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どうして・・・。

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雄飛「俺、美悠が好きだ。・・・付き合って欲しい。」

美悠「!!」




俺の言葉に、美悠はまた目から涙を溢れさせ始めた。



雄飛「なんで泣くんだ?」

美悠「ふぇ・・・無理・・・無理なのー・・・。」

雄飛「!?・・・なんで・・・・・」

美悠「わた・・私も好きだけど・・・無理なのー・・・うー・・。」

雄飛「好きなのに無理って・・・それどういう・・・・」




美悠に理由を聞こうとしたとき、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。



山下「三門ーっ!」

美悠「!!」

雄飛「美悠、耳・・・塞いどきな。」

美悠「?」





俺は美悠の手を美悠の耳にあてさせた。

その上から俺の手で覆って、聞こえないようにする。




山下「美悠ちゃんいたかー?」

雄飛「いたよ。とりあえずお前には美悠に謝ってもらわないとな。」

山下「・・・。」

雄飛「あと・・・もう美悠に関わるな。お前とはどうも相性が悪いみたいだ。」

山下「・・・それは無理な相談かな。俺は美悠ちゃん好きだし。」

雄飛「美悠は俺が好きなんだよ。さっき俺のことが好きだって言った。」

山下「!!・・・マジかよ・・じゃあかりんちゃんとの仲を取り持ってもらう。」

雄飛「そんな軽い考えじゃ足元掬われるぞ・・・。」

山下「かりんちゃんも軽そうだし・・案外大丈夫かもよ?」

雄飛「!!・・だからその言い方を止めろ!美悠の大事な友達を悪く言うな!」

山下「はいはい。・・・とりあえず謝るからその手・・・外してくれよ。」

雄飛「・・・・。」




俺は山下の言葉を信じて・・・美悠の耳を塞いでた手を外した。

それを合図と取ったのか、美悠も自分の手を耳から外す。



美悠「?・・・終わった?」

山下「あー・・美悠ちゃん、ごめんね?」

美悠「・・・別に。」

山下「でさ、かりんちゃんとの仲・・・取り持ってくれないかな?」

雄飛「!?・・・おい!」




山下の言葉に、美悠がまたキレると思った俺は山下の口を塞ごうとした。

でも・・・その前に美悠が言った。




美悠「かりん・・・好きな人いるよ。」

雄飛「・・え?」

山下「は!?彼氏いないって言ってただろ?」

美悠「付き合ってはいないから・・・でも好きな人いる。」

山下「大学の同級生とか?」

美悠「うーん・・・友達だから・・・言えない。」




美悠のハッキリとした物言いに、山下は後ろ手に頭を掻いた。




山下「・・・はいはい。わかったよ。」



そう言って踵を返した。



山下「俺、あの道場通うから。・・・またな。」

雄飛「・・・あぁ。」




本気で諦めたのかどうかはわからなかったけど、山下はそれ以上ぐぃぐぃとは来なかった。




雄飛「・・・送ってく。」



そう言って俺たちはカフェに止めてた車に向かって歩き始めた。




雄飛「美悠、手。」




そう言って手を差し出すと美悠はおずおずと手を出してきた。

その手を取って・・・歩く。




雄飛「俺とは付き合えない?」



さっきの話の続きだ。

美悠は『無理』しか言わなかった。




美悠「付き合えないわけじゃないけど・・・」

雄飛「なら付き合ってくれる?」




そう聞くと、美悠は驚くような言葉を返してきた。




美悠「・・・・私の結婚相手が決まるまででもいいなら。」

雄飛「・・・・はい?」

美悠「嫌でしょ?別れるのが前提とか・・・。私も三門さんのことが好きだけど・・・別れなきゃいけないのがわかってて付き合うのは辛い・・・。」

雄飛「ちょ・・・何を言ってるのかわからない。・・・どういうこと?」




本気で意味がわからない俺は、歩いてた足を止めて美悠を見た。

美悠は何か悩んだような顔をしながら前を見てる。




美悠「絶対に誰にも聞かれない場所に行きたい。」




悩んでた顔から・・・真剣な顔にして俺を見た美悠。

まだ子供から抜け出したところの年齢だけど・・・この真剣さは無視できない。



雄飛「・・車の中なら大丈夫だ。」

美悠「わかった。」




俺たちは止めていた足を再び動かし始めた。

駐車場の車に乗るまでは・・・無言。

俺は助手席のドアを開けて美悠を乗せ・・・俺も運転席に乗り込んだ。

暑いから・・・エンジンをかけてエアコンをつける。





美悠「盗聴とかはないよね?」

雄飛「ない。そもそも仕掛けられる理由すらない。」

美悠「わかった。」



美悠の口からどんな話が出て来るのか・・・俺はどきどきしながら待った。

美悠は少し悩みながらも、決心したような顔つきになり、俺を見た。




美悠「・・・私、苗字は『南森』じゃないの。」

雄飛「え?」

美悠「ほんとは・・・『宝条 美悠』。」

雄飛「!・・・宝条!?」




知ってる苗字だ。

確か・・・世界を相手取りながらリゾート地の開発、経営をしてるのが『宝条家』。

その苗字と同じということは・・・



雄飛「宝条家の一人娘・・・!?」

美悠「そう。」

雄飛「確か小さいころに誘拐されかけたとか・・・・・ニュースがあった・・・」

美悠「身代金の要求とかあったから・・・小学校行くときに両親とは離れて暮らすことになったの。だから大きくなった私の姿を知ってる人はいないから・・・事件に巻き込まれることもなくなったんだけど・・。」

雄飛「!・・・それで護身用に格闘技習ってたのか・・。」

美悠「うん。・・・大学を卒業したらきっとお見合いが始まる。最初の相手はもうわかってるんだけど・・・三門さんと付き合ったら・・・好きだから・・・別れる時がきっと悲しい・・・。」





そう言って美悠は俯いて自分の膝の辺りを見つめた。

俺はその話を聞きながらも一つ疑問に思ったことがあった。

それは美悠と初めて会った時・・・美悠に彼氏がいたことだ。





雄飛「でも前に付き合ってたやついただろ?ショッピングモールで美悠が殴ろうとしたやつ・・・あいつは?」

美悠「お見合いする前に誰かと付き合ってたら諦めてくれるかなーなんて思って付き合ったの。言ったでしょ?そんな長く付き合ってもなかったし、そもそも好きかどうかも分からなかったって。」







そんなことを前に聞いた記憶が蘇ってくる。

美悠は・・・家のことを考えながらも自分の気持ちに揺れて・・・板挟み状態にあったみたいだ。

幼い時は自分のしたいことをしたいだけできたかもしれないけど、大きくなると・・・『家』のことが分かり始める。

俺は経営者の親をもたないから分からないけど・・・

美悠は・・・色々悩んだようだった。






美悠「ただ・・・私と付き合ってるのに『浮気』って行動が許せなくて・・・裏切りだと思ったから・・・。」

雄飛「まぁ、そうだな。」

美悠「両親に言う前に別れたから・・・お見合いを諦めてくれるかどうかもわかんないし・・・もし『ダメだ』なんて言われて三門さんと別れることになったら・・・辛いもん・・・。」

雄飛「美悠・・・・・。」





俺だって嫌だ。

せっかく手に入れかけてる美悠を手離すのも嫌だし、手に入れてから手離すのも嫌だ。

だったら・・・




雄飛「・・・じゃあ許可をもらえばいい。」

美悠「え!?」

雄飛「今、ご両親は家?」

美悠「シンガポール・・・だけど・・・。」

雄飛「いつ戻ってくる?」

美悠「年末には・・・帰ってくると思うけど・・・。」




俺は車のギアをドライブに入れた。

アクセルを踏んで、車を走らせ始める。

美悠は慌ててシートベルトを締めた。




雄飛「俺、美悠のこと諦めないから。」

美悠「え?」

雄飛「ご両親から許可取るから・・・俺と一生一緒にいて欲しい。」

美悠「それって・・・・。」

雄飛「付き合ってもいないんだけどな(笑)俺は美悠とずっと一緒にいたいよ?」




運転しながら美悠の返事を待つ。

でも・・・いつまで経っても美悠は返事をくれない。

不安になった俺はよそ見にはなるけど・・・ちらっと美悠を見た。




雄飛「!!・・・その顔は美悠も同じなんだな(笑)」

美悠「~~~~っ!」




泣きそうな顔をしながらも嬉しそうだ。

照らされる太陽に・・・涙がきらきらと光ってる。

その姿があまりにもキレイで・・・俺は思わず美悠の手を取った。




雄飛「・・・好きだよ。」

美悠「・・・・わ・・私も・・・好き・・。」




照れてる美悠も新鮮で・・・かわいい。



雄飛(宝条家か・・・。連絡を取ることはできそうだな。)




運転をしながらも、俺はこれからを考えた。

有名な宝条家に連絡を取る方法はすぐに見つかるだろう。

ただ問題は・・・『取り次いでもらえるか』だ。




雄飛「美悠、なんか美悠とご両親しか知らないような話、持ってない?」

美悠「話?」

雄飛「階段から落ちたことがあるとか・・・昔好きだったものとか?」

美悠「うーん・・。」




美悠はこぼれ落ちそうな涙を手で拭いながらも考えてくれた。

しばらく悩んだのち・・・思い出したようだ。




美悠「あ、幼稚園の時に・・・隣が小学校だったんだけどね?そこの体育に紛れ込んで跳び箱飛んでた。六段だったかなー・・・先生にめっちゃ怒られたんだけど、両親はめっちゃ笑ってた。」

雄飛「・・・・・そのころからお転婆だったのか。」

美悠「!!・・・その頃は恥ずかしいなんてこと思いもしないもんっ。」

雄飛「まぁ、その話から考えたら・・・ご両親は厳しい感じじゃなさそうだな。」

美悠「他所がどうかはわからないけど・・・ね。」





美悠から色々と両親の話を聞き出しながら車を走らせ、美悠を家まで送って行く。

1時間くらい車を走らせてついた美悠のアパート。

その前に車を停めると、美悠は俺に謝ってきた。




美悠「・・・ケガさせて・・ごめんなさい。」




しゅん・・・とした様子の美悠。

まるで怒られた子犬みたいだ。




雄飛(遊びまわってる時も子犬に見えるけど・・・。)




そんなことを思いながらも美悠の頭を撫でる。




雄飛「大丈夫だから気にするな。いくら怒っててももうちょっと聞く耳持ってくれよ?」

美悠「う・・・・・はい。」




素直に返事する美悠。

あーだこーだ反論してこないことが・・・素直でかわいい。




雄飛「今度デートしような。」

美悠「!!・・・・うんっ。」




しゅんとした顔から一気に笑顔に変わる。



雄飛「---っ!・・・あー・・もうっ・・!」



美悠の腕を掴んでぐいっと引き寄せた。




美悠「わっ・・!?」

雄飛「そんな可愛い顔みせるなよ・・・俺を煽るな・・・。」

美悠「?」





ぎゅっと抱きしめてから美悠を離し、家に帰させる。

美悠はシートベルトを外して車のドアを開け・・・下りて行った。




美悠「送ってくれて・・・ありがと。」

雄飛「明日から勉強がんばれよ?また連絡する。」

美悠「うんっ。」





俺は車を出した。

いつまでも手を振る美悠がミラー越しに見える。




雄飛「さっさと部屋に入ればいいのに・・・。」



そんなことを言いながらも顔はニヤつく。




雄飛「・・・先手を打つか。」




俺は美悠のご両親に連絡を取るため、この日から忙しくなる。











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