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本当の家族。
初めての学校2。
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月曜日、朝からお父さんが学校に電話をしてくれ、私は学校に向かうことになった。
諸々の手続きがあるらしく、お父さんも一緒だ。
「亜子にとって・・今日が初めての学校になるのかな?」
学校までの道を歩きながらそう聞かれ、私は笑顔で答えた。
「はいっ、制服も、鞄も初めてですっ。ありがとうございますっ。」
「そう、楽しみだね。」
「はいっ。」
少し大きめの制服は折り目がピシッとついていて少し動きにくさがある。
ほんとなら不快に感じるものなのかもしれないけど、それすら初めてな私は嬉しくて仕方なかった。
(この制服が小さく感じるくらいまで身体が大きくなるのかな・・・。)
袖や丈をみながら歩いてると、昨日直哉お兄ちゃんと見た中学校が見えてくる。
「亜子は学校までの道、大丈夫?」
「はいっ、昨日お兄ちゃんに教えてもらいました。」
「道は気をつけるんだよ?」
「はいっ。」
一昨日は閉まってた門が開いていて、私とお父さんはその門をくぐった。
中は見えていたより広く、芝生の広場や、大きなドーム型の建物が見えた。
(そういえば家にも変わった部屋・・というか外から見たら建物?みたいなのがあった・・。)
施設を出て、初めて家に行った日に一通り説明された家の中のこと。
外から見えた変わった建物に通じる扉は、鍵がかけられてるようだったから聞くことはできなかった。
(覚えることも環境も一気に変わったから聞くどころじゃなかったし・・。)
1週間近くも経てば自分自身に余裕が出てきて気になることもちょくちょく出てき始めた。
でもそれは聞いていいことなのかわからなくて、そのまま置いてあるものが多い。
(また今度・・・聞いてみよ。)
そう思いながら歩いてると、私はいつの間にか『校長室』という部屋の前にいた。
「亜子、ご挨拶、しっかりね?」
「はいっ。」
お父さんは扉をコンコンっとノックした。
「二階堂です。失礼します。」
そう言って扉を開けた。
「おはようございます、二階堂さん。お越しいただきありがとうございます。」
お父さんに歩み寄ってきたのは、スーツを着てスラッとした高齢の人だった。
「校長先生、いつも息子がお世話になってます。娘の転入の手続きをお願い致します。」
軽く頭を下げたお父さんに習って、私はご挨拶をした。
「初めまして、二階堂 亜子です。よろしくお願いします。」
「あなたが亜子さんですか。この学校でいろいろ学んでくださいね。」
「はいっ。」
「どうぞこちらに。」
校長室にある椅子に座るように促され、私とお父さんは腰かけた。
向かいに校長先生が座ると同時に、奥の扉から二人の男の人が入ってきた。
「紹介しますね、学年主任と亜子さんのクラスの副担任です。」
「初めまして。学年主任です。」
「初めまして二階堂さん。副担任です。」
ピシッとしたスーツに身を包み、二人は頭を下げて挨拶をしてくれた。
私は椅子から立ち上がり、さっきと同じように頭を下げる。
「初めましてっ、二階堂 亜子ですっ、よろしくお願いしますっ。」
そう言って頭を上げると、二人の先生は私を上から下まで見ていた。
頭の先から足元まで・・・。
それを見ていたお父さんが、すかさず二人の先生に問いかける。
「何か?」
お父さんの言葉に、二人の先生は私の頭をじっと見ながら答えた。
「あの・・その髪色は・・・?」
「あぁ、地毛です。元々こういう色でして。」
「地毛・・・。あの、眼の色は・・・?」
「元から赤色です。母親が同じ色をしてますので。」
「そう・・ですか。」
明らかにいい顔をしてないことは私はすぐにわかった。
それでも『大丈夫だ』と自分に言い聞かせて椅子に座った。
「通えるなら今日からでも通わせたいと思ってるのですが、どうでしょうか。」
お父さんがそう聞くと、校長先生は二つ返事で答えてくれた。
「どうぞどうぞ!早い方が馴染みやすいと思いますし。このまま副担任に案内してもらいましょう!よろくね、先生。」
「はい。・・・じゃあ、行きましょう、二階堂さん。」
「はいっ。」
私は椅子から立ち上がった。
お父さんと別れて校長室を出る。
「二階堂さん、あなたのクラスは1年C組ね。場所を説明しながら行くからできれば覚えて行ってね?」
「はいっ。」
先生は学校にある教室の話をしながら連れて行ってくれた。
理科室や、調理室、図書室に、職員室・・・
たくさんの部屋が学校にはあるみたいだ。
「すごい・・・。」
右に左に頭を動かしながら歩いてると、先生は階段を上がり始めた。
2階に上がってすぐのところの部屋に『1-C』と書かれた教室がある。
「ここがあなたの教室。ちょっとみんなに紹介するから一緒に入りましょうか。」
「はいっ。」
先生は教室の扉をガラガラと開けた。
「授業中失礼します。転入生が来ましたのでお願いしたいのですがいいですか?」
「どうぞー。」
「二階堂さん、入りますよー。」
私は先生の後ろをついて教室の中に入った。
(わ・・いっぱいいる・・・。)
教室には同じ制服を着た人がたくさん座っていた。
みんなが私をジロジロと見てる。
「はい、今日から転入してきた『二階堂 亜子』さんです。わからないことは教えてあげてねー。・・・はい、二階堂さんも一言どうぞ。」
「・・・え!?」
急に言われ、私はドキドキしながら答えた。
「は・・初めましてっ・・二階堂 亜子ですっ。よ・・よろしくお願いします・・っ。」
「えーと、二階堂さんの席は・・・あ、廊下側の一番後ろね。いってらっしゃい。」
「は・・はい・・っ。」
机と机の間を通り、私は言われた席に向かった。
机の上に鞄を置いて、椅子に座る。
「今は世界史の時間だから、教科書あったら出してね。なかったら隣の人に見せてもらってね。」
「は・・はいっ。」
「じゃあ頑張って!」
そう言って副担任の先生は教室から出て行った。
(教科書って・・・まだない・・。)
鞄に入ってるのは筆記用具と真っ新のノートのみだ。
とりあえずそれらを机に出して、私は隣の人をちらっと見た。
「・・・見る?」
そう言って机を少し寄せてくれたのは男の子だ。
「ありがとう・・っ。」
私も机を少し寄せ、教科書を覗き込んだ。
でも・・・・
(・・・世界史って・・なんだろう。)
よくわからないまま、私はその男の子のマネを始めた。
前で先生が大きく書いてる字をノートに写し始めたら、私も同じようにノートに書いてみる。
教科書をじーっと見てたら私もじーっと見て見る。
よくわからないまま時間は過ぎていき、大きな音が教室の中に響き渡った。
キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、今日の授業はここまでー、しっかり復習しておくようにー。・・二階堂さんはわからないところとかあったら聞きに来てねー。」
先生の言葉に、私は椅子から立ち上がった。
「はいっ・・。」
「みんな休憩時間に色々教えてあげてねー。」
そう言って先生は教室から出て行った。
(休憩時間・・?)
そんなものがあるのかと思いながら椅子に座ると、教科書を見せてくれてた男の子が私の髪の毛を指差した。
「それ・・・染めてんの?」
「え・・?あ、染めてないよ?」
「へぇー・・。」
男の子は寄せていた机を離して、元の位置に戻した。
私も同じようにして机を離した。
(なんか・・見られてる気がする・・。)
机をガタガタと動かしながら頭を上げると、周りの子たちが遠巻きに私を見ていた。
口元を隠しながら、何かを話してるようだ。
(なんだろ・・・。)
あきらかにわたしのことを話していることはわかったけど、なんの話をしてるのかを知る前に、また教室内に大きな音が鳴り響いた。
キーンコーンカーンコーン・・・
その音を同時に、教室の中にいた人はみんな椅子に座って行く。
そして扉から知らない先生が入ってきた。
「はい。席についてー。授業始めるぞー。」
言われたままに、私は椅子に座った。
今度の先生は算数の先生のようで、プリントを一人一枚配り始めた。
どうもこのプリントに書かれた問題を解くのがこの授業らしい。
(・・・ぜんっぜんわかんない・・。)
見たこともない式や、問題文が並ぶプリントに、私はただ眺めてることしかできなかった。
先生が『隣に見せてもらいなさい』とか言わないから、見せてもらってはいけないものなんだろう。
だからただ・・・見てるだけで時間は過ぎていってしまった。
キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、そこまで。次の授業で返すからなー。」
そう言って先生はプリントを集め、教室から出て行ってしまった。
(学校って・・・難しい。)
授業ごとの流れが全く分からない私は、不安になってきた。
わからないことがたくさんあるのに誰に聞いたらいいのかわからない。
先生に聞きに行こうにも、授業がすぐに始まってしまい行くことができない。
誰かに聞こうにも、私を遠巻きに見ながら何かを話してる人には聞くこと何てできるわけなかった。
「・・・。」
結局私は次の授業もわからないままただ聞いていた。
書き取りのようなときは、持っていったノートにとりあえず写す。
教科書は隣の男の子が見せてはくれたけど、ゆっくり読むこともできないからあまり意味はなかった。
(帰ったら・・・お父さんとお兄ちゃんに聞いてみようかな・・。)
『学校の勉強がわからない』と言ったらお父さんたちはどんな反応をするのだろう。
怒られるかもしれないし、怒られないかもしれない。
呆れられるかもしれないし、呆れられないかもしれない。
まだ1週間ほどしか一緒にいないから想像がつかなかった。
(でも・・嘘をつくよりはいい。)
家に帰ってお父さんたちに相談することにしたとき、また大きな音が教室に響き渡った。
キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、午前の授業はここまで。お昼の準備があるから給食当番の人は給食室に取りに行ってねー。」
その言葉を聞いた教室の人たちは一気に動き始めた。
机を少し移動し、制服の上にエプロンをつけていく。
(給食って・・・ご飯のことだよね?)
言葉だけは知ってた私は、どうしていいのかわからないまま座っていた。
すると私のところに一人の女の子がやって来た。
「ねぇ、日本語わかるの?」
「え?・・あ、うん、わかる・・。」
初めて声をかけてもらい、内心嬉しかった私は目一杯笑って見せた。
仲良くなれるかもしれない、学校のことを教えてもらえるかもしれないと思ったのだ。
でも・・・その女の子が次に言った言葉は私の想像のどれでもないものだった。
諸々の手続きがあるらしく、お父さんも一緒だ。
「亜子にとって・・今日が初めての学校になるのかな?」
学校までの道を歩きながらそう聞かれ、私は笑顔で答えた。
「はいっ、制服も、鞄も初めてですっ。ありがとうございますっ。」
「そう、楽しみだね。」
「はいっ。」
少し大きめの制服は折り目がピシッとついていて少し動きにくさがある。
ほんとなら不快に感じるものなのかもしれないけど、それすら初めてな私は嬉しくて仕方なかった。
(この制服が小さく感じるくらいまで身体が大きくなるのかな・・・。)
袖や丈をみながら歩いてると、昨日直哉お兄ちゃんと見た中学校が見えてくる。
「亜子は学校までの道、大丈夫?」
「はいっ、昨日お兄ちゃんに教えてもらいました。」
「道は気をつけるんだよ?」
「はいっ。」
一昨日は閉まってた門が開いていて、私とお父さんはその門をくぐった。
中は見えていたより広く、芝生の広場や、大きなドーム型の建物が見えた。
(そういえば家にも変わった部屋・・というか外から見たら建物?みたいなのがあった・・。)
施設を出て、初めて家に行った日に一通り説明された家の中のこと。
外から見えた変わった建物に通じる扉は、鍵がかけられてるようだったから聞くことはできなかった。
(覚えることも環境も一気に変わったから聞くどころじゃなかったし・・。)
1週間近くも経てば自分自身に余裕が出てきて気になることもちょくちょく出てき始めた。
でもそれは聞いていいことなのかわからなくて、そのまま置いてあるものが多い。
(また今度・・・聞いてみよ。)
そう思いながら歩いてると、私はいつの間にか『校長室』という部屋の前にいた。
「亜子、ご挨拶、しっかりね?」
「はいっ。」
お父さんは扉をコンコンっとノックした。
「二階堂です。失礼します。」
そう言って扉を開けた。
「おはようございます、二階堂さん。お越しいただきありがとうございます。」
お父さんに歩み寄ってきたのは、スーツを着てスラッとした高齢の人だった。
「校長先生、いつも息子がお世話になってます。娘の転入の手続きをお願い致します。」
軽く頭を下げたお父さんに習って、私はご挨拶をした。
「初めまして、二階堂 亜子です。よろしくお願いします。」
「あなたが亜子さんですか。この学校でいろいろ学んでくださいね。」
「はいっ。」
「どうぞこちらに。」
校長室にある椅子に座るように促され、私とお父さんは腰かけた。
向かいに校長先生が座ると同時に、奥の扉から二人の男の人が入ってきた。
「紹介しますね、学年主任と亜子さんのクラスの副担任です。」
「初めまして。学年主任です。」
「初めまして二階堂さん。副担任です。」
ピシッとしたスーツに身を包み、二人は頭を下げて挨拶をしてくれた。
私は椅子から立ち上がり、さっきと同じように頭を下げる。
「初めましてっ、二階堂 亜子ですっ、よろしくお願いしますっ。」
そう言って頭を上げると、二人の先生は私を上から下まで見ていた。
頭の先から足元まで・・・。
それを見ていたお父さんが、すかさず二人の先生に問いかける。
「何か?」
お父さんの言葉に、二人の先生は私の頭をじっと見ながら答えた。
「あの・・その髪色は・・・?」
「あぁ、地毛です。元々こういう色でして。」
「地毛・・・。あの、眼の色は・・・?」
「元から赤色です。母親が同じ色をしてますので。」
「そう・・ですか。」
明らかにいい顔をしてないことは私はすぐにわかった。
それでも『大丈夫だ』と自分に言い聞かせて椅子に座った。
「通えるなら今日からでも通わせたいと思ってるのですが、どうでしょうか。」
お父さんがそう聞くと、校長先生は二つ返事で答えてくれた。
「どうぞどうぞ!早い方が馴染みやすいと思いますし。このまま副担任に案内してもらいましょう!よろくね、先生。」
「はい。・・・じゃあ、行きましょう、二階堂さん。」
「はいっ。」
私は椅子から立ち上がった。
お父さんと別れて校長室を出る。
「二階堂さん、あなたのクラスは1年C組ね。場所を説明しながら行くからできれば覚えて行ってね?」
「はいっ。」
先生は学校にある教室の話をしながら連れて行ってくれた。
理科室や、調理室、図書室に、職員室・・・
たくさんの部屋が学校にはあるみたいだ。
「すごい・・・。」
右に左に頭を動かしながら歩いてると、先生は階段を上がり始めた。
2階に上がってすぐのところの部屋に『1-C』と書かれた教室がある。
「ここがあなたの教室。ちょっとみんなに紹介するから一緒に入りましょうか。」
「はいっ。」
先生は教室の扉をガラガラと開けた。
「授業中失礼します。転入生が来ましたのでお願いしたいのですがいいですか?」
「どうぞー。」
「二階堂さん、入りますよー。」
私は先生の後ろをついて教室の中に入った。
(わ・・いっぱいいる・・・。)
教室には同じ制服を着た人がたくさん座っていた。
みんなが私をジロジロと見てる。
「はい、今日から転入してきた『二階堂 亜子』さんです。わからないことは教えてあげてねー。・・・はい、二階堂さんも一言どうぞ。」
「・・・え!?」
急に言われ、私はドキドキしながら答えた。
「は・・初めましてっ・・二階堂 亜子ですっ。よ・・よろしくお願いします・・っ。」
「えーと、二階堂さんの席は・・・あ、廊下側の一番後ろね。いってらっしゃい。」
「は・・はい・・っ。」
机と机の間を通り、私は言われた席に向かった。
机の上に鞄を置いて、椅子に座る。
「今は世界史の時間だから、教科書あったら出してね。なかったら隣の人に見せてもらってね。」
「は・・はいっ。」
「じゃあ頑張って!」
そう言って副担任の先生は教室から出て行った。
(教科書って・・・まだない・・。)
鞄に入ってるのは筆記用具と真っ新のノートのみだ。
とりあえずそれらを机に出して、私は隣の人をちらっと見た。
「・・・見る?」
そう言って机を少し寄せてくれたのは男の子だ。
「ありがとう・・っ。」
私も机を少し寄せ、教科書を覗き込んだ。
でも・・・・
(・・・世界史って・・なんだろう。)
よくわからないまま、私はその男の子のマネを始めた。
前で先生が大きく書いてる字をノートに写し始めたら、私も同じようにノートに書いてみる。
教科書をじーっと見てたら私もじーっと見て見る。
よくわからないまま時間は過ぎていき、大きな音が教室の中に響き渡った。
キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、今日の授業はここまでー、しっかり復習しておくようにー。・・二階堂さんはわからないところとかあったら聞きに来てねー。」
先生の言葉に、私は椅子から立ち上がった。
「はいっ・・。」
「みんな休憩時間に色々教えてあげてねー。」
そう言って先生は教室から出て行った。
(休憩時間・・?)
そんなものがあるのかと思いながら椅子に座ると、教科書を見せてくれてた男の子が私の髪の毛を指差した。
「それ・・・染めてんの?」
「え・・?あ、染めてないよ?」
「へぇー・・。」
男の子は寄せていた机を離して、元の位置に戻した。
私も同じようにして机を離した。
(なんか・・見られてる気がする・・。)
机をガタガタと動かしながら頭を上げると、周りの子たちが遠巻きに私を見ていた。
口元を隠しながら、何かを話してるようだ。
(なんだろ・・・。)
あきらかにわたしのことを話していることはわかったけど、なんの話をしてるのかを知る前に、また教室内に大きな音が鳴り響いた。
キーンコーンカーンコーン・・・
その音を同時に、教室の中にいた人はみんな椅子に座って行く。
そして扉から知らない先生が入ってきた。
「はい。席についてー。授業始めるぞー。」
言われたままに、私は椅子に座った。
今度の先生は算数の先生のようで、プリントを一人一枚配り始めた。
どうもこのプリントに書かれた問題を解くのがこの授業らしい。
(・・・ぜんっぜんわかんない・・。)
見たこともない式や、問題文が並ぶプリントに、私はただ眺めてることしかできなかった。
先生が『隣に見せてもらいなさい』とか言わないから、見せてもらってはいけないものなんだろう。
だからただ・・・見てるだけで時間は過ぎていってしまった。
キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、そこまで。次の授業で返すからなー。」
そう言って先生はプリントを集め、教室から出て行ってしまった。
(学校って・・・難しい。)
授業ごとの流れが全く分からない私は、不安になってきた。
わからないことがたくさんあるのに誰に聞いたらいいのかわからない。
先生に聞きに行こうにも、授業がすぐに始まってしまい行くことができない。
誰かに聞こうにも、私を遠巻きに見ながら何かを話してる人には聞くこと何てできるわけなかった。
「・・・。」
結局私は次の授業もわからないままただ聞いていた。
書き取りのようなときは、持っていったノートにとりあえず写す。
教科書は隣の男の子が見せてはくれたけど、ゆっくり読むこともできないからあまり意味はなかった。
(帰ったら・・・お父さんとお兄ちゃんに聞いてみようかな・・。)
『学校の勉強がわからない』と言ったらお父さんたちはどんな反応をするのだろう。
怒られるかもしれないし、怒られないかもしれない。
呆れられるかもしれないし、呆れられないかもしれない。
まだ1週間ほどしか一緒にいないから想像がつかなかった。
(でも・・嘘をつくよりはいい。)
家に帰ってお父さんたちに相談することにしたとき、また大きな音が教室に響き渡った。
キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、午前の授業はここまで。お昼の準備があるから給食当番の人は給食室に取りに行ってねー。」
その言葉を聞いた教室の人たちは一気に動き始めた。
机を少し移動し、制服の上にエプロンをつけていく。
(給食って・・・ご飯のことだよね?)
言葉だけは知ってた私は、どうしていいのかわからないまま座っていた。
すると私のところに一人の女の子がやって来た。
「ねぇ、日本語わかるの?」
「え?・・あ、うん、わかる・・。」
初めて声をかけてもらい、内心嬉しかった私は目一杯笑って見せた。
仲良くなれるかもしれない、学校のことを教えてもらえるかもしれないと思ったのだ。
でも・・・その女の子が次に言った言葉は私の想像のどれでもないものだった。
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