お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。

すずなり。

文字の大きさ
上 下
10 / 59

秋也の職業2。

しおりを挟む
俺たちは席についた。

店員が注文を聞きに来る。




店員「ご注文は?」

秋也「俺はホット。」

千冬「ホットココアを・・・。」

店員「少々お待ちください。」




店員は去って行き、俺は彼女を見つめた。




秋也「・・・話してくれる?」




そう聞くと、彼女はゆっくりと話し始めた。




千冬「・・・私が未熟児で産まれた話は昨日しましたよね?」

秋也「あぁ、聞いた。よく風邪引いてたんだろ?」

千冬「未熟児で産まれた子は・・・何かしら病気を持ってる子もいてるんですよ。」

秋也「まぁ・・・。」




『普通』と言われてる大きさで産まれる子よりは確率は高い。

それは俺でも知ってることだ。




千冬「私は生まれつき血を作れない病気で・・・毎月病院に通ってます。」

秋也「!!・・・珍しい病気だな。聞いたことはあるけど・・。」

千冬「足りない成分を薬で補ってます。・・・今日も検査で・・・血を取ったので貧血に。」

秋也「なるほど。」




さっき倒れた原因が分かったところで店員が飲み物を持ってきた。




店員「お待たせいたしました。」

秋也「ありがとう。」

千冬「ありがとうございます。」




置かれたココアを見つめながら、彼女は話を続ける。



千冬「今まで付き合ってきた人たちに『毎日の薬』『毎月の病院』『生まれついての病気』のことをいうと、みんな別れを切り出してきました。」

秋也「・・・・・・。」

千冬「だから・・・もうお見合いもするつもりなかったのに・・。」

秋也「『お母さんに仕組まれた。』」

千冬「そうです。会っても別れるだけ。そんな時間を私に割いてもらうわけにはいかないんです。」




彼女はテーブルに置かれたココアを一口飲んだ。

そしてまたテーブルに置く。




秋也「別れなければ・・・問題ないんじゃない?」

千冬「え?」

秋也「言っただろ?俺はこの見合い続けたいって。・・・俺じゃダメか?」

千冬「!?・・私の話、聞いてました?」

秋也「聞いてた。」

千冬「私、病気持ちなんですよ?今でも風邪を引くとキツいですし。」

秋也「あのさぁ、俺、医者だって言ったよな?病気のやつなんて毎日見てるんだよ。なんとも思わない。」




そう言うと、彼女は畳みかけるように俺に言った。




千冬「私、すぐに貧血を起こしますし、ケガもできません。交通事故にあうと軽傷でも死ぬ確率が高いんです。だから私と結婚しても『重たい』だけです。」

秋也「軽傷でも死ぬって?」

千冬「・・・・・私の血液型は『Rh Nullヌル』。」




その言葉を聞いて耳を疑った。




秋也「・・・世界に40人ほどしかいない血液型。」




大量に血を流してしまうと必要になる輸血。

世界に40人ほどしかいない血液型なら・・・輸血は絶望的だ。

ケガができない理由は、血液型を聞いて一瞬でわかった。





千冬「そうです。だから・・・私のことを想ってくださるなら・・・私があなたを好きになる前にお見合いを終わらせてください。お願いします。」





そう言って彼女は深く・・・頭を下げた。




産まれ持っての病気。

世界でも珍しい血液型。

苦労してきたことは目に見えてわかる。




秋也「・・・千冬のことを想うからこそ、この見合いをやめるわけにはいかないな。」

千冬「・・・。」






初めて会った時からすでに惹かれていた。



カフェで俺を待っていた彼女。

遠目にその姿を見ていた。

窓から射し込む陽の光できらきら輝いていた髪の毛。

店内を見たり、外を見たりしてる姿はどこか幼げにも見える。

『かわいい』・・・その言葉で足りない何かを彼女に覚えた。





秋也(まぁ、実際話をしたりしてると中身もよかったんだけど。)




価値観が似てる俺と彼女。

この先、ずっと一緒にいるなら・・・彼女がいい。

そう思ったのはきっと、カフェで会釈をした彼女を見た時だ。






秋也「俺は好きだよ。俺なら千冬を守れる。」

千冬「笹倉さん・・・。」

秋也「だから俺と・・・最後の恋、しない?」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






千冬side・・・




秋也「だから俺と・・・最後の恋、しない?」




そう言って笹倉さんの手がすっ・・と伸びてきた。

私の長い髪の毛を指ですくう。




千冬「---っ!」

秋也「『俺のことを好きになる前に終わらせたい』・・・だっけ?もうとっくに俺のこと好きなんだろ?」

千冬「・・・そりゃあ、こんな素敵な人に好意を寄せてもらったら・・・誰だって・・・。」

秋也「ふーん・・・?」




病気のことを聞いても嫌な顔一つしない笹倉さん。

こんな状況は初めてで、どうしていいのかわからなくなってくる。




秋也「『結婚を前提にお付き合い』。・・・いい?」

千冬「それは・・・!ご迷惑になると思うので・・・・」




笹倉さんに好意を寄せてる自分は確かにいる。

でも、私の病気は決して軽いものじゃないし、治るものでもない。



前に進みたい私と、現状維持を希望する私が、心の中で戦いを始めた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...