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この国の現状。

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リズ「全部手作業ってそんなかかるんですか・・・。」

カイル「木を育てて、切り倒す。それを切り分けて、加工する。車輪なんて同じサイズにしないといけないからな、手間暇がかかるんだ。」

リズ「そうなんですか・・・。」




アンダーの世界は・・・全部機械が作る。

全て同じサイズで出来上がるなんて当たり前のことだ。

大量生産なんて当たり前。

望んだものを望んだ通りに仕上がってくる。

人の手なんて・・・借りない。






リズ「あの・・・!」

カイル「なんだ?」

リズ「私もお手伝いに行ってもいいですか!?」




私の言葉にカイルさまは驚いた顔をした。

遠くを見ていた目線は私に移り、口をぽかんと開けている。




カイル「それは・・・かまわないが・・・何故?」

リズ「何か・・・お手伝いできることがあるかもしれないと思って・・・。もう3日もお世話になってますし・・・それにいつまでお世話になるかわかないですし・・・。」




カイルさまはこの国のトップだ。

ゼオンさんやルカさんは騎士としてカイルさまを守ったりしてる。

侍女さんたちはお城をきれいにして・・・ご飯とかの用意をしてくれる。


私だけ何もしてない。

何もしてない私なら、お手伝いはしやすいと思った。





カイル「別に気にする必要はないが・・・リズがしたいなら構わない。ルカに言っておく。」

リズ「ありがとうございますっ。」





こうして私はこの国で一つ『できること』を見つけた。

お城に帰ったカイルさまはゼオンさんとルカさんに話をして、翌日から畑のお手伝いに行くことになり、私も一緒に行かせてもらえるよう話をつけてくれた。








ーーーーーーーーー







翌日・・・





朝食を食べ終わったあと、私はルカさんと一緒に昨日の城下町近くの畑に向かうことになった。

支度を整えてお城を出ると、ルカさんが馬一頭と一緒に私を待ってくれていた。



リズ「すみませんっ、お待たせしてしまって・・・。」

ルカ「いいって。今日は馬車ではいけないから馬な。」

リズ「馬・・・。」





見るのも初めてだったんだから乗ったことなんてもちろんない。

どうしようかと思いながら私は・・・私よりも大きな馬を・・思わず見つめた。



ルカ「ははっ。大丈夫。俺がしっかり抱えるから。」

リズ「・・・へっ?」



ルカさんはそういうなり私の事をひょいと抱え上げた。




ルカ「よっと・・・。」

リズ「!?」




まるで荷物のように馬の背に乗せられる私。

落ちないように私の身体を押さえながらルカさんも馬にまたがった。




ルカ「しっかり掴まっとけよ?」




そう言うとルカさんは馬についてる手綱を持って、器用に馬を動かし始めた。

馬はパカパカと音を立てて歩き出し、お城を出る。

最初こそは固い地面が続いていたけど、すぐに森のような場所に入った。

それは馬車からは見えない景色で・・・私は景色に夢中になっていった。




リズ「すごい・・・!」

ルカ「馬は怖くないか?」

リズ「おしりは痛いけど・・・全然大丈夫!」

ルカ「ははっ、リズは肝が据わってそうだな。」




風を感じて、耳に森の音が聞こえる。

自然が起こすものは全てが初めてだから興奮が止まらない。




リズ「私も一人で乗ってみたいなー・・・。」




呟くように言った言葉。

それは、この世界じゃなきゃ体験できないことだ。




ルカ「今度練習するか?」

リズ「!?・・・聞こえてたんですか!?」

ルカ「耳と目はいい方なんでな。」

リズ「練習・・・させてくれるんですか?」





この世界の人はみんな優しい。

私はこの世界にきてまだ4日目だ。

初めてこの世界に来た男の人には怒鳴られたけど・・・その前は私を心配してくれていた。

全く知らないであろう私を。




ルカ「リズがやりたいなら。あと教えれる時間が取れればな。」

リズ「ちょっと思ってたんですけど・・・みなさん優しすぎません?私、自分の身分すら証明できないんですよ?ほんとに異世界からきたと思ってます?嘘ついてるかもしれませんよ?」




ルカさんたちの行動や言葉が馴染みすぎてて時々不安に思ってしまう私はおもわずルカさんに聞いてしまった。

でも思ってることは本当のことだ。




ルカ「一日中太陽みたり土見たりするやつこの世界にいないって(笑)あとスープとオムレツ間違えるやつもな。」

リズ「あ・・・。」

ルカ「体力もないし?どう考えてもリズは誰かの手を借りないと生きて行けない。リズのいた世界がどんなのかは・・・まぁ、わからないけど?」

リズ「うぅ・・・。」




言われるがままだけどほんとのことだから仕方なかった。

料理はしたことないし、そもそもどうするものかもわからない。

馬には乗れないし・・・ビートがいないとほんとになにもできないことをこの世界では思い知らされる。



ルカ「ほら、着くぞー。」




もやもやと頭の中で考えてるうちに馬は目的の畑に到着した。

ルカさんに馬から下ろしてもらいながら・・・私は畑を見ていた。




リズ(・・・広い。)




見渡す限りの畑が目の前に広がっている。

それは右を見ても、左を見ても・・果てしなく広がっていた。





ルカ「ほら、行くぞー。」




近くに木に馬をくくりつけたルカさんが私を呼んだ。

呆気にとられながら畑の端っこを歩いて行き・・・井戸のところに向かう。

井戸の周りには数人の町の人がいて、みんなで水を汲んでいるところだった。




ルカ「城から派遣されて来ました。お手伝いします。」




ルカさんの言葉に、この畑の責任者らしきひとが口を開いた。



町人「ありがとうございます!!お待ちしてました!!」

ルカ「状況は?」




ルカさんは町の人が説明するのを真剣な顔をして聞いていた。

私も一緒になって聞いていて・・・




・この井戸から汲んだ水を畑に撒きに行く。

・運べるのは木でできた入れ物のみ。

・水を汲むのは専用の人がいる。




と、いうことだった。




ルカ「リズ、ほら。」




ルカさんは私に木でできた入れ物を手渡してくれた。

それはビートが入れるくらいの大きさで・・・両手で持つにはちょうどいいくらいの大きさだ。

水を一度に大量に運ぶことはできない。





リズ「もっと大きいほうがいいんじゃないですか?」




大きいほうが一度に大量の水を運ぶことができそうだと思った。




ルカ「そうすると重くなるだろ?」

リズ「あ・・・・。」

ルカ「ほら、水入れてもらって撒きに行ってこい。」




私は井戸に行き、くみ上げられた水を入れ物に入れてもらった。

ちゃぷちゃぷと揺れる水面を見ながらでこぼこの畑を歩いて行く。



町人「できるだけ遠くから撒いてください!近いのはこぼしたりしてなんやかんや撒けるんで!」

リズ「はーい!」




私は地面を見ながら歩いた。

不思議なもので、地面を見ながら歩くと、入れ物に入った水がちゃぷちゃぷ揺れてこぼしてしまう。

かといって水をみてると地面がでこぼこしすぎてバランスを崩してしまい・・・やっぱりこぼしてしまう。





リズ「難しい・・・。」




私は歩き続け、自分自身で結構遠くまで来たと思ったところで水を撒いた。

カピカピだった土は水を得てしっとりとしていく。

その様子を見ていたけど・・・しみ込んだ水はあっという間に渇いて行った。





リズ「今撒いたのに・・・。」





私は入れ物を抱えて井戸に向かって足を進めた。

こぼれる水がないから周りを見ながら歩いて行く。

ルカさんは両手に入れ物を持って小走りに水を運んでる。

町の人も・・・みんな二つずつ入れ物を持っていた。




リズ「私も二つ持った方がいいかな。」




一つより二つのほうがたくさん水を運べる。

それは確かなことだけど・・・




リズ「だめだ・・・私じゃあまともに運ぶこともできない・・・。」




一つでさえめちゃくちゃこぼしながら運んでいた。

二つになったらとてもじゃないけどまともに運べないだろう。

私は二つ持ちを諦めて井戸に戻った。



井戸で水を入れてもらって、畑の遠いところに撒く。

撒いたらまた井戸に戻ってきて水をもらう。





リズ「はぁ・・・はぁ・・・。」





元から体力のない私は水を持って何度も往復することがだんだんきつくなっていった。

ここに来た時よりは少し体力がついたと思うけど・・・でこぼこな畑を歩くのは・・・体力を奪われる。




リズ「きつ・・・。」




水を撒き終わり、井戸に戻ろうとしたときルカさんが私の隣にやってきた。




ルカ「ちょっと休めよ?」















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