お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。

すずなり。

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肺炎。

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優しい言葉をくれる秋也さん。

頭を撫でられ、瞼が重くなっていく。




千冬「ごめ・・・・ん・・・・」




何とか言葉を絞り出して私は夢の世界に旅立った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー






秋也side・・・






秋也「『ごめん』なんて言わなくていいのに。」




眠った千冬の唇に、自分の唇を重ねた。





秋也「迷惑だなんて一ミリも思ってないよ。」



千冬の頭を撫でる。




秋也「・・・咳が気になるな。風邪引いたか?」




撫でた頭が若干熱い。





秋也「明日、悪化してないといいけど。」




そう思いながら俺は医局に戻った。












ーーーーーーーーーーーーーーーーーー






千冬side・・・




翌日、目を覚ました私はリハビリを兼ねて廊下を歩いていた。





千冬「秋也さんに迷惑かけないように早く退院しないと・・・ごほっ・・・。」





そんなことを考えながら一人廊下を歩く。

毎日歩いてると自然を体力もつくもので、私はまだ歩いてない廊下に向かって歩いた。




千冬「ここって・・・もしかしてぐるっと回れるようになってる?」





そんな作りに見える廊下。

とりあえず端まで行ってみようと、私は歩き始めた。





千冬「・・・結構長いな・・・ごほっ・・・。」





咳をするたびに少し痛む胸。

手すりを持ってない手で胸を押さえながら歩く。

歩きながらいくつかの扉を見た私。

そのうちの一つが少し開いていて、中が見えてしまった。





千冬(あれは・・・秋也さん?)




ドアの隙間から見えた彼の姿。

私はドアに近づいた。





千冬(---っ!!)




ドアに近づいたときに見えてしまった女の人の姿。

秋也さんと仲良さげに何かを話してるみたいだ。




千冬(白衣を着てる・・。ならお医者さん同士の話をしてるのかもしれない・・・。)




でも、看護師さんとかにあんな笑顔で話してる秋也さんは、今まで見たことがなかった。

秋也さんが笑顔で話す相手だから・・・きっと特別な人なんだろう。




千冬(み・・見なかったことに・・・しよ。)




私は廊下を歩き進め、一番奥にある角を曲がった。

床に座り込み、さっき見たことを冷静に考え直す。




千冬(誰なんだろう・・・。)





遠目にみたけど・・・きれいな女の人だった。

もしかしたら・・・秋也さんは病気持ちの私が嫌になって、新しい彼女を作ったのかもしれない。




千冬「ごほっ・・ごほっ・・・もし・・もし、そうなら・・・・ごほっ・・・!」




胸が苦しくなっていく。

この苦しさが『嫉妬』から来るものなのか『不安』から来るものなのか分からず、私は胸を押さえた。





千冬「ごほっ・・!ごほっ・・!背中・・・痛い・・・。」




立ち上がることが難しく、私は何分も床に座り込んだ。

その間にも酷くなっていく咳と痛み。




千冬「ごほっ!ごほっ!苦し・・・っ!」




床を見つめながら咳をしてると、私の背中を擦る人が現れた。





「大丈夫!?」

千冬「ごほっ!ごほっ!・・・ごほっ・・!」

「ちょっと冷たいけど寝ようねー。」





そう言って私の体を寝かせたこの人は、さっき秋也さんと一緒にいた人だった。





「聴診するからゆっくり呼吸して?」




聴診器をあてて私の胸の音を聞き始める。

ほどなくして看護師さんも何人かやってきた。




看護師「千冬ちゃん!?」

「?・・・知ってる子?」

看護師「笹倉先生の患者さんですっ。」

「!!・・・すぐに秋也を呼んで!」

看護師「はいっ。」





バタバタと走っていく看護師さん。




千冬(今・・・秋也さんを・・呼び捨てにした・・?)




咳が酷すぎて言葉すら出せない私。

なんだか息もしにくく、必死に酸素を求めた。




千冬「はぁっ・・はぁっ・・・ごほっごほっ!」

「熱もあるし・・・肺炎起こしてるかも。すぐにレントゲン撮って!」

看護師「はいっ。」

「秋也はまだ!?」




私の視線上に秋也さんの姿が見えた。

廊下を走ってる。





千冬「しゅ・・・・」





彼の名前を呼ぶ前に・・・私の目の前の景色が暗くなっていった。











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