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毎日。
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俺はインターホンを鳴らした。
ピンポーン・・・
秋也「千冬!?いるんだろ!?」
声をかけるけどなんの返事もない。
秋也「戻って来い・・・!・・な!?」
物音すらしない千冬の家。
秋也「頼むから・・・・・。」
そのまま小一時間ほどドアの前で待ったけど、千冬は出てこなかった。
秋也「・・・タイムリミットだ。」
俺は千冬のマンションを出て仕事に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病院に着いた俺は、千冬の主治医のところに行った。
千冬がいたっぽいことを伝えるために。
医師「・・・千冬ちゃんがいた!?」
秋也「多分ですけど。」
医師「はー・・・いたならよかったけど・・。」
胸を撫でおろす主治医。
でも問題は山積みだ。
医師「『ちゃんと』話し合うことすら無理みたいだね・・。」
秋也「・・・・すみません。」
医師「・・・堕ろす・堕ろさないのどっちにしても妊婦検診は受けないと・・・。」
秋也「そう・・ですね・・・。あの・・・・」
医師「うん?」
秋也「千冬は・・・出産することが可能なんでしょうか・・・。」
主治医は目を丸くしながら俺を見た。
医師「それは・・・千冬ちゃんの意思を尊重する・・と?」
秋也「俺だって・・・千冬との子供を諦めたくないですよ。千冬の命のほうが大事なだけで。」
医師「帝王切開なら出血してもすぐに止血できる。出た血を戻すことも。」
秋也「なら・・・!」
医師「それでもリスクは高いよ。無事に37週回るまで過ごせるかどうかの保証もできない。」
秋也「そうですよね・・・。」
やっぱり堕ろさせたほうが・・・
でも・・リスクは高いけど産むことも可能・・・
途中で流産してしまったときのことを考えたら・・・堕ろすほうが出血量は少ない気が・・・
なら帝王切開のほうが・・・・・
秋也「あぁぁぁぁぁ・・・・・・。」
医師「悩めるほど選択肢が多いのはいいけど・・・話し合う相手が無言を貫くんじゃ意味ないねー。」
秋也「・・・・・・。」
俺は頭を抱えながら医局に戻った。
秋也「どうやったら話ができるんだ・・・?」
悩みながら仕事をする。
看護師「千冬ちゃんですか?」
看護師が山のような書類をもって俺のところに来た。
秋也「多分・・・自分のマンションにいる。でも出てこないんだよ・・・。」
そう言うと、看護師はクスクス笑いながら提案してきた。
看護師「なら『手紙』を書くしかないですねー。」
秋也「手紙?」
看護師「ケータイは切ってると思うのでメールは届かない。手紙なら目についちゃうし、気が向けば読むかもしれませんよ?」
秋也「手紙か・・・。」
毎日届ければ・・・千冬はいつか読むかもしれない。
秋也「・・・書く。」
俺は便箋を取り出した。
ペンを取り、書き始める・・・・・んだけど、なんて書き始めたらいいか分からなかった。
秋也「『拝啓』・・・・?」
どう考えてもおかしい出だしだ・・。
秋也「『体・・・大丈夫か?』」
『体・・・大丈夫か?貧血、起こしてないか?
千冬と・・・話がしたい。ちゃんと話がしたいんだ。』
俺はそれだけを書いて、仕事帰りに千冬の家のポストに入れに行った。
見てくれることを祈って。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから2週間。
俺は千冬の家のポストに手紙を入れ続けていた。
『一方的に堕ろせって言ってごめん。』
『体調、崩してないか?』
『お腹の赤ちゃんの様子・・・気になる。妊婦検診っていうのがあるから一度、診察に来ないか?』
『診察券作ったから・・・赤ちゃんが元気かどうかの確認しに来いよ・・・。』
毎日毎日・・・読んでくれてることを願いながら入れていた。
ある日、いつもと同じ時間に千冬の家のポストに手紙を入れると、部屋からガサガサと音がした。
どうもポストを開けてるようだ。
秋也「千冬・・・?な、出てこないか?無理は言わないけど・・・診察はしたい。千冬も・・・お腹の子も・・・。」
返事がないことはわかってたけど、千冬に直接声を届けたくてドア越しに言う。
すると思いがけず、千冬の声が聞こえた。
千冬「・・・・・『堕ろせ』って・・・言わな・・い・・?」
秋也「!!・・・千冬!・・言わないかどうかはわからない。でも・・・色んな道を考えたい。二人で・・・。」
そう言うとガチャンっと音がした。
鍵が開いたような音だった。
秋也「開ける・・・よ・・?」
そっとドアノブを握り、回した。
ガチャ・・・とドアを開け、中を見る。
秋也「・・・千冬っ!」
千冬「しゅ・・や・・さん・・・。」
玄関に座り込んでる千冬。
お腹を・・・両手で押さえてる。
秋也「どうした!?痛むのか!?」
千冬「痛い・・・助けて・・・。」
秋也「ちょっと待てよ!?」
俺はケータイから病院に電話をかけ、救急車を手配してもらった。
千冬を抱えて立ち上がる。
秋也「千冬、家の鍵は?」
千冬「そこ・・・・。」
玄関脇の棚にある鍵。
それを持って家を出た。
千冬を片手で抱えながら鍵を閉める。
千冬「しゅーや・・さん・・・。」
ピンポーン・・・
秋也「千冬!?いるんだろ!?」
声をかけるけどなんの返事もない。
秋也「戻って来い・・・!・・な!?」
物音すらしない千冬の家。
秋也「頼むから・・・・・。」
そのまま小一時間ほどドアの前で待ったけど、千冬は出てこなかった。
秋也「・・・タイムリミットだ。」
俺は千冬のマンションを出て仕事に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
病院に着いた俺は、千冬の主治医のところに行った。
千冬がいたっぽいことを伝えるために。
医師「・・・千冬ちゃんがいた!?」
秋也「多分ですけど。」
医師「はー・・・いたならよかったけど・・。」
胸を撫でおろす主治医。
でも問題は山積みだ。
医師「『ちゃんと』話し合うことすら無理みたいだね・・。」
秋也「・・・・すみません。」
医師「・・・堕ろす・堕ろさないのどっちにしても妊婦検診は受けないと・・・。」
秋也「そう・・ですね・・・。あの・・・・」
医師「うん?」
秋也「千冬は・・・出産することが可能なんでしょうか・・・。」
主治医は目を丸くしながら俺を見た。
医師「それは・・・千冬ちゃんの意思を尊重する・・と?」
秋也「俺だって・・・千冬との子供を諦めたくないですよ。千冬の命のほうが大事なだけで。」
医師「帝王切開なら出血してもすぐに止血できる。出た血を戻すことも。」
秋也「なら・・・!」
医師「それでもリスクは高いよ。無事に37週回るまで過ごせるかどうかの保証もできない。」
秋也「そうですよね・・・。」
やっぱり堕ろさせたほうが・・・
でも・・リスクは高いけど産むことも可能・・・
途中で流産してしまったときのことを考えたら・・・堕ろすほうが出血量は少ない気が・・・
なら帝王切開のほうが・・・・・
秋也「あぁぁぁぁぁ・・・・・・。」
医師「悩めるほど選択肢が多いのはいいけど・・・話し合う相手が無言を貫くんじゃ意味ないねー。」
秋也「・・・・・・。」
俺は頭を抱えながら医局に戻った。
秋也「どうやったら話ができるんだ・・・?」
悩みながら仕事をする。
看護師「千冬ちゃんですか?」
看護師が山のような書類をもって俺のところに来た。
秋也「多分・・・自分のマンションにいる。でも出てこないんだよ・・・。」
そう言うと、看護師はクスクス笑いながら提案してきた。
看護師「なら『手紙』を書くしかないですねー。」
秋也「手紙?」
看護師「ケータイは切ってると思うのでメールは届かない。手紙なら目についちゃうし、気が向けば読むかもしれませんよ?」
秋也「手紙か・・・。」
毎日届ければ・・・千冬はいつか読むかもしれない。
秋也「・・・書く。」
俺は便箋を取り出した。
ペンを取り、書き始める・・・・・んだけど、なんて書き始めたらいいか分からなかった。
秋也「『拝啓』・・・・?」
どう考えてもおかしい出だしだ・・。
秋也「『体・・・大丈夫か?』」
『体・・・大丈夫か?貧血、起こしてないか?
千冬と・・・話がしたい。ちゃんと話がしたいんだ。』
俺はそれだけを書いて、仕事帰りに千冬の家のポストに入れに行った。
見てくれることを祈って。
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それから2週間。
俺は千冬の家のポストに手紙を入れ続けていた。
『一方的に堕ろせって言ってごめん。』
『体調、崩してないか?』
『お腹の赤ちゃんの様子・・・気になる。妊婦検診っていうのがあるから一度、診察に来ないか?』
『診察券作ったから・・・赤ちゃんが元気かどうかの確認しに来いよ・・・。』
毎日毎日・・・読んでくれてることを願いながら入れていた。
ある日、いつもと同じ時間に千冬の家のポストに手紙を入れると、部屋からガサガサと音がした。
どうもポストを開けてるようだ。
秋也「千冬・・・?な、出てこないか?無理は言わないけど・・・診察はしたい。千冬も・・・お腹の子も・・・。」
返事がないことはわかってたけど、千冬に直接声を届けたくてドア越しに言う。
すると思いがけず、千冬の声が聞こえた。
千冬「・・・・・『堕ろせ』って・・・言わな・・い・・?」
秋也「!!・・・千冬!・・言わないかどうかはわからない。でも・・・色んな道を考えたい。二人で・・・。」
そう言うとガチャンっと音がした。
鍵が開いたような音だった。
秋也「開ける・・・よ・・?」
そっとドアノブを握り、回した。
ガチャ・・・とドアを開け、中を見る。
秋也「・・・千冬っ!」
千冬「しゅ・・や・・さん・・・。」
玄関に座り込んでる千冬。
お腹を・・・両手で押さえてる。
秋也「どうした!?痛むのか!?」
千冬「痛い・・・助けて・・・。」
秋也「ちょっと待てよ!?」
俺はケータイから病院に電話をかけ、救急車を手配してもらった。
千冬を抱えて立ち上がる。
秋也「千冬、家の鍵は?」
千冬「そこ・・・・。」
玄関脇の棚にある鍵。
それを持って家を出た。
千冬を片手で抱えながら鍵を閉める。
千冬「しゅーや・・さん・・・。」
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