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貧血2。

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美悠side・・・





美悠「・・・・ん・・。」




いつの間にか眠ってしまっていたらしい私は目を開けた。

見たことのない天井に加えて、私の家じゃない匂いがする。



美悠「あれ・・・ここどこ?」



身体を起こさずに、首だけを左右に振って辺りを見回す。

どう見ても『和室』だ。



美悠「・・・ほんとにどこ?」



キョロキョロと見回しながらここがどこか考えてる時、私の知ってる声が聞こえてきた。



雄飛「お?起きた?」



声のする方を向くと、三門さんの姿がある。

警察官さんの・・・格好で。



美悠「・・・え?」

雄飛「ここは交番。商店街で座り込んでたから保護したんだよ。貧血だって?」

美悠「う・・うん。」

雄飛「起きれそう?・・・あ、ゆっくりな?」




私は言われた通りにゆっくり体を起こした。

三門さんは私の身体がふらつかないように支えてくれ・・・私は立ち上がった。




雄飛「帰るか?送ってくけど・・・」

美悠「やっ・・一人で大丈夫だから・・。」

雄飛「俺、あと30分で上がるからそれまでここにいろ。帰るときに送ってく。それともご両親に連絡する?」

美悠「両親は・・・連絡しても仕事で来れないから・・・このまま帰る。」




そう言って私は和室から出ようとした。

その時・・・




雄飛「路上で倒れたら救急車に乗ることになるぞ。大人しく送られろ。」

美悠「!!」




いつも穏やかな三門さんが・・・怒った顔をした。

そんな顔は初めて見て・・・



美悠「・・・はい。」




と、咄嗟に答えた。



雄飛「横になっとくか?」

美悠「いや・・座っとく・・・。」

雄飛「辛くなったら寝とけよ?」

美悠「・・・うん。」




私の頭をぽんぽんっと撫でてから・・・三門さんは交番の奥に入っていった。

その後姿を見送って・・・私は和室の上り口のところに腰を下ろした。




美悠(ここまでどうやって来たんだろ・・・。)



いくら思いだそうとしても記憶の中にはなかった。

予測では・・・たぶん、三門さんが私の身体を支えてくれて・・・引きずられるようにしてここまで来た。

それが妥当だ。



美悠(あぁぁ・・・『申し訳ありません』って言わなきゃ・・・。)




私と三門さんの身長差から考えたらきっと大変だったことが容易に想像つく。

申し訳なさに・・・私は頭を抱えた。




美悠(もー・・月1のアレさえ来なければ貧血にならないのに・・・。)




私の貧血の原因は生理だ。

それも重いほうらしくて・・・最初の5日間はほぼ家で寝てるしかできない。

いつもなら大学も休んで家でごろごろしてるけど・・・今日の2限の講義だけはどうしても出たかったのだ。




美悠(はぁ・・・。)



私はそのまま身体を横に倒した。

目を閉じて・・・今日のことを反省してると・・いつの間にかまた眠りについていってしまった。




美悠「・・・zzz。」






ーーーーーーーーーー






雄飛side・・・




定時を迎えた俺は着替えを済ませた。



雄飛「山下、お先。」

山下「おぅ、お疲れ。」



和室に向かうと、美悠が身体を横にして眠っていた。



雄飛「まだ体が辛いか?」



そう思いながら体を揺すって起こす。



雄飛「美悠?起きれるか?」



身体を揺さぶると美悠はぱちっと目を開けた。

むくっと身体を起こして・・・大きい目を擦り始める。



美悠「ふぁ・・・。」

雄飛「立てる?」

美悠「だいじょーぶ・・・。」




美悠の荷物を持とうと、鞄に手を伸ばした。

でも美悠は俺よりも先に鞄を手に取り、背中に背負った。



美悠「一人で帰れるよ?」

雄飛「送る。」

美悠「・・・・。」

雄飛「・・・・。」



俺は美悠の身体を支えるようにして肩を抱き、交番のドアを開けた。




雄飛「車通勤じゃないから・・歩きで悪いな。」

美悠「一人で帰れるのに・・・。」




ぶつぶつ言う美悠を支えながら、最短距離で美悠のマンションに行ける道を頭のなかで叩き出す。

そんなに遠くないところにある美悠のマンションは、10分も歩けば見えてきた。





雄飛「美悠、家は何階?」

美悠「え?2階。」

雄飛「エレベーターで行ける?階段?」



2階とはいえ、貧血状態の美悠に階段は登らせたくない。

エレベーターのほうがいいと思ったのに・・・美悠は俺の想像とは違う言葉を言った。



美悠「へ?エレベーターなんて無いよ?」

雄飛「え?エレベーターが無いわけないだろ?だってあのマンション、軽く10階以上はあるぞ?」



そう言って俺は見えてるマンションを指差した。




美悠「・・・・私の家、こっちのアパートなんだけど・・。」

雄飛「・・・え!?」



美悠が指差したのはマンションの手前にあるアパート。

一人暮らし向けの・・・賃貸っぽいとこだ。




美悠「あっちのマンションだと思ってたの?私、一人暮らしだし。」

雄飛「あー・・・そうなのか。悪い、俺の勘違いだった。」



そう言うと美悠はくすくすと笑い始めた。



美悠「ふふ。両親が仕事で忙しいから一人暮らししてるの。」

雄飛「でも帰ってくるだろ?実家は?」

美悠「実家は・・・・・・・・」





何かマズいことでも聞いてしまったのか、美悠はそのまま話さなくなった。

歩き進めていた足は止まることがないから・・・俺たちは無言のままアパートについてしまった。




美悠「ここで・・・もう大丈夫だから。」



アパートの階段のところで俺に言った美悠。

抱いていた肩から手を離した。




雄飛「ん。ちゃんと寝ろよ?」

美悠「はーい。・・・ありがとね、三門さん。」

雄飛「どういたしまして。」




俺の手を離れて階段を上り始める美悠。

その階段の下で・・・俺は待機していた。

もしかしたら落ちて来るかもしれないから。




雄飛(よし、ちゃんと上がったな。)



落ちて来ずに上がりきったことを確認して、美悠が見えるとこまで移動した。

階上をみると、美悠は自分の部屋らしきところで立ち止まって鞄から鍵を取り出していた。



雄飛(あそこか、部屋。)



ちゃんと部屋の中に入るまで見送り、俺も帰路につく。




雄飛「まさかの一人暮らしだったとは・・・。」




大学生から一人暮らしをする人は多いけど、美悠が一人暮らしと聞いて俺は不安にかられ始めた。

幼いように見えて・・・しっかりしてる。

活発に動き回って・・・真っ直ぐな性格。

大きな目にちっちゃい顔で・・・ちっちゃい身体で・・・

そのかわいさに思わず守りたくなる。





雄飛「まぁ、美悠は守られることなんて考えもしてないだろうけど(笑)」







この気持ちをどうしようか悩みながら・・・俺は帰路についた。















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