上 下
7 / 40

倒れたかざね。

しおりを挟む
若そうな看護師さんが裏から入ってきた。



かざね「・・・・え?」

千秋「まだ診察中だ。」

看護師「あ、ごめんなさーい。」




すぐに出ていった看護師さん。

仲良さげな言い方だったことが気になって、私はちーちゃんに聞いた。



かざね「・・・ちーちゃんの彼女?」



なぜか胸がどくどくと嫌な音を立て始める。



千秋「・・・・どうかな。」

かざね「--っ!!・・・帰る。」



私は体温計を取り出してちーちゃんの机の上に置いた。



千秋「・・・かざね?」

かざね「診ていただいてありがとうございました。」



頭を下げて、私は診察室を出た。







ーーーーーーーーーーーーーーー





千秋side・・・




かざねが診察室から出ていった。




千秋「なんだ?一体・・・。」



わけがわからず、かざねが置いた体温計を手に取った。


千秋「!!・・・38度。やっぱり熱あんじゃんか。」



あとで様子を見に行くことにして俺は午後の診察の準備を始めた。

その時入ってきた看護師。

さっきの看護師だ。




看護師「千秋せんせ?」

千秋「はぁ・・・行きませんよ。」

看護師「どうしてですかー?彼女、いないんですよね?」

千秋「彼女はいないけど、俺にも選ぶ権利はある。キミは選ばない。」

看護師「えー・・・じゃあ、また誘いますねー?」





日本語が通じないんだろうか・・・。

出ていった看護師を唖然と見つめた。





千秋「英語のほうが通じたか・・?」






ーーーーーーーーーーーーーーーーー







かざねside・・・





病院を出た私はとぼとぼと歩きながら考え事をしていた。



かざね(ちーちゃん・・・彼女・・・。)



頭の中ではわかってる。

ちーちゃんはいつか結婚する。

ちゃんと理解してるハズなのに、胸の辺りが苦しい。




かざね(・・・風邪引いてるからだね。うん。)




自分に言い聞かせて私は家に帰り、曲を仕上げた。

さっさと出したかった私はそのまま楽譜屋さんに持ち込みに向かった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー





かざね「曲・・・上がりました・・・。」



いつもの店員さんに楽譜を渡すと、驚いた顔で私を見ていた。



店員「もう!?・・・ってか顔色悪いよ!?」

かざね「ちょっと風邪気味で・・・。」

店員「あー・・待ってて?すぐに報酬持ってくるから・・・!」



店員さんは奥に行き、封筒を持って戻ってきた。



店員「はい、これ。」

かざね「ありがとうございますー・・・。」

店員「早く帰って寝なよ?必要なら病院も・・・。」

かざね「はーい、ありがとうございます。」



私は報酬を受け取り、足取り重く家に向かって歩いた。

だんだん歩くのもキツくなってくるけど、家までは何とか耐える。

そう思いながら一歩一歩足を進めた。








ーーーーーーーーーーーーーー






かざね「つ・・ついた・・・。」



ドアを開け、部屋に入った私はそのまま床に倒れるようにして横になった。

本当ならベッドで寝たいところだけど、ちょっと寝てから・・・。

そう思って目を閉じた。

鍵をかけるのを忘れて・・・。









ーーーーーーーーーーーーーーー









千秋side・・・




仕事が終わった俺はかざねに電話をかけた。

でも・・・




千秋「出ないんだよな・・・。」



さっき38度の熱があった。

心配になってきた俺は車をかざねのアパートに向かって走らせた。




アパートの前に車を止め、かざねの部屋に向かう。

101号室の部屋を見ると・・・電気がついてなかった。




千秋「まだ・・帰ってない・・?」



俺はもう一度かざねのケータイに電話をかけた。




ピピピッ・・・ピピピッ・・・・




千秋「・・・え?中から音がする?」



ドアに耳をあててきく。

確かに部屋の中からケータイの音が聞こえてきてた。



千秋「中にいる?」



俺はドアノブに手をかけた。

がちゃっと回すと・・・・ドアが開いた。



千秋「!!・・・かざね?」


そーっとドアを開けて中に入ると、床に足が見えた。




千秋「・・・・え?」




目線をずらして足から太もも・・胴・・背中・・頭まで見た。

床に倒れてるのは・・・かざねだ。





千秋「かざねっ!!」





全身の血の気が引いていくような感覚に襲われた。

かざねに駆け寄り、息をしてることを確認して体を起こす。



千秋「大丈夫か!?かざね!?」

かざね「・・・・・・。」

千秋「体が熱いな・・・病院に連れて行くか・・・?」




どうしようか悩みながら辺りを見ると、あるべきものがないことに気がついた。

かざねが倒れてるのは、玄関を入ってすぐにあったキッチン。

キッチンなハズなのに・・・



千秋「冷蔵庫が・・・ない?」



それどころかキッチンらしきところに食材がなにもなかった。

トースターや、レンジ、炊飯器もない。

部屋らしきところには床一面に紙が散らばってる。

どうみても・・・『楽譜』だ。



千秋「・・・収入が少ないって言ってたな。食べてないのか。」




俺はかざねを抱えて部屋を出た。




千秋「入院させても退院したあとが同じ生活なら意味ない。俺んちに連れてくか。」




かざねを車に乗せて、俺のマンションに向かった。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。 住んでいるのはそこらへんのマンション。 変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。 「はぁ…疲れた」 連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。 (エレベーターのあるマンションに引っ越したい) そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。 「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」 「はい?どちら様で…?」 「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」 (あぁ…!) 今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。 「え、私当たったの?この私が?」 「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」 尿・便表現あり アダルトな表現あり

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

処理中です...