上 下
11 / 50

遠足の帰り。

しおりを挟む
ーーーーーーーーーー








ーーーーーーーーーー










17時・・・





時間いっぱいまで遊んだ遠足。

時間も夕方になったことから、帰路につくことになった。




雄飛「運転しましょうか?」



そう先生に聞いたけど、『疲れてないから大丈夫』とのことで、俺はまた美悠の隣に座った。

子供たちの点呼を取って、動き出したバスの中で美悠はメモ用紙を取り出した。




美悠「で、お弁当なんだけど何のおかずが好き?」



昼のことを覚えていたのか、美悠が聞いてきた。




雄飛「・・・ほんとに作ってくれるのか?」

美悠「約束だからねー。何がいい?」

雄飛「じゃあ・・・唐揚げと、卵焼き。」

美悠「・・・さっき食べたじゃん。」



さっき食べた味が忘れられなくて・・・もう一度食べたかった。




雄飛「めっちゃ美味かった。もっかい食べたい。」

美悠「うーん・・・他は?」

雄飛「他?特にないけど・・・。」




特に嫌いなものがない俺は、基本的になんでも食べる。



美悠「わかった。じゃあ今度の土曜日でいい?」

雄飛「覚えてたらでいいからな?忘れてもいいし。」

美悠「ちゃんと覚えてるよっ。私、作るの好きだから食べてもらうのも好きだし。・・・あっ、お弁当持ってくからまた道場で相手してよ?今日も遊んでもらったけど(笑)」

雄飛「・・・まだ勝つ気でいるのか?」

美悠「当たり前じゃん!」




鼻息を荒くしながら俺を見てる美悠。

なんだか目も輝いていて・・・俺はそんな美悠に負けた。




雄飛「わかったよ。俺に一撃入れれるように俺が鍛えてやるよ。」

美悠「!!・・・やってやる!」




意気込みながら、美悠はメモを鞄にしまっていった。

鞄の蓋を閉じて・・・ぎゅっと抱きしめてる。




雄飛「・・・美悠って・・歳は?いくつ?」

美悠「私?21だよ?」

雄飛「なら3回生か。」

美悠「そ。年が明けたら就職活動が待ってるー・・・。」

雄飛「お、どこが希望?」




懐かしい『就職活動』の言葉。

俺は最初から『警察官』一択だったから・・・目標に向けて走るだけだった。



美悠「病院か・・・トレーニング施設の管理栄養士で働きたいけど・・・」

雄飛「それはなんで?」

美悠「うーん・・・格闘技をしてて気がついたんだけど、トレーニングで鍛える以外にも、食事で体を変えることができるんだよね。なら体調を崩して病院に通ってる人の補助になれたらなーって思って。」

雄飛「へぇー・・・。」

美悠「あとはスポーツの世界の人の補助もいいかなって。私が格闘技してたし(笑)」





俺より7つも年下なのにしっかりしてる美悠。

勝負を挑んでくるときは幼く見えるのに・・・時々しっかりしたことも言う。

そのギャップに・・・俺はやられ始めていた。




雄飛(まー・・美悠は俺のことを対戦相手としか見てないだろうし・・・このままでいっか。)




そんなことを考えながら他愛ない話をしてると、いつの間にか美悠の頭がふらふら揺れ始めた。



雄飛「?・・・美悠?」

美悠「・・・ふぁ・・。」



大きなあくびをして目を擦ってる美悠。

どうみても眠たそうだ。



雄飛「ほら、着くまで寝ときな?」

美悠「んー・・・だい・・じょぶ・・・。」



目を閉じてかくんっと頭を落とす美悠。

俺はその頭を手で拾い・・・自分の肩にもたれかからせた。



美悠「・・・zzz。」

雄飛「・・・ちっさ。」





道場に着くまでの間・・・体が揺れないように押さえながら俺はバスに揺られることになった。






ーーーーーーーーーー







美悠side・・・





目を閉じて・・・気持ちいい夢の中を歩いてると、私の身体がゆらゆらと揺れ始めた。




雄飛「・・・悠?・・・美悠?着いたぞ?」

美悠「ふぁっ・・!?」



閉じていた目を開けると、私の身体を揺する三門さんの姿があった。



雄飛「着いたぞ。ほら、下りないと・・・。」

美悠「え・・・!?」



慌てて身体を起こして回りを見ると、もう子供たちはバスにいなかった。

みんな・・・下りたようだ。



美悠「やだっ・・!私寝てた!?」

雄飛「それはもう気持ちよさそうにな。」

美悠「!?!?」

雄飛「ほら、下りれるか?」



私の膝にあったリュックを持って、私に手を差し出した三門さん。


美悠「あ・・ありがと・・。」



私はその手を取って、バスから下りた。



雄飛「疲れた?」

美悠「あー・・ちょっとね。一日中動くのは久しぶりだし。」

雄飛「筋肉痛になるなよ?」

美悠「!!・・・そこまで落ちてないよっ。」

雄飛「冗談だよ(笑)・・・ほら、鞄。」




三門さんは私にリュックを渡してくれた。

それを受け取って、私は背中に背負った。




雄飛「じゃな、美悠。」

美悠「?・・・もう帰るの?」

雄飛「俺、これから仕事なんだよ。」

美悠「!?・・・お仕事あるのに遠足にきたの!?夜勤!?」

雄飛「そ。20時出勤。送ってやりたいけど・・・ごめんな。」

美悠「そんなのいいよ!早く帰って少しでも寝ないと・・・!」

雄飛「ははっ。さんきゅ。・・・じゃな。」




三門さんは軽く手を振って、小走りに駅に向かって駆けて行った。




美悠(夜勤があるって知ってたら勝負挑まなかったのに・・・。)



申し訳ないことをしたと反省しながら、私は先生のところに行った。



美悠「今日はありがとうございましたっ。」

師匠「こちらこそ。・・・ところでご両親は元気かな?」

美悠「元気ですよ?今は・・・シンガポールですかね。年末には帰ってくると思います。」

師匠「相変わらずお忙しそうだね(笑)」

美悠「そうですね(笑)」




・・・『宝条家』は国内じゃ有名だ。

リゾート地を経営していて・・・その世界ではほぼトップに君臨してる。

そんな宝条家の一人娘である私は幼いころは事件に巻き込まれることが多くて・・・護身用に格闘技を習い始めた。

運動も好きだったし。




師匠「ご両親は美悠のことを公開してないから・・・大きくなった頃から攫われるようなことはなくなったな。」

美悠「小さいときは両親と一緒に行動してましたからねー。小学校に入ったときから私は別の家でお手伝いさんと暮らし始めたんで・・・宝条家の一人娘って誰も気づかないですよ。」



人前で名乗るときも苗字は変えてある。

お母さんの・・・旧姓の『南森』だ。




師匠「ま、大学の勉強しっかりな。また遊びにおいで。」

美悠「はいっ。じゃあ、さよならーっ。」





私は道場を後にして、帰路についた。














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

警察官は今日も宴会ではっちゃける

饕餮
恋愛
居酒屋に勤める私に降りかかった災難。普段はとても真面目なのに、酔うと変態になる警察官に絡まれることだった。 そんな彼に告白されて――。 居酒屋の店員と捜査一課の警察官の、とある日常を切り取った恋になるかも知れない(?)お話。 ★下品な言葉が出てきます。苦手な方はご注意ください。 ★この物語はフィクションです。実在の団体及び登場人物とは一切関係ありません。

My HERO

饕餮
恋愛
脱線事故をきっかけに恋が始まる……かも知れない。 ハイパーレスキューとの恋を改稿し、纏めたものです。 ★この物語はフィクションです。実在の人物及び団体とは一切関係ありません。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。
恋愛
小学校の教師をしていた万桜(マオ)は、新任教師の希星(キララ)に頭を悩まされていた時に異世界に飛ばされる。 そこで呼ばれた聖女は『一人』だと告げられ、キララが立候補する。 巻き込まれ召喚者のレッテルを貼られたマオは金を渡されて解放されるが元の世界に帰れないことを知り、遠くの町に向かうことにした。 そこで教師まがいのことをして生活をしていくが、町に異変がーーーーー? ※お話は全て想像の世界です。現実とは関係ありません。(異世界には行ってみたいです。) ※メンタル薄氷に付き、コメントは受け付けることはできません。ご了承ください。 ※ただただすずなり。の世界を楽しんでいただけたら幸いです。 それではレッツゴー。

処理中です...