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ご飯。

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美悠「どうかな?おいしい?」




買い物が終わって帰ってきた私たち。

三門さんは朝飛くんの相手をしていて、私はキッチンでオムライスを作った。

今、朝飛くんの口にオムライスが入ったところだ。




美悠「どうかな・・?」




おいしくできた自信はあっても、子供の味覚は敏感なもの。

特に苦みに関しては・・・大人よりもはるかに敏感に感じ取ってしまう。




朝飛「・・・・おいしい!」

美悠「よかった・・・。」




一口目は味を確かめるようにして食べた朝飛くん。

二口目からはばくばくと食べ進めてくれた。




雄飛「俺、オムライスって久々に食べたけど・・・めっちゃ美味いな。」

美悠「三門さんはサラダもあるからね?ちゃんと食べてよ?」

雄飛「美悠の作ったご飯なら全部食う。」




そう言ってばくばくと食べ進めていった。




美悠「じゃあ私はこれで帰るね?また明日・・・朝9時くらいに来たらいい?」

雄飛「うん。10時に出て・・・昼は向こうの売店で何か買って食べようか。」

美悠「うん。じゃあ・・・・朝飛くん?今日は早く寝てね?じゃないと公園で眠たくなっちゃうよ?」



そう言うと朝飛くんは食べていた手を止めて私を見た。




朝飛「いっしょにねんね、しないの?」

美悠「それはさすがに・・・。また明日の朝来るからね。滑り台、すべるんでしょ?」




少ししょんぼりしていた朝飛くんだったけど、『滑り台』という単語を聞いてみるみるうちに笑顔になっていった。




朝飛「すべりだい!・・・あさひ、はやくねる!」

美悠「そうだね。じゃあまた明日ね?」

朝飛「うん!ばいばいっ。」




私は荷物を持って玄関に向かって歩き始めた。

私の後ろから三門さんがついてくる。



美悠「食器はシンクにいれててくれたら明日来た時に洗うね。」



そう言って玄関で靴を履く。




雄飛「それくらいはできるから・・・。ありがとな、ご飯、作ってくれて・・。」

美悠「ううん?外食もいいけど・・・小さい子を連れて行くのは大変でしょ?家ならまだ見やすいしね。」

雄飛「・・そうだな。」




靴を履き終わった私は、玄関のドアノブに手をかけた。




美悠「じゃあまた明日、おやすみ。」




そう言ってドアを開けようとしたとき、三門さんが両手を広げて私を呼んだ。



雄飛「美悠、抱きしめさせて?」

美悠「---っ!・・・・・うんっ。」



靴を履いたまま、玄関スペースのギリギリまで行く。

両手を広げてくれてる三門さんの胸に擦りつき、ぎゅっと抱きしめてもらった。




雄飛「あー・・・かわいい。ちっさい。」

美悠「・・・三門さんは筋肉すごいよね・・。」



触るとわかる筋肉の筋。

ごつごつしてて・・・逞しい。




雄飛「今度見る?」

美悠「見たいけど・・・・。」



『見る』ということは、三門さんの裸を見ることになる。

それはきっと恥ずかしすぎて・・・まともに見れなさそうだ。



雄飛「まぁ、朝飛もいるし、また今度。」

美悠「・・・。」



『また今度』。

その『今度』が何を意味するのか薄々だけど気づいていた。

三門さんと・・・ひとつに・・・




美悠(ーーーっ。・・・恥ずかしくて死んじゃう・・・。)





そんな妄想をしてるうちに、抱きしめてもらっていた手から解放された。

私は玄関戸を開け、外に出る。

扉が閉まるまで三門さんに手を振り続け・・・かちゃんっとドアの閉まる音が聞こえてから私は歩き始めた。

エレベーターに乗って、1階まで行き・・・家に帰る。




美悠「お弁当かー・・・朝飛くんって・・・5歳児って何食べるんだろ。・・・調べなきゃ。」




私は自分のアパートに着くまでの間、頭の中で大学の講義の内容を思い出しながら歩いた。







ーーーーーーーーーー








ーーーーーーーーーー








翌日・・・






美悠「これで大丈夫かなー・・・。」





昨日、三門さんちからの帰りにスーパーに寄り、いろいろ食材を買った。

帰ってきてからは大学の教科書を引っ張り出して、5歳児に向いてる食事を勉強し直した。

お弁当の内容を決めて、たった今、作り終わったところだ。



美悠「三門さんは『好き嫌いない』って言ってたから鶏肉の甘辛炒めと、チンジャオロース、ポテトサラダにおにぎりと・・・」




前に作ったのとは違うメニューを揃えてみた。

自分が作った手料理を好きな人が食べてくれるとか・・・料理好きにはたまらないシチュエーションだ。




美悠「売店で何か買おうって話になってたし、足りないくらいがちょうどいいよね。」



私は大きめの保冷バッグにお弁当たちを詰め、三門さんのマンションに向かって出発した。







ーーーーーーーーーー






ピンポーン・・・・





三門さんのマンションに着いた私は、インターホンを押した。

しばらくドアの前で待ってると、がちゃっと鍵の開く音が聞こえた。




朝飛「おはよ!おねぇちゃんっ!」




ドアを開けてひょこっと顔を出してくれた朝飛くん。

私はそのドアを手で支え、朝飛くんに挨拶をする。



美悠「おはよう。朝飛くん。」

朝飛「へへー。」

美悠「三門さんは?」

朝飛「あらいものしてるーっ。」

美悠「そっか。・・・入っていい?」

朝飛「どうぞっ。」




一応、朝飛くんの許可を取り、玄関の中に入った。



美悠「お邪魔しまーすっ。」



洗い物をしてるであろう三門さんに、聞こえるようにして叫んだ。

そのまま靴を脱いで中に入り、廊下を歩いて行く。



雄飛「おはよ、美悠。」

美悠「おはよっ。いい天気でよかったねー。」

雄飛「だな。・・・・って、なんか荷物多い?」




お皿をかちゃかちゃと洗いながら三門さんは私の荷物に気がついたようだ。

大きめの保冷トートをくぃっと持ち上げるようにして三門さんに見せる。



美悠「ちょっとだけど・・・お弁当作ってきた。」

雄飛「作ってきてくれたのか・・・!」

美悠「あとレジャーシート・・・ちっちゃいやつだけどね。」

雄飛「レジャーシート・・・!思いつかなかった・・・。」




公園ならきっとベンチくらいはある。

でもその数は豊富じゃあない。

地面に座ることを想定して・・・一応持って来たのだ。





美悠「洗い物終わったら行く?」

雄飛「あぁ。もう終わるからちょっと待ってて?」

美悠「うんっ。」




私はリビングに行き、朝飛くんと一緒にソファーに座った。

公園では一人でどこかに行かないことを約束しながら・・・ふと朝飛くんの『兄妹』のことが気になった。




美悠「ねぇ、三門さん?」

雄飛「うん?」

美悠「朝飛くんとこの赤ちゃんって・・・産まれたの?」




昨日、私が帰るまでには連絡はなかった。

だからあのときはまだ産まれてなかった・・・と思う。




雄飛「産まれたよ。ついさっき。」

美悠「・・・さっき!?」

雄飛「美悠が来る・・・10分前かな。電話で教えてくれた。」

美悠「長かったんだねー・・・。」

雄飛「産まれたのは深夜だったみたいだけど、朝飛が寝てたらいけなから連絡してこなかったんだってさ。もし起こしてしまって『帰る!』とか言われたら・・・・大変だし?」




朝飛くんにとってはきっとパパやママのところの方が安心するだろう。

でも・・・新しい命が生まれてくるときは大変だ。

いろいろすることもあるし、病院によっては小さい子の入室ができないとこもある。


だから朝飛くんの相手は難しい。




美悠「そっかー・・・でも・・・おめでとうございます?」

雄飛「俺に言われてもな(笑)今日、迎えに来るって言ってたからその時言ってやって?」

美悠「!・・・うんっ。」




そんな話をしてるうちに三門さんの洗い物は終わり、支度を始めた。

動きやすい格好に、お茶がたくさん入った荷物を用意してる。




雄飛「これくらいでいけるか?・・・まぁ、足りないものは買えばいいか。美悠?」

美悠「なぁに?」

雄飛「その荷物、持つから貸して?」




三門さんは大きな荷物を二つも用意してる。

朝飛くんの着替えに、飲み物。タオルとか・・・いろいろ用意していた。





美悠「私、持つよ?」

雄飛「それくらい持てるから。・・・代わりに朝飛の手、持ってくれる?」

美悠「!・・・・へへっ、わかったっ。」





私は朝飛くんに手を差し出した。




美悠「そろそろ行こうか。おねぇちゃんと手、繋いでくれる?」

朝飛「うんっ!」



朝飛くんは私と手を繋ぎ、玄関に向かった。

そこで小さな靴を履いて・・・外に出る。



美悠「三門さんが鍵閉めるまで待ってようねー。」

朝飛「うんっ。」




三門さんは荷物を持って玄関から出てきた。

その荷物を一旦地面に置いて、がちゃがちゃと鍵を閉める。



雄飛「よし。行こう。」




鍵がかかったのを確認して、エレベーターに乗り込む。

1階に到着したのち、私たちは駐車場にとめてある三門さんの車に向かった。




雄飛「朝飛、ちょっと待ってろよ?」

朝飛「?」



三門さんは車のトランクを開けた。

持っていた荷物を入れて、代わりに

がさごそと何かを探し始めてる。



雄飛「えーと・・・あ、あったあった。」



そう言って取り出したのは『幼児用』の車のシートだ。



雄飛「これつけるから乗ってくれよ?」

朝飛「あさひの!?」

雄飛「覚えがないか?昔、使ってたやつだ。」

朝飛「?」




三門さんはジュニアシートを後部座席につけていく。

つけながら・・・そのシートのことを話し始めた。




雄飛「これさ、朝飛がもっと小さいころに兄貴夫婦が買ったやつらしいんだけど、まだ使えない時期だったらしくて・・・朝飛が大きくなったときに、買ったことを忘れてもう一つ買ったんだって(笑)」

美悠「・・・え!?」

雄飛「数回は一応使ったみたいだけど・・・二つもいらないだろ?つけにくいこっちは俺がもらって、つけやすかったやつをメインで使ってるんだってさ。」

美悠「へぇー・・・。」

雄飛「たまに俺が預かることもあったから・・・重宝してる(笑)」




三門さんは話しながら手際よくつけていき、あっという間に設置が完了した。



雄飛「これでよしっと。朝飛、乗って?ベルトつけるから。」

朝飛「はーい。」




朝飛くんは三門さんに言われた通り、ジュニアシートに座った。

子供用に作られてるから・・・朝飛くんにピッタリだった。




美悠「じゃあ私は向こうからだねー。」



私は車の後ろを回り、後部座席のドアを開けた。








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