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仕組まれたお見合い2
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日曜日・・・
お母さんに言われた14時よりも30分早くカフェについた私はお店の中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ、おひとりさまでしょうか?」
ふわふわな髪の毛をきゅっと一つにまとめてる店員さんが声をかけてくれた。
「待ち合わせなんです。」
「そうですか。待ち合わせとおっしゃる方はいらしてないので・・・窓側のほうどうぞ?いらっしゃったらご案内致します。」
「お願いします。・・・あ、ホットココアください。」
「かしこまりました。」
注文をすると手際よくココアを用意してくれた店員さん。
私は先にお会計をして、窓のある席に座った。
そして店内をぐるっと見回す。
「めっちゃ広いな・・このカフェ。」
見渡しながらココアを飲み、私は効率のいい掃除の順番を頭の中で考えていた。
もうこれは職業病だ。
(あそこから掃き掃除して、あっち回って・・・最後に拭き掃除がいいかなー。)
そんなことを考えてると、私の席にマグカップを持った男の人が現れた。
「『八重樫 千冬』・・・さん?」
名前をピンポイントであててくるような人、今日の待ち合わせの人しか存在しない。
私は母から聞いていた名前を聞いてみた。
「・・・そうです。笹倉さんですか?」
「はい。・・・座ってもいいかな?」
「どうぞ。」
笹倉さんが席についたときに私の視界にさっきの店員さんの姿がうつった。
店員さんは笑顔で私に会釈をしてくれ、その意味を瞬時に理解する。
(あ・・・・。)
私も店員さんが気づくように軽く頭を下げた。
すると笹倉さんが振り返り、その店員さんをじっと見た後私を見たのだ。
「?・・・知り合い?」
「いえ、さっき『待ち合わせ』って言ったんで・・・たぶん、『会えてよかった』ってことかと。」
「あぁ、なるほど。」
そう言いながらマグカップに口をつけた笹倉さん。
テーブルにマグカップを置いたとき、カップの中身が見えた。
どうも私のと同じ色をしてるようだ。
「それ・・・ココアですか?」
「え?・・・あぁ、そうだよ?男でココアは変?」
「いいえ?」
男の人でココアを飲むのは珍しいと思いながら、私も一口ココアを飲む。
すると笹倉さんは私をじっと見ながら口を開いた。
「八重樫さんは・・・いくつ?」
「26です。笹倉さんは?」
「俺は31。お見合いらしく聞いとこうか、『ご趣味は?』」
その言葉がツボにはまってしまって、私は吹きだしてしまった。
止まらない笑いに、思わずお腹を抱えてしまう。
「あははっ。」
「?・・・どうかした?」
「いえ、『ご趣味は?』って、今どきないなーと思って笑ってしまいました。」
「まぁ、そうなんだけど一応聞いてみた(笑)」
笹倉さんも笑いだし、私たちは二人でくすくすと笑い合った。
そんなとき、『こんなのは悪くない』・・・そう一瞬思ったのだ。
「趣味は・・・掃除ですかね。」
一応答えると、笹倉さんは驚いた顔をしながら私を見た。
「掃除?」
「小さいころから好きで・・・片付けとか。」
「へぇー・・・。」
「笹倉さんは?『ご趣味は?』・・・ふふ。」
思い出して思わず笑ってしまう。
「俺は・・これといって何かはないかな。」
「そうなんですか?」
オシャレに服を着こなしてる笹倉さん。
モデルかと思うほどのスタイルで・・・かなりのイケメンさんだ。
服・・・が趣味かとも思ったけどそうじゃなかったみたいだ。
「・・・どうして『お見合い』を?」
「・・・・・・。」
私の言葉に黙り込んでしまった笹倉さん。
でも、私たちは『お見合い』でこの場にいる。
こんなにかっこよかったら引く手数多だと思うのに『お見合い』をしてることが疑問だった。
「別に答えたくなければいいんですけど・・・。」
そう言うと、笹倉さんはまたココアを一口飲んだ。
「俺の仕事に惹かれて近寄ってくる女の子が多くてさ、嫌になって見合いを・・・・・かな。」
「へぇー・・そうなんですか。」
『私と似てる』。
そう思いながらカップに口をつけた。
「八重樫さんはどうして見合いを?」
「お母さんに仕組まれました。」
「仕組まれた?」
「・・・過去にも何人かとお見合いはしたことあるんですけど、私の仕事内容を言うとみんな『結婚してくれ』っていうんです。みんな『私』を見てない。だから申し訳ないんですけど、今日もお断りさせていただきます。」
私はカップに残っていたココアを全部口に入れた。
席を立とうと鞄を持つ。
「今日はお時間いただきありがとうございました。すみませんがこれで失礼します。」
そう言って立ち上がると、笹倉さんが私を呼び止めた。
「ちょっと待って。・・・仕事って?」
「・・・『家政婦』です。じゃ。」
席を立ち、私は店を出た。
(ちょっと楽しかったなー・・。)
今までの事務的なお見合いとは少し違った感じに、私は笑みがこぼれる。
二人でくすくす笑うなんてことはなかったからだ。
(もうちょっと話したいって思うけど・・・私の『病気』のことも言えないし・・・これでいいよね。)
そんなことを思いながら、私は帰路についたのだった。
お母さんに言われた14時よりも30分早くカフェについた私はお店の中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ、おひとりさまでしょうか?」
ふわふわな髪の毛をきゅっと一つにまとめてる店員さんが声をかけてくれた。
「待ち合わせなんです。」
「そうですか。待ち合わせとおっしゃる方はいらしてないので・・・窓側のほうどうぞ?いらっしゃったらご案内致します。」
「お願いします。・・・あ、ホットココアください。」
「かしこまりました。」
注文をすると手際よくココアを用意してくれた店員さん。
私は先にお会計をして、窓のある席に座った。
そして店内をぐるっと見回す。
「めっちゃ広いな・・このカフェ。」
見渡しながらココアを飲み、私は効率のいい掃除の順番を頭の中で考えていた。
もうこれは職業病だ。
(あそこから掃き掃除して、あっち回って・・・最後に拭き掃除がいいかなー。)
そんなことを考えてると、私の席にマグカップを持った男の人が現れた。
「『八重樫 千冬』・・・さん?」
名前をピンポイントであててくるような人、今日の待ち合わせの人しか存在しない。
私は母から聞いていた名前を聞いてみた。
「・・・そうです。笹倉さんですか?」
「はい。・・・座ってもいいかな?」
「どうぞ。」
笹倉さんが席についたときに私の視界にさっきの店員さんの姿がうつった。
店員さんは笑顔で私に会釈をしてくれ、その意味を瞬時に理解する。
(あ・・・・。)
私も店員さんが気づくように軽く頭を下げた。
すると笹倉さんが振り返り、その店員さんをじっと見た後私を見たのだ。
「?・・・知り合い?」
「いえ、さっき『待ち合わせ』って言ったんで・・・たぶん、『会えてよかった』ってことかと。」
「あぁ、なるほど。」
そう言いながらマグカップに口をつけた笹倉さん。
テーブルにマグカップを置いたとき、カップの中身が見えた。
どうも私のと同じ色をしてるようだ。
「それ・・・ココアですか?」
「え?・・・あぁ、そうだよ?男でココアは変?」
「いいえ?」
男の人でココアを飲むのは珍しいと思いながら、私も一口ココアを飲む。
すると笹倉さんは私をじっと見ながら口を開いた。
「八重樫さんは・・・いくつ?」
「26です。笹倉さんは?」
「俺は31。お見合いらしく聞いとこうか、『ご趣味は?』」
その言葉がツボにはまってしまって、私は吹きだしてしまった。
止まらない笑いに、思わずお腹を抱えてしまう。
「あははっ。」
「?・・・どうかした?」
「いえ、『ご趣味は?』って、今どきないなーと思って笑ってしまいました。」
「まぁ、そうなんだけど一応聞いてみた(笑)」
笹倉さんも笑いだし、私たちは二人でくすくすと笑い合った。
そんなとき、『こんなのは悪くない』・・・そう一瞬思ったのだ。
「趣味は・・・掃除ですかね。」
一応答えると、笹倉さんは驚いた顔をしながら私を見た。
「掃除?」
「小さいころから好きで・・・片付けとか。」
「へぇー・・・。」
「笹倉さんは?『ご趣味は?』・・・ふふ。」
思い出して思わず笑ってしまう。
「俺は・・これといって何かはないかな。」
「そうなんですか?」
オシャレに服を着こなしてる笹倉さん。
モデルかと思うほどのスタイルで・・・かなりのイケメンさんだ。
服・・・が趣味かとも思ったけどそうじゃなかったみたいだ。
「・・・どうして『お見合い』を?」
「・・・・・・。」
私の言葉に黙り込んでしまった笹倉さん。
でも、私たちは『お見合い』でこの場にいる。
こんなにかっこよかったら引く手数多だと思うのに『お見合い』をしてることが疑問だった。
「別に答えたくなければいいんですけど・・・。」
そう言うと、笹倉さんはまたココアを一口飲んだ。
「俺の仕事に惹かれて近寄ってくる女の子が多くてさ、嫌になって見合いを・・・・・かな。」
「へぇー・・そうなんですか。」
『私と似てる』。
そう思いながらカップに口をつけた。
「八重樫さんはどうして見合いを?」
「お母さんに仕組まれました。」
「仕組まれた?」
「・・・過去にも何人かとお見合いはしたことあるんですけど、私の仕事内容を言うとみんな『結婚してくれ』っていうんです。みんな『私』を見てない。だから申し訳ないんですけど、今日もお断りさせていただきます。」
私はカップに残っていたココアを全部口に入れた。
席を立とうと鞄を持つ。
「今日はお時間いただきありがとうございました。すみませんがこれで失礼します。」
そう言って立ち上がると、笹倉さんが私を呼び止めた。
「ちょっと待って。・・・仕事って?」
「・・・『家政婦』です。じゃ。」
席を立ち、私は店を出た。
(ちょっと楽しかったなー・・。)
今までの事務的なお見合いとは少し違った感じに、私は笑みがこぼれる。
二人でくすくす笑うなんてことはなかったからだ。
(もうちょっと話したいって思うけど・・・私の『病気』のことも言えないし・・・これでいいよね。)
そんなことを思いながら、私は帰路についたのだった。
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