


店員さんが何かを説明しようとしたとき、お店のドアが開く音が聞こえた。


「こんにちはーっ。」


入ってきたのはかわいい女の人だ。

肩までの髪の毛は真っ黒で、すこしふわっとしてる。

くりっくりの大きな目が特徴のすごくかわいい人だった。


「おや、姫宮さん。こんにちは。」


店員さんはこの女の人を知ってるようで、手を小さく振りながら迎えていた。


「今日ってお仕事あります?」


女の人はそう聞きながらカウンターまでやってきた。


「あるよー。ちょっと待ってねー・・・って、ちょうどよかった。データ取ってくるからその間、頼まれてくれる?」

「?・・・なんですか?」

「上のピアノ使っていいからさ、この子にこの曲弾いてあげてくれない?姫宮さんが採譜した曲だからさ。」


その言葉を聞いて私は『姫宮さん』と呼ばれてる女の人を見た。

『採譜』という言葉は知ってる。

耳で聞いた音を楽譜に記したりすることだ。


「いいですよー、じゃ、行こっか!」

「!!・・・はいっ!」


私は歩き始めた姫宮さんの後ろをついていった。

姫宮さんはお店の奥にある階段を上がって行く。


「今日は楽譜見に来たの?」


姫宮さんは若干振り返りながらそう聞いてくれた。


「はいっ、明日、イベントがあってそのBGMを頼まれたんですけど、何を弾いたらいいのか分からなくて・・。」

「あ、そういうことかー。イベントは何系?」

「えーと・・・」


私は明日の詳細を姫宮さんに説明した。

病院であること、入院患者さんに向けてのイベントのこと、あと・・明日弾く人が来れなくなってその代わりに弾くことになったことを。


「うわ・・代打かー、どれくらいの難易度弾ける?」

「それが・・聞いたら弾けるものが多いんですけど、楽譜はちょっと苦手で・・。」

「なるほどね。じゃあ色んなパターン弾くからよかったら覚えて帰ってね?」


そんな話をしてるうちに私たちは二階に着いた。

二階はピアノが3台置いてあって、他にも金管楽器や木管楽器、弦楽器がたくさん置いてあるのが見えた。


「わぁ・・・。」

「ちょっと待ってねー、どのピアノにしようかー。」


そう言って姫宮さんは3台のピアノの鍵盤を順番に押していった。

そのうちの1台のピアノの音が・・・お母さんのピアノの音によく似ていた。


「・・・あ。」

「どうかした?」

「家のピアノと音が似てるのがあって・・・。」

「どれ?」

「これです・・。」


3台の真ん中にあったピアノだ。


「シュベスタ―かー。家にあるのはベーゼンドルファーかな?」

「よくわからないですけど・・・。」

「ピアノに描いてあると思うから今度見てみて?とりあえずこれで弾こうか。」


そう言って姫宮さんは真ん中のピアノの椅子に腰かけた。

両手を鍵盤に乗せると、さっきの曲を弾き始めた。


♪~・・・




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

4人の王子に囲まれて

*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。 4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって…… 4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー! 鈴木結衣(Yui Suzuki) 高1 156cm 39kg シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。 母の再婚によって4人の義兄ができる。 矢神 琉生(Ryusei yagami) 26歳 178cm 結衣の義兄の長男。 面倒見がよく優しい。 近くのクリニックの先生をしている。 矢神 秀(Shu yagami) 24歳 172cm 結衣の義兄の次男。 優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。 結衣と大雅が通うS高の数学教師。 矢神 瑛斗(Eito yagami) 22歳 177cm 結衣の義兄の三男。 優しいけどちょっぴりSな一面も!? 今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。 矢神 大雅(Taiga yagami) 高3 182cm 結衣の義兄の四男。 学校からも目をつけられているヤンキー。 結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。 *注 医療の知識等はございません。    ご了承くださいませ。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...