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遠足。

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そう聞くと美悠は興奮しながら答えた。



美悠「うん!今度こそ勝つ!!」

雄飛「え・・・これも勝負するのか?」

美悠「当たり前でしょ!?行くよね!?」




目を輝かせながら言う美悠があまりにも可愛く見えて、

俺は笑いを堪えながら言った。




雄飛「くくっ・・・・行くよ、行くから。」

美悠「・・・やった!」


師匠「じゃあ今日は解散っ。お疲れーっ。」

一同「ありがとうございましたっ。」




解散したあと、着替えがある子たちは更衣室に向かい、そのままの姿で帰る子たちは道場から出て行った。

俺は自分の鞄から財布を取り出して先生に遠足代を支払う。




雄飛「来週は来れないんで今、払います。」

師匠「あぁ。・・・美悠の相手してくれてありがとう。生徒たちはまだ小さいから美悠の相手なんてできないし・・・助かるよ。」

雄飛「いえ、俺も実践の練習になりますよ。なりふり構わず来るんで(笑)」



俺に一撃を入れるためだけに突っ込んでくる美悠。

俺に敵うことは一生ないだろうけど・・・楽しい。




師匠「負けず嫌いなとこがあるからなー・・・さすがにテスト前には来ないだろうから、その時は私が三門くんの相手をするよ。」

雄飛「お願いします。」




そんな話をしてると、美悠が財布を持って俺と先生の間に入ってきた。





美悠「先生っ、私も払いますーっ。」

師匠「美悠もか?来週でもいいぞ?」

美悠「来週、予定が入ったら来れないんでー。」



そう言ってお金を支払いながら、美悠は俺の財布をじーっと見てきた。



美悠「それ・・・三門さんの財布?」

雄飛「・・・そうだけど?」




俺の財布は少しだけ有名なブランドの財布だ。

結構な値段したけど・・・どうしても欲しくて買った。

もう何年も使ってる。





雄飛(女って・・・みんなブランドものしか興味がないのか?)




無邪気な顔をしながらも、美悠も女だ。

元カノと・・・大差ないのかもしれない。




美悠「それ・・・!」

雄飛「・・・。」

美悠「私も欲しかったやつだ!」

雄飛「・・・・・うん?」





俺は自分の財布を見た。

どう見ても『男物』。

女の子が欲しがるようなものじゃない・・・ハズだ。




美悠「そのブランドってメンズしかないでしょ?レディースがあったらいいのにっていつも思ってて・・・あっ!ここ!この部分が黒じゃなくて赤とかだったら私も買ったのにー・・・。」

雄飛「・・・・・え?」

美悠「あとここ!ここもこうじゃなくてもっと・・・こう?だったらメンズでも絶対買ってた!」

雄飛「え?え?美悠?」




わけがわからずに美悠を見ると、美悠の熱弁がピタッと止まった。

俯いて・・・大人しくなった。



美悠「ご・・ごめん・・・つい・・・。」




ごにょごにょと何か言ってる美悠。

さっきまで殺気立てて飛び掛かってきた美悠と同一人物に見えなくて、俺は腹を抱えて笑った。




雄飛「ははっ・・・!そんなに欲しかったのか?」

美悠「う・・・だってそのブランド・・・総合格闘技を考案した人が最初にオーダーメイドで作ったのがきっかけのブランドだし・・・この格闘技をやってたら自然と興味持つものだと思うし・・・。」

雄飛「!!・・・このブランドの由来・・・知ってたのか。」




調べないと辿り着かないようなブランドの由来。

それを知ってるってことは・・・美悠はこの競技がほんとうに好きらしい。




美悠「ごめんね?長々と喋っちゃって・・・。」

雄飛「いや?大丈夫。」

美悠「私、買い物して帰るんで・・・じゃ、先生、また来週ーっ・・・か、再来週ーっ。」

師匠「おぅ、気をつけてなー。」





美悠は荷物を持って道場から出て行った。




雄飛「じゃ、俺も出ます。」

師匠「あぁ、三門くんも気をつけてな。」

雄飛「ありがとうございました。」




美悠の後を追うようにして道場を出たけど、美悠の姿はもうなかった。



雄飛「買い物して帰るって言ってたし・・・電車じゃないのかも。」



見失ったものは見つけられない。

俺は駅に向かい、そのまま帰路についた。










ーーーーーーーーーー










ーーーーーーーーーー








それから数日が経った。

交番でいつもの仕事をしてると、この前この交番に移動してきた『山下』が声をかけてきた。




山下「なぁ、三門ー。」

雄飛「なんだ?」

山下「誰かかわいい子紹介してくんない?」

雄飛「・・・なんで?」

山下「・・・実はさ、ここに移動になる前にーーーーーー」





山下は前に勤めていた交番の話をし始めた。

ここからは・・・100キロほど離れてるところで勤務していた山下。

同期で同僚の彼女を好きになったけど・・・玉砕したらしい。




雄飛「お前、顔はいいんだからすぐに彼女くらいできるだろ。」




アイドルみたいな顔つきの山下。

俺に彼女がいたら・・・取られるんじゃないかと不安になりそうだ。




山下「あー・・・佐々木もそんなこと言ってたな。俺は俺だけを好きになってくれる子が・・・欲しい!!」

雄飛「・・・まぁ、がんばって探せ。」




そう言って書類に手を伸ばしたとき、山下がその書類を取り上げた。



パシっ・・・




雄飛「?」

山下「三門って彼女いたよな?友達紹介してくんない?」

雄飛「・・・別れたから無理だな。」

山下「えぇ!?別れた!?なんで!?」

雄飛「価値観が合わないから別れた。それだけだ。」





俺は山下から書類を取り返し、仕事を進めた。

山下も書類仕事を進めながら・・・ぼやいてる。




山下「はぁー・・・どこかにいい子いないかなー・・。」

雄飛「喋ってないで仕事しろ。終わったらパトロール行くぞ。」

山下「へいへい。」





俺たちは書類仕事を終わらせ、二人揃ってパトロールに出た。

まさかそこで美悠に会うとは思わなかったけど・・・。

















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