シンデレラストーリーだけじゃ終われない!?

すずなり。

文字の大きさ
上 下
21 / 41
本当の家族。

おかぁさんのピアノ。

しおりを挟む
一木さんに勉強を教えてもらいながら2週間が過ぎた。

私は病院に通い、遅れていた勉強を少しずつしていった。

一木さんが買ってくれた参考書を元に足りない学年から勉強していき、家では直哉お兄ちゃんや恭介お兄ちゃんが教えてくれる。

勉強の合間合間には、おかぁさんが使ってたピアノの部屋を掃除して使えるようにしていった。

不思議なことに・・・埃をかぶってるわけでもなく、ピアノの音は狂ってなかった。

長年使われてなかったハズなのに、その痕跡はない。


「あの、恭介お兄ちゃん?」


大量にある楽譜を虫干しするために、棚から出しながら聞いた。


「どうした?」

「ここって・・13年くらい使ってなかったんですよね?」


聞いた話では私が生まれてすぐにおかぁさんは亡くなった。

そのあとすぐに部屋を塞いだらしいから、私の歳と同じ時間、使ってなかったことになる。


「そうだよ?」

「埃とか・・あまりないのって不思議じゃないですか?」


そう聞くとお兄ちゃんは辺りをぐるっと見回した。


「・・・たしかに。」

「あとね?これ、聞いて欲しいんだけど・・。」


私はピアノのカバーを外し、蓋を開けて音をいくつか鳴らした。


「音が狂ってないんですよ!ピアノは年に一度は調律しないと音が狂うって言われてます!変ですよね!?」


『おかしいことがある』と思っていた私は興奮気味にお兄ちゃんに聞いた。

でもお兄ちゃんはちょっと悲し気に笑いながら言った。


「・・・亜子、悪いけど音の違いはわからないんだよ。」

「?・・・わからない?」

「俺は絶対音感を持ってない。だからどの音が正解か正解じゃないのかがわからないんだ。狂ってるのか狂ってないのかもわからないんだよ。」

「・・・。」


お兄ちゃんの言葉を聞きながら私はピアノの音を鳴らした。

寸分の狂いもない音にどうしても納得がいかない。


「うーん・・。」

「まぁ、狂ってないならいいんじゃないか?ほら、さっさと楽譜持って行きな。」

「はーい。」


私は言われたままに楽譜を持って部屋から出た。

リビングの窓の先にあるお庭にいるお父さんに、楽譜を手渡す。


「お願いしますっ。」


お父さんはお庭でレジャーシートを敷いて、しゃがみ込みながらその上に楽譜を広げてくれていた。

これで虫が湧くのを防げるらしい。


「ありがとう、亜子は楽譜って読めるのかな?」


お父さんは楽譜を受け取り、ばさっと広げながら聞いてきた。


「楽譜を読む・・?」

「あぁ、そうだな・・・うーん・・この楽譜を見て、ピアノで弾けるかな?」


そう言われ、私は楽譜をじっと見つめた。

あまりじっくり見たことがない楽譜は何が書いてあるのかさっぱりわからない。


「弾けないと思います・・?」

「ははっ、なんで疑問形なんだい?」

「うーん・・・なんて書いてあるのかは全然わからないんですけど・・聞けば分かるような気がする・・からです。」


私の言葉に、お父さんはおもむろに立ち上がった。

リビングに戻り、おかぁさんの写真が置いてある棚の扉を開けて何かを探してる。


「あ、あったあった。亜子、ちょっとさっきの楽譜持って来てくれる?」

「?・・・はい。」


言われた通りに私は楽譜を持ってお父さんのところに行った。

お父さんは棚から出したものを何か機械に入れてる。


「これ、リズの・・亜子のお母さんのCDだよ。弾いた曲が入ってる。」

「・・・おかぁさんのですか!?」

「その楽譜の曲をかけるから見ながら聞いてごらん?」


そう言ったあと、すぐにピアノの音が聞こえ始めて来た。

私は楽譜を広げ、その音を紙上で探していく。


「?・・・?・・・」

「うーん・・・わかんないか。」

「はい。・・・あっ。」


残念そうにするお父さんに申し訳なく思った私は、いいことを思い付いた。

お父さんの手を引いてピアノの部屋に向かう。


「まさか・・・」


私はピアノの椅子に座り、両手を鍵盤に乗せた。

そのまま・・・さっき聞いた曲を思い出しながら鍵盤を押していく。


♪~♪♬♪ー・・・




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

4人の王子に囲まれて

*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。 4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって…… 4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー! 鈴木結衣(Yui Suzuki) 高1 156cm 39kg シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。 母の再婚によって4人の義兄ができる。 矢神 琉生(Ryusei yagami) 26歳 178cm 結衣の義兄の長男。 面倒見がよく優しい。 近くのクリニックの先生をしている。 矢神 秀(Shu yagami) 24歳 172cm 結衣の義兄の次男。 優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。 結衣と大雅が通うS高の数学教師。 矢神 瑛斗(Eito yagami) 22歳 177cm 結衣の義兄の三男。 優しいけどちょっぴりSな一面も!? 今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。 矢神 大雅(Taiga yagami) 高3 182cm 結衣の義兄の四男。 学校からも目をつけられているヤンキー。 結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。 *注 医療の知識等はございません。    ご了承くださいませ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

処理中です...