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この世界のこと。
しおりを挟む私はこの世界のことを知らないといけない。
知らなければ帰る方法も見つけられないし、帰るまでの間、生きていくこともできない。
リズ(平均寿命まであと半分だけど・・・すぐに死んじゃうなんて嫌だ。ビートともはぐれたままだし・・・。)
この世界のことを少しでも知りたくてアリスさんに聞いたのだ。
アリス「それは・・・私の口からはご説明できません。」
リズ「そんな・・・・。」
アリス「もうすぐお夕飯の時間になります。そこで王にお聞きになってはどうでしょうか。」
リズ「お夕飯・・・?」
アリス「はい。もう間もなくかと。」
アリスさんがそう言った時、他の侍女さんが呼びに来た。
侍女「準備が整いました。」
アリス「ちょうどよかったです。さ、参りましょう。」
私はアリスさんについて部屋を出た。
さっき通った道とはまた違う道を、アリスさんは進んで行く。
リズ「迷子になりそう・・・。」
そんなことをぼやいたとき、アリスさんは大きなドアの前で足を止めた。
コンコンと軽くノックをしてドアをあけ、私を中に通してくれた。
アリス「どうぞ。」
リズ「ありがとうございます。」
中は長いテーブルが一つ置かれていて・・・向かい合うように椅子がある。
一列に20脚はありそうだから・・・全部で40人ほどが座れそうだ。
リズ「すごい・・・。」
アリス「リズさまのお席はあちらです。」
そう言われて案内されたのは一番端から二つ目の席だ。
一番角に一脚だけ椅子が置かれてるけど、豪華な装飾を誇ってる。
察するにこれは・・・王の席だろう。
アリス「もうまもなく皆さんがお揃いになりますのでお待ちください。」
私は椅子に座った。
この椅子も木でできている。
木でできた椅子は珍しく、私は背もたれを触ったり、テーブルを触ったりしてその感触を味わっていた。
リズ(一生触れないものだと思ってたのに・・・触れてる。)
忘れないようにしながら触ってると、角の席に誰かが座った。
豪華な装飾の椅子に座る人なんて・・・一人しかいない。
王「何をそんなにさわってるんだ?リズ。」
リズ「・・・王・・さま?」
王「『カイル』だ。名前でいい。」
リズ「カイル・・さま。」
王「なんだ?」
リズ「この世界は・・・木材でできたものが多いんですか?」
用意してもらった家具も、今私が座ってる椅子も、目の前にあるテーブルも全部木でできている。
辺りを見回しても・・・私が普段使ってるものはない。
カイル「そうだ。・・・何か変か?」
リズ「木でできたものは・・・・初めて見たんで・・。」
カイル「ほぅ・・・。リズの世界はどんなものがある?」
リズ「アンダーですか?・・・アンダーにあるのはーーーーーー」
私は彼にアンダーのことを説明した。
地上で暮らせなくなってしまい、地下で暮らしてること。
アンダーの世界は全て機械で動いていることなどを。
カイル「・・・機械か!」
リズ「?・・・はい。」
ただ私の住んでいたところを話しただけなのに、カイルさまは目を輝かせ始めた。
いつの間にか私の隣や前に人が座ってて、私とカイルさまの話を聞いてる。
その座ってる人は・・・ゼオンさんやルカさんだけど。
ゼオン「地中で人が暮らせれるのですか?」
割って入るようにして話に参加し始めたのはゼオンさんだ。
リズ「はい。もう何百年も前に移住が始まって・・・地上で暮らしてる人はいません。」
ゼオン「先ほど『機械』とおっしゃってましたけど・・・びぃとと呼んでおられた方はもしかして・・・・」
リズ「・・・。」
私は悩んだ。
町の人に言われた言葉がまだ頭の中に残っていたからだ。
『手先』
『ロボットなんて』
どう考えても否定的な言葉だ。
カイル「・・・だいたい想像はつくが・・・言いたくなければ別にいい。ただ・・・言ったほうが我々が協力しやすいだけだ。」
リズ「あ・・・。」
カイル「リズが『橋渡しの者』であっても、『橋渡しの者』でなくてもその身は保護する。もともとはこの世界の問題だ。リズに無理に協力は頼まない。」
私が『橋渡しの者』の可能性があって、この人たちは保護してくれた。
部屋をくれて、服も・・・。
カイルさまが言った『橋渡しの者でなくても保護する』。
その言葉を・・・私は信じるしかない。
リズ「・・・ビートは・・・私の世話焼きロボットです。たぶん・・・この世界に来るときにはぐれました。」
カイル「!!・・・どんなロボットだ?」
リズ「これくらいの大きさで・・・喋ります。『心』を持ってるので・・・それはもう自由に。」
ゼオン「まさか・・・!ロボットは心なんてないでしょう!?」
ゼオンさんの言葉に、私は引っかかるものがあった。
まるでロボットを知ってて・・・嫌ってるかのようだ。
カイル「ゼオン。」
ゼオン「・・・失礼しました。」
私は彼らを見回した。
ゼオンさんは『信じられない』って表情を浮かべてテーブルを見つめてる。
ルカさんも同様に・・・テーブルを見つめていた。
そんな中、カイルさまだけが・・・笑っていた。
カイル「リズ。・・・この世界はな、二つの国がある。」
リズ「・・・二つ?」
カイル「一つはここ。私が治めてる『人間の国』。もう一つは・・・『機械の国』だ。
リズ「!!」
カイル「食事が来るまでの間、昔話風に話をしてやろう。」
そういうとカイルさまは両肘をテーブルについた。
手を組んでその上に顎を置いて・・・話し始めた。
カイル「むかーしむかし・・・かわいい女の子がいました。---」
・・・・・・・・
その女の子の住む世界には『機械の国』と『人間の国』がありました。
二つの国は仲が良く、お互いに行き来して発展していきました。
機械の国から人間の国にやってくるのは農作業や、力仕事を得意とするロボットたち。
彼らは毎日のように人間の国にやってきて、働きました。
人間の国からも機械の国にいくことがあって、機械の国でしか手に入らない鉄でできたものや、手作業じゃできない造りの物を買ったりしていました。
そうしてお互いにないものを補いながら暮らしていくこと数百年。
ある日、女の子が機械の国に遊びに行きました。
普段から機械の国との交流があった両親は、快く送り出しました。
女の子は目を輝かせながら機械の国に入ったのですが、その日の夕方に・・・手足をもがれた状態で発見されたのです。
その場所は機械の国のすぐそば。
人の力ではできないもがれ方をされていたので、すぐに機械の仕業だとわかりました。
母親「ひどい・・・どうしてこんなことに・・・・・。」
機械には心が無い。
それどころか人を殺すなんてどういうつもりだと、人間の国の人々は機械の国に詰め寄りました。
しかし相手は機械。
返ってくる返事は『ナオス』のみ。
怒り狂った人々は機械の国との交流をやめたのです。
それ以来人間の国は発展することなく、そのままの状態なのです。
・・・・・・・・・
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