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ナイトアクアミュージアム。

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千冬「終わった・・・!」




点滴が終わり、針を抜いてもらった私は上着を羽織った。



医師「まだ貧血気味だから気をつけてよ?」

千冬「大丈夫っ。また来月ねー。」




私は荷物を持ち、会計を済ませてから病院の外に出た。

鞄からケータイを取り出して、笹倉さんに電話をかける。



ピッ・・ピッ・・ピッ・・・




秋也「もしもし?八重樫さん?」

千冬「すみませんっ・・!連絡できずに・・・。」

秋也「いや、いいんだけど、今どこ?」

千冬「西九条の駅です。」

秋也「15分くらいで迎えに行けるから待ってて。」

千冬「ほんとにすみません・・。」

秋也「じゃああとで。」ピッ・・・




切ったケータイ電話を見つめてため息が出た。




千冬「はぁ・・。なにかお詫びしないと・・・。」




私はケータイを鞄にしまって、駅に向かって歩き始めた。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






駅についた私は、車が入れるロータリーで笹倉さんを待った。





千冬「あ、来た。」




昨日見た車がロータリーに入ってきた。

運転席にいるのは紛れもなく笹倉さんだ。




車は私の前で止まり、助手席の窓が開けられた。





秋也「お待たせ。乗って?」

千冬「お邪魔します・・・。」





ドアを開け車に乗り込む。





千冬「ほんとにすみませんでした・・・。」

秋也「うん?・・・あぁ、大丈夫。事故ってなかったのならそれでいいし。」





そう言って笹倉さんは車を走らせ始めた。




秋也「アクアリウムの最後のショーが18時半からなんだよ。」

千冬「そうなんですか?」

秋也「たぶん間に合うと思う。」

千冬「・・・すみません。」




申し訳なく謝る私に、笹倉さんはため息をついた。




秋也「はぁ・・。もう謝んなくていいから。用事だったんだろ?仕方ないじゃんか。」

千冬「そうなんですけど・・・。」

秋也「それとも、遅くなったのはわざと?」

千冬「そんなことは・・・!」




弁解しようと笹倉さんの顔を見た。



千冬「---っ!」




彼は私を優しい眼差しで見ていた。

まるで『わかってる』わかってると言わんばかりに。




秋也「ほら、着くぞー。」




もうだいぶ暗い駐車場に車を止めた笹倉さん。

私たちは車から降りた。




千冬「18時10分・・・。」

秋也「ちょっと急ぐか。」

千冬「はい。」




私たちは少し早く歩き始めた。

でも・・・




千冬(は・・早いっ・・・。)



笹倉さんとコンパスの違う私は小走り状態になってしまう。



千冬「はぁっ・・はぁっ・・・。」

秋也「あ、悪い。早いか?」

千冬「大っ・・丈夫っ・・・!」



追いつくように走り、私たちは入園入り口にたどり着いた。

チケットを買って中に入り、また走る。




千冬「あのっ・・・!」

秋也「うん?」

千冬「チケット代・・・っ!」





私の分も一緒に払ってくれたチケット。





秋也「あぁ、いいよ。・・・それより大丈夫?だいぶ息が上がってるけど。」





少し体が重いことは事実だ。

さっきまで貧血で寝ていたんだし・・・。




千冬「大丈夫ですっ・・・。」

秋也「・・・ならいいけど。」




私たちは急ぎ足で歩き、ショーの会場に向かった。

着いた会場は広く、後ろの方からでも十分見れるような感じだった。




秋也「前、行く?」

千冬「でももう始まっちゃってますし・・・あ、あの辺は人がいないんでどうですか?」




人はまばらにしかいなかったけど、それでも前まで歩いていくのが申し訳なく、そんなに邪魔にならないところを提案した。




秋也「いいね、行こう。」




先に歩き出した笹倉さん。

私はその後ろをついて歩き、席に座った。




秋也「お、ペンギンだ。」

千冬「かわいいーっ。」



席に座った時に舞台に出てきたペンギン。

階段を一生懸命のぼる姿がとてもかわいかった。



秋也「ペンギン、好き?」

千冬「好きですよ?イルカとかも。」

秋也「へぇー。」




ショーを夢中になって見てたとき、私の手のひらが笹倉さんの手にあたってしまった。




千冬「あ、ごめんなさい。」

秋也「冷た・・・。ちょっと温めてやるよ。」

千冬「え?・・・あ。」





そう言って私の手を握りしめた笹倉さん。

どうしていいのか分からず、彼の顔を見たけど、彼はショーを見ていた。




千冬(このままでいいのかな・・・。)




今日断るつもりのお見合いなのに、手を繋いでる。

でも・・・




千冬(温かい・・・。)




その温もりが心地よく、私はその手を彼に預けながらショーを見た。






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