お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。

すずなり。

文字の大きさ
上 下
31 / 59

おかしい。

しおりを挟む
目線を上げると見えたのは白い服の人。

看護師さんだった。




千冬「わ・・・ごめんなさい・・・!」

天沢「いえ・・・こちらこそ・・・。」




ぶつかった看護師さんに謝ってると、私の後ろから秋也さんが現れた。




秋也「どうした?」

千冬「あ、ぶつかちゃって・・・。」

秋也「ちゃんと前を見て歩けよ?・・・あと、キミもな。」

天沢「・・・すみません。」





秋也さんは私の手にある紙を取り上げた。





秋也「これ見ながら歩いてたんだろ?じゃあ没収な。」

千冬「えっ!」

秋也「あとでゆっくり説明してやるよ。ご飯でも食べながら。」




そう言った時、看護師の人が秋也さんに聞いてきた。




天沢「あの・・笹倉先生・・?」

秋也「うん?」

天沢「患者さんと・・・ご飯ですか?」





秋也さんは私の肩を抱き、看護師に告げる。




秋也「俺の婚約者。ワケあって通院してるんだよ。」

天沢「!!!」

千冬「お世話になってます。」




私は看護師さんに深く頭を下げた。

頭を下げ、顔を上げたとき看護師さんの顔に見覚えがあることに気がついた。




千冬「あれ・・・?」

天沢「--っ!!・・し・・失礼します。」




そそくさと去って行く看護師さん。




秋也「?・・・知ってるのか?」

千冬「あ・・・うん。」

秋也「へぇー・・・。」



秋也さんは私の手を引き、歩き始めた。




秋也「さっさと採血行ってきな。」

千冬「はーい。」




秋也さんに手を引かれながら、私は思い出していた。





千冬(あの看護師さん・・・私の採血の量を間違えた人だ。)



謝ってくれてた光景が頭に浮かんだ。




千冬(向こうも気づいてた・・・ような?)



ぼーっと前を見ながら考えてると、秋也さんが私の顔を覗き込んできた。




秋也「?・・・どうした?考えごと?」

千冬「・・・うーん。」

秋也「?・・・まぁ、いいけど。・・・ほら、さっさと血抜いてこい。」




採血室に放り込まれ、秋也さんは仕事に戻っていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー






看護師「あら千冬ちゃん、いらっしゃい。」

千冬「こんにちはー。」




私は空いてるベッドを探す。

一番奥に見つけ、上着を脱いだ。



看護師「今日も自己血分取るねー。」

千冬「うん。・・・あ、私の血液型って知ってる?」



そう聞くと、看護師さんは私に顔を近づけてきた。

小声で私に言う。



看護師「知ってるけど・・・どうして?」

千冬「いや、内科にいてる先生は知らなかったから・・・みんな知ってるもんだと思ってて。」

看護師「あぁ。千冬ちゃんのはかなり珍しいからね。採血室で勤務する看護師はみんな知ってるのよ。」

千冬「そうなんだー。」

看護師「まぁ、他言しないことを誓約書に書かされるけどね。」

千冬「あー・・・ごめん(笑)」





採血の準備ができた看護師さん。

私はベッドに寝転がった。



看護師「今日もいつも通り100mlね。」

千冬「うん。今日は頑張って起きててみる。」

看護師「あはは。寝ちゃってたら2時間くらいで起こしに来るよ。」

千冬「お願いー。」




腕に針が刺され、血が抜かれ始める。

頑張って起きてようと思ってたけど、自然と瞼が重くなっていく。



千冬「あ・・・無理・・かも・・・。」




目を完全に閉じてしまった私は、夢の世界に旅立つしかなかった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーー







秋也「・・・ゆ!・・・ふゆ!?・・・千冬っ!!」



私を呼ぶ声が聞こえる。

でも、目を開けることも・・・声を出すこともできない。




秋也「さっき取った血液戻して!早く!」

看護師「はいっ!」




血が全身を巡り、自分の体が温かくなっていくのがわかる。




秋也「千冬・・・なんでこんなことに・・・・。」




私の頭を撫でる誰かがいる。

近くで聞こえる声と、この大きな手は秋也さん以外考えられなかった。




千冬(秋也さん・・・私・・起きてるよ・・・。)




そう伝えたかったのに、私はまた夢の世界に旅立った。






ーーーーーーーーーーーーーーーー






千冬「ん・・・・・・。」





夢から覚めた私はぼーっと天井を見つめた。




秋也「!・・・千冬!目が覚めたか!?」

千冬「しゅ・・・やさん?ここ・・・・。」

秋也「内科の病室。千冬、採血したあと目が覚めなくて・・・入院させた。」

千冬「目が・・・?え?」




体起こして辺りを見回した。

病室に電気がついていて、窓の外はどう見ても暗い。





秋也「今、夜の10時。」

千冬「・・・夜!?」





病院に来ていたのは朝。

12時間近く眠ってたことになる。





秋也「最近疲れてた?」






秋也さんの言葉に、私はここ数日の仕事内容を思い返す。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様 《エブリスタとムーンにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...