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月日は流れ・・・

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美悠を初めて抱いてから何週間か経った。

季節は変わって・・・だいぶ寒い日が続いてる。

美悠は俺の家に泊まって帰ったり・・・休みの日に合わせて遠出のデートを楽しんだりしていた。

そんなある日・・・






雄飛「美悠からメールだ。」





仕事終わりに来ていた1件のメール。

差出人は美悠。

件名は・・・『ごめん』だった。




雄飛「なにが『ごめん』?」



不思議に思いながらメールを開いた。




『明日のデート、キャンセルしたい。ごめん。美悠』




雄飛「・・・なんか用事でも入ったか?」



そう思って着替えを済ませて交番を出た。

歩きながら美悠に電話をかける。




ピッ・・ピッ・・ピッ・・・





美悠「も・・しもし・・・・・。」

雄飛「美悠?メール見たけど・・・用事かと思ったけど調子が悪そうだな。」

美悠「ごめ・・・ん・・・。」

雄飛「アパート行こうか?病院行く?」

美悠「いい・・・だいじょぶ・・・。」

雄飛「大丈夫って言われても・・心配なんだけど・・熱は?」




調子が悪いときの自己判断はあまりよくない。

できれば病院に連れて行きたかった。




美悠「ない・・・・・・あ。」

雄飛「?」




美悠が『あ』って言った瞬間、ケータイの向こうからものすごい音が聞こえてきた。




ガシャンっ・・・!!ドンっ・・!





雄飛「!?・・・美悠!?」

美悠「・・・・。」

雄飛「美悠!?返事しろ!美悠っ!?」

美悠「・・・・。」





ケータイは通話中のまま。

美悠の返事だけが・・・途絶えた。




雄飛「すぐいくからな!待ってろ・・・!」




俺はケータイを耳にあてたまま、美悠のアパートに向かって走った。

何度か美悠の名前を呼ぶけど・・返事はない。




雄飛「救急車・・呼んでた方がいいのか!?」



悩みながらもついた美悠のアパート。

美悠から預かってた合鍵を財布から取り出す。





雄飛「念のためにもらっててよかった・・・!」




『何かあった時の為』。

そう言ってお互いの合鍵を託していたのだ。




俺は美悠の部屋の鍵を開け、中に入った。




雄飛「美悠!?」




靴を脱いで中に入ると、美悠がソファーとテーブルの間で倒れてるのが見えた。




雄飛「・・・美悠!」




美悠の側にはケータイが落ちてる。

俺と電話で喋ってたから・・・通話中のままだ。

顔は青白く、肌は氷のように冷たかった。




雄飛「美悠!?救急車・・・・!」



通話中のケータイを切って、119番にかける。

ケータイを操作してると・・・美悠の目が覚めた。



美悠「うぁ・・・・。」

雄飛「!!・・・美悠!?気がついた!?大丈夫か!?」

美悠「だいじょぶ・・・・。」

雄飛「救急車呼ぶからな!?」




そういうと美悠は両手を床につけてゆっくりと身体を起こした。




美悠「呼ばないで・・・貧血なだけ・・・・。」

雄飛「貧血って・・・・前もじゃなかった?」




暑い日に美悠を商店街で保護したときも貧血だった。

それどころか・・・この数か月、美悠は毎月『貧血』を理由にデートを断ってくるときがあったのだ。




美悠「4日くらいで治まるから・・・・。」

雄飛「毎月貧血?病院で見てもらった方がいいんじゃ・・・。」




そう言うと美悠は少し笑いながら言った。



美悠「生理が来ると・・・貧血になるの・・・・。」

雄飛「!!・・・そういうことか。」




男の俺にはわからないけど、女の子には生理が来る。

その症状は人それぞれで・・・重度の症状に苦しむ人もいれば、普段通りの生活を送れる人もいる。

美悠は・・・『重度』に入るようだ。




雄飛「・・・俺んち、来る?倒れた時に頭でも打ったら・・・危ないし。」

美悠「それは・・・やめとく・・・。トイレが大変・・だから・・。」

雄飛「まぁ、そうか。・・・じゃあ俺がここに来る。」

美悠「来るって・・・。」

雄飛「ここから仕事にいく。美悠は寝てな。」




床にいる美悠を抱えてソファーに寝かせる。

二人掛けのソファーだけど・・・美悠の大きさなら十分に寝れることができる。




雄飛「足を上げさせて・・・腰元を温めたらいいんだよな?」




テレビで見たことがある『女性の生理の悩み』。

腰を温めると症状が緩和されるって見た記憶が頭のどこかにあった。




雄飛「確か使い捨てのカイロがあったはず・・・。」




俺は自分の鞄を漁ってカイロを探した。

鞄の奥底で眠っていたカイロを引っ張り出してきて、美悠の腰元にあてた。




美悠「・・・・あったかい。」

雄飛「ちょっとソファーとの間に挟んどきな?なんか食べたいのある?」

美悠「・・・コーンスープ。」

雄飛「スープ?わかった。買ってくるからいい子で寝てろよ?」




俺はすぐ近くにあった美悠のベッドから布団を取って来て、美悠にかぶせた。

もらった合鍵で玄関を閉めて、近くのスーパーに繰り出す。




雄飛「コーンスープだな。他にもなんか買っといた方がいいか。」




すぐに食べれるもの、また、食べやすそうなものを考えながら俺はスーパーに向かった。









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雄飛「これくらいあれば・・・大丈夫?」




適当に色々買ってきた俺は、美悠のアパートに向かって歩いていた。

美悠が言ってたコーンスープはちゃんと買ったし、あと、パンとか、レンチンで食べれるような冷凍食品もいくつか買ってきた。




雄飛「これなら・・・まぁ、美悠の料理には劣るけど、すぐに食べれるし・・。」



買ったものが正解なのかを悩みながら俺は美悠のアパートに着いた。

合鍵を取り出して、ドアを開ける。




雄飛「美悠ー、スープ買ってきた。」




中に入ると、美悠はソファーで寝息を立てながら眠ってしまっていた。

さっき、俺と電話をしていた時もきっとここで寝ていたんだろう。

立ち上がろうとして立ち眩みにあい・・・倒れたと予測できる。




雄飛「冷蔵庫、開けるからな?」



そう言って俺はキッチンに入った。

小さい冷蔵庫を開けて、買ってきたものをしまっていく。




雄飛「・・・なんか、お茶の種類がすごいんだけど・・・。」




小さいビンみたいなのがずらっと並んでて、ビンの正面にマジックでお茶の種類が書かれていた。

『麦茶』『ほうじ茶』『ルイボスティー』『ハーブ』『ピーチ』『アップル』・・・・




雄飛「これ・・・お茶葉みたいだけど・・・飲むときに使うのかな。」




疑問に思ったことは今度美悠に聞こうと思いながら、買ってきたものを冷蔵庫と冷凍庫に放り込んだ。

ソファーで眠ってる美悠のもとに戻り、自分の手を美悠のおでこに乗せる。




雄飛「・・・うん、熱はない。」




美悠の言ってた通り、貧血なだけのようだ。




雄飛「カイロのおかげか、心なしか顔色も良くなってるように見えなくもない。」




すぅすぅと眠る美悠の目が覚めるまで・・・俺はソファーの前で座ってることにした。






ーーーーーーーーーー






美悠side・・・




美悠「・・・んぁ・・。」




ぐっすり眠れたような気がして目を覚ますと、知った背中が目に入った。

この逞しい背中は・・・三門さんだ。




美悠「・・・三門・・さん・・?」

雄飛「お?起きた?」

美悠「来てたの・・・?」




身体を起こそうとすると、三門さんは振り返って私の身体を押さえつけた。




美悠「?」

雄飛「まだ起きないほうがいい。スープ、温める?飲める?」

美悠「スープ?コーンスープ?」

雄飛「まさか・・・俺が来たこと覚えてないのか?」

美悠「?・・・いつ来たの?」





三門さんは私に、説明をしてくれた。

仕事が終わったあとに私からのメールを見て電話をくれたこと。

話してる途中で私が倒れたからあわてて来てくれたこと。

食べたいものを聞いてくれ・・・私が『コーンスープ』って答えたことを。





美悠「そうだったんだ・・・。」

雄飛「あっためようか?レンチンだけど・・・。」

美悠「うん。マグならどれもチンできるよ。」

雄飛「おっけ。」





三門さんは立ち上がってキッチンに入っていった。

ソファーから体を起こすと、キッチンがよく見える。




美悠(私の家で三門さんが料理って・・・変なの(笑))




そんなことを思いながら見つめてると、スープをチンし終わった三門さんが戻ってきた。

ソファーの前にある小さなテーブルに、ことんっと音を立ててマグを置いてくれた。




雄飛「熱いからな?気をつけろよ?」

美悠「ふふ・・・ありがと。」




ほかほかと湯気の立つマグを手に取ると、三門さんが私の隣にそっと座った。

私の両肩を支えるようにしてもってる。




美悠「・・・なに?」

雄飛「ふらつくと危ないからな。熱いの持ってるし。」

美悠「大丈夫だよ・・・。」





ふぅふぅと冷ましながら口に含む。

甘くてとろとろのスープが私の身体を温めていく。




美悠「おいしい・・・。」

雄飛「よかった。・・・もっと早くに貧血のことを教えてくれてたらよかったのに・・・。」

美悠「・・・・言えるわけないじゃん。」

雄飛「そうかもしれないけど・・・美悠が心配だし・・・。」




三門さんの表情から考えたら私の事を心配してくれてるのがよく分かった。

でも・・・



美悠(無理無理・・・もう言っちゃったけど言えないよ・・。)




恥ずかしく思いながらスープの入ったマグを手で包み込んでる時、不意に景色が歪んで見えた。

今日は生理の二日目。

貧血の症状が一番ひどい日だ。




美悠「・・・落ちる・・。」

雄飛「え?」




私はマグを持ってられなくなり、そのまま落としそうになった。

すかさず三門さんがマグを取り上げ、私の身体を支える。




雄飛「よっと・・・。」

美悠「ごめ・・・・・・」





私はそのまま意識を手離し、次に目が覚めたのは・・・夜中だった。












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