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『相手』。

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美悠「・・・・・え!?」

師匠「?・・・知ってるのか?美悠。」

美悠「知ってるも何も・・・この前あの人に邪魔されました。」

師匠「邪魔?」

美悠「浮気してた彼を殴るのを・・・邪魔されたんです。」





そう言うと先生は私の頭をぽんぽんっとたたいた。




師匠「こら、一般人にパンチはダメだろ?」

美悠「だってー・・・。」

師匠「一般人はダメだけど・・・あいつなら手合わせ願えるぞ?するか?」

美悠「!!・・・はい!」





私は先生と一緒にその男の人のところに向かった。

ジャージで来ていた男の人は、荷物を道場の隅っこに置いてタオルを取り出してる。




師匠「三門くん、こんにちは。」

雄飛「こんにちは。今日もよろしくお願いします・・・・って、あれ?キミ・・この前の・・・」

美悠「こんにちは。この前は邪魔してくれてありがとう。」




私は嫌味たっぷりに挨拶をした。




雄飛「どういたしまして・・・・って、なんか怒ってる?」

美悠「当たり前じゃないですか!邪魔さえされなければ殴れたのに・・・!」

雄飛「だから仕事を増やすなって言っただろ?」

美悠「そんなのあなたには関係ないし・・・!」






ぎゃーぎゃー言ってると、先生が私たちの会話に割り込んできた。




師匠「ストップストップ!・・・三門くん、この子の気が晴れないみたいだからさ、手合わせお願いできる?」

雄飛「いいですよ?」

師匠「お互い、『首から上』はナシな。肩から下のみで。」

美悠「はい!」

雄飛「はい。」





私はこの男の人と一緒に道場の真ん中に歩いて行った。

少し距離を空けて・・・向かい合って立つ。





師匠「5分な。よーい、始め。」

美悠「お願いします。」

雄飛「お願いします。」




私は身体を前後に揺らしながら、この人の間合いを計った。

背は私よりも遥かに高い。

手の長さも足の長さも違う。




美悠(飛び込んだら一撃でやられるなー・・・どうしよう。)




数秒の間に色々考えるけど・・・





美悠(この人・・・強い。)




余裕な構えからは隙が見られない。

下手に仕掛けるとこっちがやられそうだった。




雄飛「・・・来ないの?」

美悠「え?」

雄飛「俺は仕掛けない。好きなだけどうぞ?」

美悠「!!」





その言葉にカチンっときた私は間合いを詰めた。

ありったけの力を込めて上段の蹴りを繰り出す。




シュッ・・・!





雄飛「よっと・・・!」




パシッ・・・と腕で止められた私の足。




美悠「!!・・・なら、こっち!」




手当たり次第にパンチを繰り出した。




シュッ・・・!シュッシュッ・・・!シュッ・・・!




雄飛「はいはい。」





パシパシと手であしらわれ、私の攻撃はどれも当たらない。





美悠「なんで当たらないの・・・!?」




私が繰り出せる技を次から次に行きつく暇もなく出してるのに、どれもこれも軽く手であしらわれていく。




美悠「もーーーっ!!」

雄飛「ははっ。強いな、キミ。」

美悠「ぜんっぜん当たんない!!」

雄飛「そりゃそうだろ。キミにやられるようじゃ仕事になんないし。」




当たらない攻撃を繰り返してるうちに、先生が終了の声をかけた。




師匠「そこまで!!」

美悠「!!」




先生の声に、私は攻撃をやめて最初の位置に戻った。

乱れた道着を軽く直して・・・この男の人と向かい合う。






美悠「・・・ありがとうございました。」

雄飛「ありがとうございました。」




私は礼をして、踵を返した。

置いてあったタオルのところにいき、その場にしゃがみ込む。




美悠(・・・くやしい!)




汗を拭いながら、目線をその男の人に向ける。

その人は先生と向かい合って礼をしていた。



美悠(あ・・・先生とするんだ。)




始まってすぐ、ものすごいスピードで攻防が始まった。




美悠「!?」




打撃の一つ一つが重くて・・・速い。

とてもじゃないけど私が敵う相手じゃないことを思い知らされた。




美悠「すご・・・・。」




見ほけてるとあっという間に時間は経つもので、気がついたらアラームが鳴っていた。

おそらく先生が5分タイマーを仕掛けていたんだろう。





雄飛「・・・ありがとうございました。」

師匠「ありがとうございました。・・・いや、そろそろ負けそうかな(笑)」




お互いに汗だくな二人。

先生は奥にある部屋に戻って行き、あの男の人はタオルを持って私の隣に座りに来た。

どかっと座って汗を乱雑に拭いてる。




雄飛「ふー・・・・・キミさ、いつからしてんの?この格闘技。」

美悠「え?・・・あぁ、えーと・・・5歳くらいからです。」

雄飛「この道場・・初めてじゃなさそうだけど・・・?」

美悠「5年前までここに通ってて・・辞めたんですよ。今日は憂さ晴らしに遊びに来ただけで。」

雄飛「ふーん?」






まだ汗が引かない私も、タオルで首筋を拭う。





雄飛「・・・この前の彼とは別れたの?」

美悠「まぁ・・・あれから連絡はないんで・・・。『護身用』に習ってたってだけだけど・・・やっぱかわいくないですよね。格闘技してたなんて。」






フツーの女の子は格闘技なんて習わない。

ピアノや、お習字、スイミングが主流だし。






雄飛「・・・俺は気にならないけどな。」

美悠「それはあなたが格闘技をしてるからじゃないんですか?」




そう言うとその人は下ろしてた腰を上げた。




雄飛「俺は『三門 雄飛』。・・・キミは?」

美悠「・・・『南森(みなみもり) 美悠』。」

雄飛「美悠、男はあいつ一人じゃない。お前のことを全部好きになってくれるやつを探しな?」

美悠「うーん・・・まぁ・・ガンバリマス。」




そう言うと三門さんは先生の部屋に行き、もう1試合お願いしたようだった。

先生と一緒に道場の真ん中に立って試合が始まってる。




美悠「・・・速い。」




瞬発力も、返しも早い三門さん。

その姿を見ていて・・・私は思った。




美悠「・・・次は一撃いれる!」





ーーーーーーーーーー





雄飛「ありがとうございました。」

師匠「ありがとうございました。」




先生との試合が終わって、私のところに来た三門さん。

汗を拭いながら、またどかっと座った。



美悠「・・・三門さんって来週も来るんですか?」

雄飛「来週はー・・・あぁ、来る。再来週は来れないけど。・・・なんで?」

美悠「私ともう一回してください!」




そう言うと三門さんは汗を拭きながら笑い始めた。




雄飛「ははっ。」

美悠「?・・・なんで笑うんですか?」

雄飛「いや?・・・そうだな、道場にいる間はいつでもかかってきていいよ。不意打ちでもおっけー。」

美悠「!?・・・それ、私に有利すぎません?」




後ろから気配を消して飛び掛かれば、一撃くらいなら当てれそうだ。




雄飛「一応、首から上はナシな。どう?」

美悠「・・・わかりました。」




そう言って私は立ち上がり、下段の蹴りを繰り出した。



シュッ・・・!




雄飛「はいはい。」




パシっと止められ、軽く手で払われた。



美悠「~~~~っ。」

雄飛「ははっ。甘いな。」

美悠「もーーーっ!!」




その日は時間いっぱい、私は攻撃を繰り返した。

まぁ・・・言うほど時間も余ってなくて、頭を使うことはできなかったけど・・・

結局一撃も当たることなく、私の攻撃は軽くかわされていった。




ーーーーーーーーーー





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