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繋がる夢。
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「一華ー、メシー。」
1週間眠り続けた私は、目が覚めてからぼーっとする毎日を過ごしていた。
幼稚園の先生になるという夢を失った私は、これからのことが何も考えられない。
「一華?メシは食わないとダメだぞー。」
そう言って兄はベッドにあるテーブルにご飯のトレイを置いた。
横になっていた私は体を起こしてトレイに向き合う。
「・・・一口でもいいから食えよ?いいな?」
「・・・。」
「にぃちゃん、オペあるから。・・・また後で来るから食えよ?」
「・・・うん。」
仕事がある兄は、トレイを置いて病室から出ていった。
私はスプーンを手に持ち、トレイにあるお粥を掬う。
「はぁ・・・。」
気分がすぐれない私はどうしても食べる気にならず、そのスプーンをお皿に戻してまた横になった。
(いつもなら早くに退院して大学行くのに・・動けない・・・。)
諦めざるを得ない夢に心がついていかないのか、どうでも良くなってしまってる自分がいた。
幼稚園の先生になれないなら、このまま大学に戻れなくても構わないとさえ思ってしまう。
(そういえば精密検査したいってかずくん言ってたな・・・そんなのしたところで治るわけでもないのに・・・。)
今までいろいろしてきた検査は、どれも決定的な結果を出してはくれなかった。
毎度変わる数値に頭を悩ませる兄を見飽きるほど見てきたのだ。
今回もさほど変わらないだろう。
(ならもういっそのこと薬とか全部やめたら・・楽になるかな。)
思ってはいけないことだとわかりながらも、そんな考えが頭をよぎる。
(だめだ。かずくんが怒る・・・。)
そんな考えを忘れようと、私は頭を振った。
そしてまた目を閉じてゆっくり眠りについていった。
ーーーーー
兄side
朝、一華の部屋に粥を置いて3時間後、
オペが終わった俺は一華の病室にきていた。
おそらく食べてないだろう粥と、眠ってる一華を交互に見てる。
(ショックだろうなぁ・・・。)
一華は小さい頃から目標に向かって頑張る子だった。
小学生のころ、突然『あやとりをしたい!』と言い出して、一日中あやとりの本を読みながら練習していたものだ。
ブレスレットのように手首にあやとりを付け、暇さえあればあやとりをしていた記憶がある。
『月の形が変わるのはなぜ!?』と言い出した時は家のベランダから毎日月を眺めていた。
俺が持っていた、ちゃっちい望遠鏡をやると、嬉しそうに毎日見ていたものだ。
図書館で図鑑を借りてきて読みふけり、納得できるまで調べ上げていた。
(幼稚園の先生になりたいって言い出したのは…高校くらいからか。)
確か、一華の友達の姉弟を幼稚園まで一緒に迎えに行ったのがきっかけだった。
そこにいた幼稚園の先生が幸せそうに子どもたちに接していたのを見て、一華は幼稚園教諭の道を目指し始めたのだ。
(元々子供は好きだったしな。)
病院にいる子達とよく遊んでいた一華。
そう考えたら幼稚園教諭の道は合っていたのかもしれない。
(起きたら・・一華の笑顔を取り戻すか。金も時間もかかるけど。)
そう思いながら一華の頭を撫でたとき、一華が目を開けた。
「ん・・・?」
「あ、起きた?一華、メシ食ってないだろ。」
「・・・。」
一華は『嘘』はつけない。
いや、つきたくないのだろう。
だから言いたくないときは大抵黙るのだ。
「ちょっと起きれるか?いろいろ話したいんだ。最初に精密検査の日程の相談したいんだけど・・・。」
一日ですべての検査をすると、さすがに一華が疲れてしまう。
かといって、何日もに分けると大学に戻れる日が遠くなってしまうのだ。
この辺は相談しながら決めるのがベストだった。
「・・・もういいよ、検査なんてしなくて。」
一華は大きな目を半分だけ開けて言った。
「なんでだ?一華は病気、治したくないのか?」
病気を治すためには検査をしないといけない。
悪いところを探して見つけないと、治療ができないのだ。
「幼稚園の先生になれないから・・・もういい。」
「一華・・・。」
「どうせ検査しても原因わからないし。・・・もういい。」
一華は身体を起こし、俺の目をじっと見た。
悲し気に笑ってる姿が目に入る。
「・・・ありがとう、お兄ちゃん。もういいよ。」
「!!」
全てを諦めたような笑みに、俺は一華の手をぎゅっと握った。
「一華・・・俺の話をよく聞け。」
「?」
「もう一度・・・大学に入り直さないか?」
俺の言葉に、一華はきょとんとした顔を見せた。
「え・・?」
「もう一度大学に入り直して単位を取り直すんだ。大学は年齢制限がないから何歳でも入れるんだよ。」
俺は一華に『最初からやり直し』を提案した。
すでに習得した単位は持ち運びができるかもしれないことと、足りない単位はまた取ればいいことを。
同い年の友達と一緒に卒業はできなくなるけど、一華の夢は諦めなくて済む。
「も・・もう一度・・・?」
「そうだ。一華がもう一度大学に通うって言うなら俺は応援する。」
「でも・・・学費が結構かかる・・・」
大学は学費がかかるもの。
その費用は年間100万以上になる。
「親父たちはもう歳だからな。二度目の大学費用は俺が出してやるよ。」
「え!?」
「お前がもう一度笑って・・・夢に向かって突っ走るなら安いもんだからな。」
世界中でたった一人しかいない妹だ。
病気で苦労してきてる分、やりたいことはさせてやりたい。
金くらいで済むなら安いものだった。
「!!・・・いいの・・?」
「あぁ。だからメシ食え。さっさと体力戻して検査して・・・大学に行かなきゃいけないだろ?」
そう言うと一華は俺に抱きついて来た。
「ありがとうっ・・!お兄ちゃんっ・・!」
「ははっ、頑張れよ?」
「うんっ・・!」
すっかり痩せてしまった一華の背中を擦り、俺は一華と検査の日程を相談した。
一華は冷めてしまった粥を口に入れながら、無茶な日程を提案してくる。
その度に『無理』『無茶だ』となだめ、トータル一週間ほどで検査が終わるように日程を組んだ。
「ま、明日も一日粥だな。明後日から徐々に戻して行って軽い検査からするから。」
「はいっ。」
「ゲンキンなやつだな。」
「ふふっ。」
さっきと180度と違う一華に安堵しながら、俺は思い出したことがあった。
それは・・・桐生のことだ。
「あ、そういえば桐生も心配してたぞ?」
「え・・・桐生さんが!?」
「あぁ、沈み切ったお前が見てられなくて面会には来てないけど・・・もう大丈夫そうだな。」
一華の目が覚めるまでは、桐生もこの部屋に来てたけど、目が覚めてからの一華の様子を桐生に話したら『落ち着くまで控える』と言ったのだ。
主治医でもないし、身内でもないから距離が難しいんだろう。
「げ・・元気になってからがいいっ・・!」
「え?もう元気だろ?」
「そうじゃないのっ・・!こんな病院着で会うなんてやだよっ・・!」
一華は半泣きで俺の白衣を引っ張った。
弱ってる姿を桐生に見られたくないらしい。
「・・・あいつは気にしないと思うけど?」
「私が気にするのっ・・!まだ面会謝絶!!」
「えー・・・・。」
「もうっ・・・!」
年頃の妹の考えがよくわからない俺は、しばらく桐生に会わないようにすることにした。
1週間眠り続けた私は、目が覚めてからぼーっとする毎日を過ごしていた。
幼稚園の先生になるという夢を失った私は、これからのことが何も考えられない。
「一華?メシは食わないとダメだぞー。」
そう言って兄はベッドにあるテーブルにご飯のトレイを置いた。
横になっていた私は体を起こしてトレイに向き合う。
「・・・一口でもいいから食えよ?いいな?」
「・・・。」
「にぃちゃん、オペあるから。・・・また後で来るから食えよ?」
「・・・うん。」
仕事がある兄は、トレイを置いて病室から出ていった。
私はスプーンを手に持ち、トレイにあるお粥を掬う。
「はぁ・・・。」
気分がすぐれない私はどうしても食べる気にならず、そのスプーンをお皿に戻してまた横になった。
(いつもなら早くに退院して大学行くのに・・動けない・・・。)
諦めざるを得ない夢に心がついていかないのか、どうでも良くなってしまってる自分がいた。
幼稚園の先生になれないなら、このまま大学に戻れなくても構わないとさえ思ってしまう。
(そういえば精密検査したいってかずくん言ってたな・・・そんなのしたところで治るわけでもないのに・・・。)
今までいろいろしてきた検査は、どれも決定的な結果を出してはくれなかった。
毎度変わる数値に頭を悩ませる兄を見飽きるほど見てきたのだ。
今回もさほど変わらないだろう。
(ならもういっそのこと薬とか全部やめたら・・楽になるかな。)
思ってはいけないことだとわかりながらも、そんな考えが頭をよぎる。
(だめだ。かずくんが怒る・・・。)
そんな考えを忘れようと、私は頭を振った。
そしてまた目を閉じてゆっくり眠りについていった。
ーーーーー
兄side
朝、一華の部屋に粥を置いて3時間後、
オペが終わった俺は一華の病室にきていた。
おそらく食べてないだろう粥と、眠ってる一華を交互に見てる。
(ショックだろうなぁ・・・。)
一華は小さい頃から目標に向かって頑張る子だった。
小学生のころ、突然『あやとりをしたい!』と言い出して、一日中あやとりの本を読みながら練習していたものだ。
ブレスレットのように手首にあやとりを付け、暇さえあればあやとりをしていた記憶がある。
『月の形が変わるのはなぜ!?』と言い出した時は家のベランダから毎日月を眺めていた。
俺が持っていた、ちゃっちい望遠鏡をやると、嬉しそうに毎日見ていたものだ。
図書館で図鑑を借りてきて読みふけり、納得できるまで調べ上げていた。
(幼稚園の先生になりたいって言い出したのは…高校くらいからか。)
確か、一華の友達の姉弟を幼稚園まで一緒に迎えに行ったのがきっかけだった。
そこにいた幼稚園の先生が幸せそうに子どもたちに接していたのを見て、一華は幼稚園教諭の道を目指し始めたのだ。
(元々子供は好きだったしな。)
病院にいる子達とよく遊んでいた一華。
そう考えたら幼稚園教諭の道は合っていたのかもしれない。
(起きたら・・一華の笑顔を取り戻すか。金も時間もかかるけど。)
そう思いながら一華の頭を撫でたとき、一華が目を開けた。
「ん・・・?」
「あ、起きた?一華、メシ食ってないだろ。」
「・・・。」
一華は『嘘』はつけない。
いや、つきたくないのだろう。
だから言いたくないときは大抵黙るのだ。
「ちょっと起きれるか?いろいろ話したいんだ。最初に精密検査の日程の相談したいんだけど・・・。」
一日ですべての検査をすると、さすがに一華が疲れてしまう。
かといって、何日もに分けると大学に戻れる日が遠くなってしまうのだ。
この辺は相談しながら決めるのがベストだった。
「・・・もういいよ、検査なんてしなくて。」
一華は大きな目を半分だけ開けて言った。
「なんでだ?一華は病気、治したくないのか?」
病気を治すためには検査をしないといけない。
悪いところを探して見つけないと、治療ができないのだ。
「幼稚園の先生になれないから・・・もういい。」
「一華・・・。」
「どうせ検査しても原因わからないし。・・・もういい。」
一華は身体を起こし、俺の目をじっと見た。
悲し気に笑ってる姿が目に入る。
「・・・ありがとう、お兄ちゃん。もういいよ。」
「!!」
全てを諦めたような笑みに、俺は一華の手をぎゅっと握った。
「一華・・・俺の話をよく聞け。」
「?」
「もう一度・・・大学に入り直さないか?」
俺の言葉に、一華はきょとんとした顔を見せた。
「え・・?」
「もう一度大学に入り直して単位を取り直すんだ。大学は年齢制限がないから何歳でも入れるんだよ。」
俺は一華に『最初からやり直し』を提案した。
すでに習得した単位は持ち運びができるかもしれないことと、足りない単位はまた取ればいいことを。
同い年の友達と一緒に卒業はできなくなるけど、一華の夢は諦めなくて済む。
「も・・もう一度・・・?」
「そうだ。一華がもう一度大学に通うって言うなら俺は応援する。」
「でも・・・学費が結構かかる・・・」
大学は学費がかかるもの。
その費用は年間100万以上になる。
「親父たちはもう歳だからな。二度目の大学費用は俺が出してやるよ。」
「え!?」
「お前がもう一度笑って・・・夢に向かって突っ走るなら安いもんだからな。」
世界中でたった一人しかいない妹だ。
病気で苦労してきてる分、やりたいことはさせてやりたい。
金くらいで済むなら安いものだった。
「!!・・・いいの・・?」
「あぁ。だからメシ食え。さっさと体力戻して検査して・・・大学に行かなきゃいけないだろ?」
そう言うと一華は俺に抱きついて来た。
「ありがとうっ・・!お兄ちゃんっ・・!」
「ははっ、頑張れよ?」
「うんっ・・!」
すっかり痩せてしまった一華の背中を擦り、俺は一華と検査の日程を相談した。
一華は冷めてしまった粥を口に入れながら、無茶な日程を提案してくる。
その度に『無理』『無茶だ』となだめ、トータル一週間ほどで検査が終わるように日程を組んだ。
「ま、明日も一日粥だな。明後日から徐々に戻して行って軽い検査からするから。」
「はいっ。」
「ゲンキンなやつだな。」
「ふふっ。」
さっきと180度と違う一華に安堵しながら、俺は思い出したことがあった。
それは・・・桐生のことだ。
「あ、そういえば桐生も心配してたぞ?」
「え・・・桐生さんが!?」
「あぁ、沈み切ったお前が見てられなくて面会には来てないけど・・・もう大丈夫そうだな。」
一華の目が覚めるまでは、桐生もこの部屋に来てたけど、目が覚めてからの一華の様子を桐生に話したら『落ち着くまで控える』と言ったのだ。
主治医でもないし、身内でもないから距離が難しいんだろう。
「げ・・元気になってからがいいっ・・!」
「え?もう元気だろ?」
「そうじゃないのっ・・!こんな病院着で会うなんてやだよっ・・!」
一華は半泣きで俺の白衣を引っ張った。
弱ってる姿を桐生に見られたくないらしい。
「・・・あいつは気にしないと思うけど?」
「私が気にするのっ・・!まだ面会謝絶!!」
「えー・・・・。」
「もうっ・・・!」
年頃の妹の考えがよくわからない俺は、しばらく桐生に会わないようにすることにした。
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