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橙夏。

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俺は思い出した。

大きい公園で千冬と歩いてるときに迷子の女の子の相手をしたことを。




秋也「あぁ、あったな。」

千冬「男の子がよかった?」

秋也「違う違う、そういう意味じゃなかったんだよ。」

千冬「?」




俺は千冬に正直に言うか悩んだ。

でも俯き加減な千冬を安心させるためには言うしかない。




秋也「・・・笑うなよ?」

千冬「?・・・うん。」

秋也「あの時・・・千冬がもし、俺の子を妊娠して女の子が生まれたら・・・絶対かわいいから嫁に出したくないなーって思って・・・・。」





恥ずかしい気持ちを隠しながら千冬を見ると、千冬は必死に笑いを堪えていた。




千冬「ぅくっ・・・ふふっ・・・。」

秋也「笑うなって言ったのに・・・。」

千冬「あははっ・・・そうだったんだ(笑)。」

秋也「そ。」




千冬はベッドに座り、大きくなったお腹を擦る。




千冬「橙夏?お嫁に行けないことが決まっちゃったよ?(笑)」




クスクス笑いながら話しかける千冬。




秋也「・・・『ママ』になっても俺だけの千冬でいてくれよ?」

千冬「!!・・・橙夏のパパは甘えたさんですねー。」

秋也「!!・・・どっちが『甘えた』か教えてやるよ。」




そう言って千冬の顎をすくい、真上を向かせた。

唇を塞ぎながら食べる。




ちゅ・・




千冬「!?」

秋也「産んだ後は覚悟しとけよ?抱けなかった1年分埋めてもらうからな?」

千冬「!?!?」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











ーーーーーーーーーーーーーーーー










7週間後の昼過ぎ・・・




千冬は無事に女の子を産んだ。

帝王切開で、出血も最小限に抑えることができた。






千冬「ねぇ、秋也さん?」





ぎこちない動きで母乳をあげながら千冬が俺に聞いてきた。





秋也「なに?」

千冬「橙夏の血液型って・・・・。」




それは俺も気になってたことだ。





秋也「千冬の血液型は突然変異でなった血液型だろ?ご両親は普通の血液型だし。」

千冬「うん。」

秋也「だから遺伝はしないんじゃないかと思って・・・でも調べてもらってる。」

千冬「普通の血液型だったらいいなー・・。」





母乳を飲みながら寝てしまった橙夏。




秋也「げっぷさせないとな。」




俺は千冬から橙夏を受け取り、手際よく背中を叩いた。





千冬「・・・何気に慣れてるよね・・・。」

秋也「内科は子連れでくる患者も多いからな。子供の体調不良はお母さんがすぐに連れて来るけど、お母さん自身は相当悪化しないと来ない。だから点滴してる間預かるんだよ。」

千冬「点滴?」

秋也「子育ては365日24時間。『ちんたら治してるほど時間に余裕はない!』って言われるから特効薬で点滴。あとは内服。」

千冬「あー・・・なるほど・・。」

秋也「悪化する前に来てくれたらいいけど・・・主婦も忙しいからな(笑)」






橙夏のげっぷを出させて、ベッドに寝かせる。

ついでにおむつも変えて、俺は仕事に戻ることにした。





秋也「じゃあまたあとでな。」

千冬「ありがと。いってらっしゃいー。」





千冬に見送られ医局に戻る。

俺の机の上に封筒が1枚置かれているのが見えた。





秋也「!・・橙夏と千冬の検査結果だ。」




出産したあと二人分の血液検査を依頼していた。

結構細かい項目まで。





秋也「受け継いでませんように・・・。」



そう願いながら俺は封筒を開けた。




秋也「橙夏は・・・・血液型はA。俺と同じだな。赤血球も・・・血小板も問題ない。」




千冬の血液型は引き継がれなかったようだ。

ほっと胸を撫でおろしながら俺は千冬の検査結果を見た。



秋也「おぉ。千冬もいい感じだな。産んだ後、また貧血になるかと思ったけど・・・。」




妊娠をきっかけに変わった体質。

自分で血液を作れるようになったままのようだった。






秋也「これで千冬の子育ては少しは楽になるな。」







毎日の薬から解放だ。

代わりに毎日赤ちゃんと向き合わないといけなくなるけど・・・

千冬は橙夏を可愛がってる。

橙夏は二人の子供だ。

二人で育てて行けばいい。




橙夏は生まれてまだ数日。

『泣く』ことでしか要求を言えない赤ちゃんのお世話は大変だろう。

でも、俺たちも親になって数日だ。

わからないことは二人で協力すればいい。


手探りで育てる橙夏は・・・二人の宝物なんだから。














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