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退院。
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ーーーーー
一華side
桐生さんが病室から出て行ったあと、私はベッドに倒れこんでいた。
思っても見ない展開に、頭が追いつかない。
「桐生さんが私を・・・?付き合うって言ってたよね・・・?」
車の中でのことを何度も思い返す。
そしたら桐生さんが私の頭を撫でながら『付き合ってくれる?』と聞いてくれたことが浮かんだ。
「まだ信じらんない・・・。」
初めて桐生さんに会ってから7年の月日が流れていた。
再会したのはついこの間。
桐生さんはその時、私のことなんて覚えてなかったけど・・・何回か会う機会があった。
そのほとんどが私の体調不良なのが情けないところだ。
「ほんとは就職決まってから告白したかった・・・。」
そう呟いたとき、今日の大学でのことを思い出した。
「あ・・・そうだ、私は幼稚園に就職できないんだ・・・。」
いつ倒れるかわからない人なんて、雇いたくと思うのが普通だ。
それが自分だっていうのはかなりショックだけど、こればっかりはどうしようもなかった。
何年も検査を繰り返してはいるけど原因は掴めてない。
だから治療法もわからないのだ。
「泣かせてもらったから・・・ちょっと冷静に考えれそう。」
泣かせてくれた桐生さんに感謝しながら私はお絵描きのノートを取りだした。
何も書いてないページを開いて、そこに箇条書きで思いつくことを書いていく。
「えっと・・・まず、『実習はクリアできなかった』と・・・。」
私は一つ一つ、分かってることをノートに書き出していった。
実習のこと、単位のこと、卒業のこと、病気のこと・・・。
たくさんのことがあったけど、今、分かる限り書き出していった。
「うーん・・・これくらいかな?」
ノートを手に持ち、私は書いた内容を眺めた。
「一番いいのは病気の原因がわかることだけど・・・これは期待できそうにないし・・どうしようか・・・。」
私はノートを見つめた。
これからのことは時間をかけて悩まないといけないことを改めて痛感しながら、私は自分と向き合うことを決めた。
ーーーーー
それから数日、退院の日が決まった私はベッドの上で絵を描いていた。
検査も全て終わり、心は晴れやかだ。
「・・・『星』描きたい。」
夜空に浮かぶ星のイメージが浮かんだ私は色鉛筆を手に持ってノートに描き始めた。
「昼間も星はあるけど、空が明るすぎて見えないんだよね。」
明るすぎて見えないけどそこに確かにある星。
もしかしたら星たちは私たちに何か話しかけてるかもしれない。
そう思って私は絵を描きながら言葉をつけ足していった。
「お魚の絵本を作った時みたいー・・・。」
教育実習のために作った絵本。
実際に読むことはできなかったけど・・・作ったこと自体は楽しかった。
「あの本・・・確か園に置きっぱなしにしてたような・・・」
私は絵本を持って帰るのを忘れてしまっていたことを思い出した。
「まぁ、いっか。」
愛着はあったものの、あの場以外での使い道はない。
ならもうゴミとして捨てられてもいいと思い、忘れることにした。
今はこの絵を仕上げたい気持ちでいっぱいだ。
「えーっと・・・家とか建物もあるよね・・・。」
ストーリーを立てながら、私は絵を描くことに夢中になっていった。
ーーーーー
ーーーーー
ベッドの上で更に数日が経ち、私は今日、退院の日を迎えた。
荷物をまとめて病室を出ようとしたとき、兄がドアを開けて入って来た。
ガラガラガラ・・・
「一華、このまま家に戻る?送ってやれないからタクシー呼ぼうか?」
「あー・・うん、帰るには帰るんだけど・・・」
「・・・ん?」
そう言った時、またドアが開いた。
入って来たのは私服姿の桐生さんだ。
「一華、準備できたか?」
そう言う桐生さんに、私は笑顔を向けた。
「できましたっ。」
「なら行こうか。・・・あ、小森、一華はちゃんと送るから。」
桐生さんが私の荷物を持ちながら兄に伝えた時、兄が驚いた顔で私と桐生さんを見てきた。
「え!?・・・え・・・えぇ!?」
一華side
桐生さんが病室から出て行ったあと、私はベッドに倒れこんでいた。
思っても見ない展開に、頭が追いつかない。
「桐生さんが私を・・・?付き合うって言ってたよね・・・?」
車の中でのことを何度も思い返す。
そしたら桐生さんが私の頭を撫でながら『付き合ってくれる?』と聞いてくれたことが浮かんだ。
「まだ信じらんない・・・。」
初めて桐生さんに会ってから7年の月日が流れていた。
再会したのはついこの間。
桐生さんはその時、私のことなんて覚えてなかったけど・・・何回か会う機会があった。
そのほとんどが私の体調不良なのが情けないところだ。
「ほんとは就職決まってから告白したかった・・・。」
そう呟いたとき、今日の大学でのことを思い出した。
「あ・・・そうだ、私は幼稚園に就職できないんだ・・・。」
いつ倒れるかわからない人なんて、雇いたくと思うのが普通だ。
それが自分だっていうのはかなりショックだけど、こればっかりはどうしようもなかった。
何年も検査を繰り返してはいるけど原因は掴めてない。
だから治療法もわからないのだ。
「泣かせてもらったから・・・ちょっと冷静に考えれそう。」
泣かせてくれた桐生さんに感謝しながら私はお絵描きのノートを取りだした。
何も書いてないページを開いて、そこに箇条書きで思いつくことを書いていく。
「えっと・・・まず、『実習はクリアできなかった』と・・・。」
私は一つ一つ、分かってることをノートに書き出していった。
実習のこと、単位のこと、卒業のこと、病気のこと・・・。
たくさんのことがあったけど、今、分かる限り書き出していった。
「うーん・・・これくらいかな?」
ノートを手に持ち、私は書いた内容を眺めた。
「一番いいのは病気の原因がわかることだけど・・・これは期待できそうにないし・・どうしようか・・・。」
私はノートを見つめた。
これからのことは時間をかけて悩まないといけないことを改めて痛感しながら、私は自分と向き合うことを決めた。
ーーーーー
それから数日、退院の日が決まった私はベッドの上で絵を描いていた。
検査も全て終わり、心は晴れやかだ。
「・・・『星』描きたい。」
夜空に浮かぶ星のイメージが浮かんだ私は色鉛筆を手に持ってノートに描き始めた。
「昼間も星はあるけど、空が明るすぎて見えないんだよね。」
明るすぎて見えないけどそこに確かにある星。
もしかしたら星たちは私たちに何か話しかけてるかもしれない。
そう思って私は絵を描きながら言葉をつけ足していった。
「お魚の絵本を作った時みたいー・・・。」
教育実習のために作った絵本。
実際に読むことはできなかったけど・・・作ったこと自体は楽しかった。
「あの本・・・確か園に置きっぱなしにしてたような・・・」
私は絵本を持って帰るのを忘れてしまっていたことを思い出した。
「まぁ、いっか。」
愛着はあったものの、あの場以外での使い道はない。
ならもうゴミとして捨てられてもいいと思い、忘れることにした。
今はこの絵を仕上げたい気持ちでいっぱいだ。
「えーっと・・・家とか建物もあるよね・・・。」
ストーリーを立てながら、私は絵を描くことに夢中になっていった。
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ベッドの上で更に数日が経ち、私は今日、退院の日を迎えた。
荷物をまとめて病室を出ようとしたとき、兄がドアを開けて入って来た。
ガラガラガラ・・・
「一華、このまま家に戻る?送ってやれないからタクシー呼ぼうか?」
「あー・・うん、帰るには帰るんだけど・・・」
「・・・ん?」
そう言った時、またドアが開いた。
入って来たのは私服姿の桐生さんだ。
「一華、準備できたか?」
そう言う桐生さんに、私は笑顔を向けた。
「できましたっ。」
「なら行こうか。・・・あ、小森、一華はちゃんと送るから。」
桐生さんが私の荷物を持ちながら兄に伝えた時、兄が驚いた顔で私と桐生さんを見てきた。
「え!?・・・え・・・えぇ!?」
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