6 / 40
熱。
しおりを挟む車を運転しながら、俺はかざねに診察のことを伝えた。
千秋「あ、明後日くらいに病院来いよ?」
足の状態は悪化はしてなさそうだけど経過を診ておきたい。
かざね「・・・何時くらいがいいのかな。」
千秋「俺、昼からだから。受付で俺の名前言ったらいいからな。」
俺の言葉に、かざねが驚いたように言う。
かざね「・・ちーちゃんが診るの!?」
千秋「当たり前だろ?俺以外に誰が診るんだよ。」
かざね「えー・・・。」
千秋「『えー』じゃない。ちゃんと来いよ。」
かざね「はい・・・。」
前と同じようにアパートの前に車を止める。
ドアを開けて下りたかざねは、振り返って手を振った。
千秋「見送らなくていいからさっさと部屋に入れ。風邪引くぞ。」
かざね「わかったよ。じゃあおやすみ。」
千秋「ん。」
俺は車を走り出させた。
ルームミラーで後ろを見ると、いつまでも手を振ってるかざねが写ってる。
千秋「もー・・・あいつは・・・。」
早く部屋に入って欲しい反面、見送られて嬉しい自分がいる。
悲しいような嬉しいような・・・複雑な気持ちになりながら帰路についた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かざねside・・・
ちーちゃんの姿が見えなくなるまで見送った私は、部屋に入ってすぐ、仕事に取り掛かった。
かざね「火曜日に病院行くともう食費がヤバくなる・・・!早く曲をあげて報酬もらわないと・・・!」
預かってきた音源にイヤホンをさす。
耳に入ってくる音を聞きながら五線紙に書き記していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
集中して楽譜に記すこと1日半。
ほぼ寝ないで作業をし、完成が近づいてきたけど、診察の時間も近づいてきていた。
かざね「もう火曜日・・・。あとちょっとで完成なんだけどなー・・。」
でも病院はいかないといけない。
出来ればちーちゃんに診られたくない私は午前中に行くことに決めていた。
座ってた床から立ち上がり、病院に行く準備を始める。
かざね「あ・・・もうだいぶ痛くない。」
丸一日動かなかったのがよかったのか、足の痛みはだいぶ引いていた。
その代わり・・・
かざね「・・・・くしゅっ。」
くしゃみが出始めた。
かざね「風邪・・・かなぁ。まぁ、いいや。明日には曲が仕上がるから明後日から熱出しても問題ないし。」
私はマフラーを首に巻いて、病院に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病院についた私は、受付で名前を言う。
かざね「すみません、姫宮です。足の再診にきました。」
受付「ちょっとお待ちくださいねー。・・・・・あ、担当の南条先生はまだ来られてないんですけど・・・。」
かざね「!!・・・いいんです!だれでもいいんで午前中にお願いします・・・!」
半ば強引に受付の人にお願いした。
私の必死さが伝わったのか、受付の人は了承してくれた。
受付「か・・かしこまりました。では待合でお待ちください。」
空いてる椅子に座り、鞄からウォークマンを取り出す。
少しでも仕事を進めるために、私は待ってる時間も無駄にしたくなかったから持って来たのだ。
五線紙を取り出して書き記していく。
かざね(これで少し早くあげれる。そしたら報酬が出るから・・・ご飯買える!)
全てはご飯の為に、私は曲作りに集中した。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
五線紙におたまじゃくしを書いてると、誰かが私の肩を叩いた。
かざね「?」
顔をあげると私の前に看護師さんが立っている。
耳に入れていたイヤホンを外すと、看護師さんは私に声をかけた。
看護師「姫宮さんですか?」
かざね「あ、はい。」
看護師「すみません、何度かお呼びしたんですけど返事がなかったので最後になってしまいました。」
かざね「最後って・・・・。」
周りを見渡すと、もうだれもいなかった。
たった一人取り残された待合。
しーん・・・としてて少し怖いくらいだった。
かざね「!?・・・すみません。」
看護師「いえ。診察室どうぞ。」
かざね「はい・・・。」
私はウォークマンを鞄に入れ、診察室のドアをノックした。
コンコン・・・ガラガラ・・・
かざね「失礼します・・・・・って、え!?」
千秋「ちゃんと来たな。・・・時間は違うけど。」
診察室にいたのはちーちゃんだ。
かざね「えっ・・!?なんで・・・・」
千秋「ちょっと早めに来るものなんだよ。そしたら受付でお前が来てるって聞いて・・・ほら、足。」
私は仕方なくちーちゃんに足を見せた。
千秋「お、いい感じだな。」
かざね「でしょ?じゃあこれで・・・。」
椅子から立ち上がり、帰ろうとしたときちーちゃんが私を呼び止めた。
千秋「かざね。」
かざね「な・・なに・・?」
どきどきしながら返事をした。
千秋「熱計れ。」
そう言ってちーちゃんは体温計を差し出してきた。
かざね「・・・・嫌。」
千秋「計るだけだから。」
かざね「・・・・・・。」
仕方なく受け取り、私は服の下から体温計を入れた。
体温計が鳴るまで沈黙の時間が続く。
何か喋った方がいいのかとも思ったけど、風邪気味なことがバレたら大変なことになりそうだから、もう黙っとくことにした。
その時・・・
看護師「千秋せんせー?ご飯、いつ行きますー?」
1
お気に入りに追加
600
あなたにおすすめの小説
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
好きすぎて、壊れるまで抱きたい。
すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。
「はぁ・・はぁ・・・」
「ちょっと待ってろよ?」
息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。
「どこいった?」
また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。
「幽霊だったりして・・・。」
そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。
だめだと思っていても・・・想いは加速していく。
俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。
※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。
※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。
※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。
いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ちょっとエッチな執事の体調管理
mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。
住んでいるのはそこらへんのマンション。
変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。
「はぁ…疲れた」
連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。
(エレベーターのあるマンションに引っ越したい)
そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。
「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」
「はい?どちら様で…?」
「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」
(あぁ…!)
今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。
「え、私当たったの?この私が?」
「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」
尿・便表現あり
アダルトな表現あり
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる