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熱。

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車を運転しながら、俺はかざねに診察のことを伝えた。



千秋「あ、明後日くらいに病院来いよ?」



足の状態は悪化はしてなさそうだけど経過を診ておきたい。



かざね「・・・何時くらいがいいのかな。」

千秋「俺、昼からだから。受付で俺の名前言ったらいいからな。」





俺の言葉に、かざねが驚いたように言う。




かざね「・・ちーちゃんが診るの!?」

千秋「当たり前だろ?俺以外に誰が診るんだよ。」

かざね「えー・・・。」

千秋「『えー』じゃない。ちゃんと来いよ。」

かざね「はい・・・。」





前と同じようにアパートの前に車を止める。

ドアを開けて下りたかざねは、振り返って手を振った。




千秋「見送らなくていいからさっさと部屋に入れ。風邪引くぞ。」

かざね「わかったよ。じゃあおやすみ。」

千秋「ん。」




俺は車を走り出させた。

ルームミラーで後ろを見ると、いつまでも手を振ってるかざねが写ってる。




千秋「もー・・・あいつは・・・。」




早く部屋に入って欲しい反面、見送られて嬉しい自分がいる。

悲しいような嬉しいような・・・複雑な気持ちになりながら帰路についた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






かざねside・・・





ちーちゃんの姿が見えなくなるまで見送った私は、部屋に入ってすぐ、仕事に取り掛かった。



かざね「火曜日に病院行くともう食費がヤバくなる・・・!早く曲をあげて報酬もらわないと・・・!」



預かってきた音源にイヤホンをさす。

耳に入ってくる音を聞きながら五線紙に書き記していった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







集中して楽譜に記すこと1日半。

ほぼ寝ないで作業をし、完成が近づいてきたけど、診察の時間も近づいてきていた。




かざね「もう火曜日・・・。あとちょっとで完成なんだけどなー・・。」



でも病院はいかないといけない。

出来ればちーちゃんに診られたくない私は午前中に行くことに決めていた。

座ってた床から立ち上がり、病院に行く準備を始める。



かざね「あ・・・もうだいぶ痛くない。」



丸一日動かなかったのがよかったのか、足の痛みはだいぶ引いていた。

その代わり・・・



かざね「・・・・くしゅっ。」




くしゃみが出始めた。



かざね「風邪・・・かなぁ。まぁ、いいや。明日には曲が仕上がるから明後日から熱出しても問題ないし。」




私はマフラーを首に巻いて、病院に向かった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







病院についた私は、受付で名前を言う。



かざね「すみません、姫宮です。足の再診にきました。」

受付「ちょっとお待ちくださいねー。・・・・・あ、担当の南条先生はまだ来られてないんですけど・・・。」

かざね「!!・・・いいんです!だれでもいいんで午前中にお願いします・・・!」





半ば強引に受付の人にお願いした。

私の必死さが伝わったのか、受付の人は了承してくれた。




受付「か・・かしこまりました。では待合でお待ちください。」





空いてる椅子に座り、鞄からウォークマンを取り出す。

少しでも仕事を進めるために、私は待ってる時間も無駄にしたくなかったから持って来たのだ。

五線紙を取り出して書き記していく。


かざね(これで少し早くあげれる。そしたら報酬が出るから・・・ご飯買える!)



全てはご飯の為に、私は曲作りに集中した。









ーーーーーーーーーーーーーー





ーーーーーーーーーーーーーー








五線紙におたまじゃくしを書いてると、誰かが私の肩を叩いた。




かざね「?」




顔をあげると私の前に看護師さんが立っている。

耳に入れていたイヤホンを外すと、看護師さんは私に声をかけた。




看護師「姫宮さんですか?」

かざね「あ、はい。」

看護師「すみません、何度かお呼びしたんですけど返事がなかったので最後になってしまいました。」

かざね「最後って・・・・。」




周りを見渡すと、もうだれもいなかった。

たった一人取り残された待合。

しーん・・・としてて少し怖いくらいだった。



かざね「!?・・・すみません。」

看護師「いえ。診察室どうぞ。」

かざね「はい・・・。」




私はウォークマンを鞄に入れ、診察室のドアをノックした。



コンコン・・・ガラガラ・・・




かざね「失礼します・・・・・って、え!?」

千秋「ちゃんと来たな。・・・時間は違うけど。」




診察室にいたのはちーちゃんだ。




かざね「えっ・・!?なんで・・・・」

千秋「ちょっと早めに来るものなんだよ。そしたら受付でお前が来てるって聞いて・・・ほら、足。」





私は仕方なくちーちゃんに足を見せた。




千秋「お、いい感じだな。」

かざね「でしょ?じゃあこれで・・・。」






椅子から立ち上がり、帰ろうとしたときちーちゃんが私を呼び止めた。




千秋「かざね。」

かざね「な・・なに・・?」





どきどきしながら返事をした。




千秋「熱計れ。」




そう言ってちーちゃんは体温計を差し出してきた。




かざね「・・・・嫌。」

千秋「計るだけだから。」

かざね「・・・・・・。」




仕方なく受け取り、私は服の下から体温計を入れた。

体温計が鳴るまで沈黙の時間が続く。

何か喋った方がいいのかとも思ったけど、風邪気味なことがバレたら大変なことになりそうだから、もう黙っとくことにした。

その時・・・




看護師「千秋せんせー?ご飯、いつ行きますー?」


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