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本当の家族。
初めての学校。
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「ここ・・・?」
お兄ちゃんに、半ば強引に連れられてこられた中学校はトオルさんのお店から歩いて15分ほどのところだった。
大きな門が閉じていて、中はグレーのタイルが道を作ってる。
両サイドに大きな木が列を成すように植わっていて、道の壁になってるようだ。
その向こう・・ちょうど真正面に建物が見える。
3階建てで、窓がたくさんあって・・・建物の一番高いところに大きな時計があった。
「大きい・・・。」
ぼそっと呟いた。
「まー・・わかんないことあったら先生かまわりのやつに聞けよ?俺でもいいけど・・学年違うから近くにはいないし。」
「・・・。」
『学校』というものを初めて見た私は途端に不安になってきた。
大きな建物に、一人で行けるのか・・
中で迷わないか・・
いろんなことが頭をよぎる。
でも・・その中で嬉しさもあった。
何をするのか、友達はできるのか・・どんなことを学ぶのかも気になる。
「・・楽しみみたいだな。」
お兄ちゃんは私を覗き込みながらそう言った。
「え?」
「嬉しそうな顔してる。」
そう言われ、私は自分の顔を両手で触った。
「そ・・そうかな・・。」
「そのぶんなら大丈夫そうだな。」
自分がどんな表情をしてるのかはわからない。
でも新しいことは気持ちが昂る。
「朝は一緒にいくから。」
「!!・・・はいっ。」
「じゃあ次は家までの道な。教えるから覚えな?」
お兄ちゃんは家までの道を歩きながら丁寧に教えてくれた。
曲がるところにある物とか、目印になるようなものとかを。
「このポストのとこを左な。次は信号を渡って右。」
「ポストを左で・・信号を右・・・」
「そうそう。」
ぶつぶつ言いながら歩いて行き、40分くらいかけて私とお兄ちゃんは家にたどり着いた。
いろいろ疲れた私は玄関で靴を履いたまま座り込んでしまった。
「ふうー・・・。」
「俺、先に入るからなー。」
そう言ってお兄ちゃんは家の中に入っていった。
少し休憩してから家に入ろうと思った時、インターホンが鳴った。
ピンポーン・・・
「?・・・はいー。」
玄関にいた私はそのまま扉を開けた。
するとそこには大きな段ボールを持った男の人が立ってる。
「お荷物です。『二階堂 亜子さま』でしょうか?」
「え?・・あ、はい。」
「ハンコ、いただけますか?」
「ハンコ・・・」
私はどうしたらいいのか分からずに辺りを見回した。
そのとき、直哉お兄ちゃんが奥から出て来たのが見えた。
「荷物、ありがとうございます。サインでもいいですか?」
そう言ってペンを持ってる。
「大丈夫です、お願いしますー。」
荷物屋さんは紙を差し出し、お兄ちゃんはその紙にペンを走らせる。
そのあと大きな段ボールを受け取り、荷物屋さんは行ってしまった。
「お兄ちゃん・・その荷物・・・」
自分宛てにきたことに驚いた私は段ボールを指差した。
「たぶん、亜子の制服だな。リビングで開けてみようぜー。」
お兄ちゃんは段ボールを持ったまま、スタスタと歩いて行ってしまった。
「ま・・待って・・・!」
私は疲れた身体を無理矢理起こし、リビングに向かう。
リビングではお兄ちゃんがカッターを持って待っていてくれた。
「ほら、開けてみな?」
「う・・うん・・・。」
言われたままに私は段ボールを開けた。
すると中には深い紺色の制服と白のブラウス、それにグレーチェックのスカートが入っていた。
セーターに、体操服、鞄に靴に・・・学校の服セットが全てあったのだ。
「うわぁ・・・。」
「お、制服が来たってことは明日から学校か?」
「それは・・わかんないです・・・。」
「あとでとぅさんに聞いてみる。明日からだったらいいな。」
私は段ボールに入っていた制服を取り、自分の身体にあてて見た。
鏡がないからどんなふうに見えるのかはわからなかったけど、この制服がかわいいということだけはわかった。
袖を通すのが楽しみで仕方ない。
「ふふっ。」
嬉しさに身を焦がしてる時、玄関のドアが開く音が聞こえた。
ガチャ・・・
「ただいまー。」
帰ってきたのはお父さんだ。
「お帰りなさいっ、お父さんっ、制服来ましたっ!」
興奮気味に伝えながら玄関までお出迎えに行く。
するとお父さんは優しく笑いながら私の頭を撫でた。
「『急ぎで』って言ってあったからね。明日、学校にご挨拶に行こうか。」
「明日ですか!?」
さっきお兄ちゃんに中学校を見せてもらったばかりの私は、興奮度合いが上がって行く。
「明日から学校・・・!」
制服を手に持ったまま、私はぴょこぴょこと飛び跳ねた。
それを押さえるように、お兄ちゃんが肩を押さえてくる。
「じゃあ今日はさっさとメシ食ってさっさと寝ような。」
「はいっ。」
私は制服たちを自分の部屋に持って行き、大事にハンガーにかけた。
それを眺めながら明日に想いを寄せる。
「学校・・・楽しみだなー・・。」
いろんな想像をする私だったけど、初日の登校であんなことになるなんて・・・思いもしなかった。
お兄ちゃんに、半ば強引に連れられてこられた中学校はトオルさんのお店から歩いて15分ほどのところだった。
大きな門が閉じていて、中はグレーのタイルが道を作ってる。
両サイドに大きな木が列を成すように植わっていて、道の壁になってるようだ。
その向こう・・ちょうど真正面に建物が見える。
3階建てで、窓がたくさんあって・・・建物の一番高いところに大きな時計があった。
「大きい・・・。」
ぼそっと呟いた。
「まー・・わかんないことあったら先生かまわりのやつに聞けよ?俺でもいいけど・・学年違うから近くにはいないし。」
「・・・。」
『学校』というものを初めて見た私は途端に不安になってきた。
大きな建物に、一人で行けるのか・・
中で迷わないか・・
いろんなことが頭をよぎる。
でも・・その中で嬉しさもあった。
何をするのか、友達はできるのか・・どんなことを学ぶのかも気になる。
「・・楽しみみたいだな。」
お兄ちゃんは私を覗き込みながらそう言った。
「え?」
「嬉しそうな顔してる。」
そう言われ、私は自分の顔を両手で触った。
「そ・・そうかな・・。」
「そのぶんなら大丈夫そうだな。」
自分がどんな表情をしてるのかはわからない。
でも新しいことは気持ちが昂る。
「朝は一緒にいくから。」
「!!・・・はいっ。」
「じゃあ次は家までの道な。教えるから覚えな?」
お兄ちゃんは家までの道を歩きながら丁寧に教えてくれた。
曲がるところにある物とか、目印になるようなものとかを。
「このポストのとこを左な。次は信号を渡って右。」
「ポストを左で・・信号を右・・・」
「そうそう。」
ぶつぶつ言いながら歩いて行き、40分くらいかけて私とお兄ちゃんは家にたどり着いた。
いろいろ疲れた私は玄関で靴を履いたまま座り込んでしまった。
「ふうー・・・。」
「俺、先に入るからなー。」
そう言ってお兄ちゃんは家の中に入っていった。
少し休憩してから家に入ろうと思った時、インターホンが鳴った。
ピンポーン・・・
「?・・・はいー。」
玄関にいた私はそのまま扉を開けた。
するとそこには大きな段ボールを持った男の人が立ってる。
「お荷物です。『二階堂 亜子さま』でしょうか?」
「え?・・あ、はい。」
「ハンコ、いただけますか?」
「ハンコ・・・」
私はどうしたらいいのか分からずに辺りを見回した。
そのとき、直哉お兄ちゃんが奥から出て来たのが見えた。
「荷物、ありがとうございます。サインでもいいですか?」
そう言ってペンを持ってる。
「大丈夫です、お願いしますー。」
荷物屋さんは紙を差し出し、お兄ちゃんはその紙にペンを走らせる。
そのあと大きな段ボールを受け取り、荷物屋さんは行ってしまった。
「お兄ちゃん・・その荷物・・・」
自分宛てにきたことに驚いた私は段ボールを指差した。
「たぶん、亜子の制服だな。リビングで開けてみようぜー。」
お兄ちゃんは段ボールを持ったまま、スタスタと歩いて行ってしまった。
「ま・・待って・・・!」
私は疲れた身体を無理矢理起こし、リビングに向かう。
リビングではお兄ちゃんがカッターを持って待っていてくれた。
「ほら、開けてみな?」
「う・・うん・・・。」
言われたままに私は段ボールを開けた。
すると中には深い紺色の制服と白のブラウス、それにグレーチェックのスカートが入っていた。
セーターに、体操服、鞄に靴に・・・学校の服セットが全てあったのだ。
「うわぁ・・・。」
「お、制服が来たってことは明日から学校か?」
「それは・・わかんないです・・・。」
「あとでとぅさんに聞いてみる。明日からだったらいいな。」
私は段ボールに入っていた制服を取り、自分の身体にあてて見た。
鏡がないからどんなふうに見えるのかはわからなかったけど、この制服がかわいいということだけはわかった。
袖を通すのが楽しみで仕方ない。
「ふふっ。」
嬉しさに身を焦がしてる時、玄関のドアが開く音が聞こえた。
ガチャ・・・
「ただいまー。」
帰ってきたのはお父さんだ。
「お帰りなさいっ、お父さんっ、制服来ましたっ!」
興奮気味に伝えながら玄関までお出迎えに行く。
するとお父さんは優しく笑いながら私の頭を撫でた。
「『急ぎで』って言ってあったからね。明日、学校にご挨拶に行こうか。」
「明日ですか!?」
さっきお兄ちゃんに中学校を見せてもらったばかりの私は、興奮度合いが上がって行く。
「明日から学校・・・!」
制服を手に持ったまま、私はぴょこぴょこと飛び跳ねた。
それを押さえるように、お兄ちゃんが肩を押さえてくる。
「じゃあ今日はさっさとメシ食ってさっさと寝ような。」
「はいっ。」
私は制服たちを自分の部屋に持って行き、大事にハンガーにかけた。
それを眺めながら明日に想いを寄せる。
「学校・・・楽しみだなー・・。」
いろんな想像をする私だったけど、初日の登校であんなことになるなんて・・・思いもしなかった。
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