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見てしまう。
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桐生さんの口から何度も聞いてる『小森の妹だから』という言葉。
一人の『女性』として見てもらえてないことは明らかだった。
(いつか・・私を女として見てくれる日がくるかな・・・。)
熱がまだ下がりきってない私は、その不安を抱えたまま目を閉じていった。
ーーーーー
翌週・・・。
「はーい!みんなー!今日は教育実習のお姉さんたちが来てくれてるよー!たくさん遊んでもらおうねー!」
私は幼稚園教諭の資格を取るために必須の教育実習に来ていた。
今まで何回か実習には来てるけど、今日と明日でラスト。
この二日で自作のものを使って園児たちと遊ぶのが最後の課題なのだ。
(最初に出席カードのチェックして、そのあとお庭遊び、終わったら手洗いとうがいをさせてお部屋に入れて・・・)
園の一日の流れをぶつぶつ言いながら復唱し、近くにいた園児たちと一緒に行動を始めた。
周りにいる園児にも気を配りながら全員に声をかけていく。
「お庭遊びする子は、いちか先生と一緒に行くよーっ。」
声をかけるとクラスのほとんどの子が廊下に出始めた。
「私はお部屋の子を見とくから。」
指導してくださる担任の先生に言われ、私は靴を履き替えて園庭にでた。
暑い陽射しが照り付けていて、思わず自分の腕で太陽を遮断する。
「暑い・・・熱中症も気をつけないと・・・。」
子供たちは外部からの温度干渉に弱く、すぐに体温が上昇してしまう。
少し走り回るくらいでも1度くらいは軽く上がってしまうのだ。
「こまめに水分補給と・・・あと、お庭遊びの時間を少し短くした方がいいかも。」
そんなことを考えながら、私は子供たちのところを回った。
砂場でおままごとをしてる女の子たちに入れてもらったり、滑り台を滑る子を支えたり、一輪車に乗ってる子の補助をしたりと、忙しく駆け回る。
「はぁっ・・はぁっ・・子供って元気だなぁ・・・。」
息を切らしながら動き回るけど、子供たちが楽しそうに遊んでる姿を見れば自然と笑みがこぼれる。
無邪気に遊ぶ子供たちは本当にかわいいのだ。
「ふふっ・・!鬼ごっこしたい子、こっちに集まれーっ!」
教育実習最後の二日間、後悔の無いようにしっかり勉強しようと私は子供たちと一緒に走り回った。
ーーーーー
「小森先生、明日の打ち合わせしましょうか。」
「はいっ。」
園児たちを降園させたあと、指導してくださる先生と打ち合わせを始めた。
「明日は給食があります。30分で完食できるように進めてるので時間を見ながら声掛けをしてあげてください。」
「はい。」
「午前は今日と同じような感じで園児たちは過ごします。午後からは新しいお歌を歌うので・・・その後、小森先生の『遊び』を入れましょうか。」
「!!・・・はいっ。」
「どんな遊びをするのか聞いてもいいですか?」
そう言われ、私は作って来た絵本を自分の鞄から取り出した。
「あの・・絵本を作ってきたので・・それを読み聞かせしようかと・・。」
取り出した絵本を先生に見せると、先生は驚いた顔をしながら絵本を手に取った。
「これを自分で作ったの・・?」
「はい。いろんな種類の魚たちがいろんな場所から集まってきて、同じ場所で暮らす話なんですけど・・・」
この話は私自身でちゃんとしたコンセプトがあった。
それを絵や、幼稚園児でもわかるような言葉で説明してあるのだ。
「これ・・『幼稚園』のお話?」
先生は私が作った絵本を読んでくれたようで、ページをめくりながら聞いてくれた。
「はい!そうです!いつかは卒園してしまう子供たちですけど、今、この時間を覚えてて欲しくて・・・。」
卒園する子供たちはこれから先、たくさんのことを学び、経験していく。
その膨大な情報を脳に吸収させていくことによって、過去のことが薄れていってしまうのだ。
4歳や5歳の出来事は、大人になって鮮明に残ってる人はかなり少ない。
その中でも、印象的なことがあれば・・・思い出すことがあるかもしれないのだ。
「大きくなった時にこの絵本のことを思い出して・・・それに関連づいたことも思い出してくれたらなと思って・・・みんなで楽しく遊んだこの時間を思い出してくれたらと思って・・・。」
そう話すと、先生は私に笑顔を向けてくれていた。
「いいわね、そういうの。」
「ほんとですか!?」
「私、卒園生を何人も見送って来たけど・・・大きくなった子たちはあまり園のことを覚えてないのよね。成長すると子供たちの顔つきも変わってくるし・・・この時間を大切にしたいって気持ちはよくわかるわ。」
先生は『余談だ』といいながら今まで担当した園児のことを話してくれた。
卒園した後も交流がある子もいるらしいけど、ほとんどは交流がないことを。
保護者の事情で引っ越しする子も多く、風の便りで時々卒園生のことを知るくらいだとか。
少し寂しい気もするけどその子たちが園児だった時を思い返すのも楽しいらしい。
「私はみんなのことを思い出すけど・・・みんなは思い出さないまま大人になって行くのよね。」
「そうですね・・・。」
「でもこういうことを覚えてる子も中にはいる。その時思い出して『幼稚園のとき、砂場でよく遊んだよね』とか話してくれたら・・・嬉しいな。」
そう言って先生は私の絵本をそっと撫でた。
そしてそれを私に返してくれた。
「明日の読み聞かせ、楽しみにしてるわね。」
「!!・・・はいっ!」
先生の想いに、私は『幼稚園の先生になりたい』という夢をより一層強く想い直した。
一人の『女性』として見てもらえてないことは明らかだった。
(いつか・・私を女として見てくれる日がくるかな・・・。)
熱がまだ下がりきってない私は、その不安を抱えたまま目を閉じていった。
ーーーーー
翌週・・・。
「はーい!みんなー!今日は教育実習のお姉さんたちが来てくれてるよー!たくさん遊んでもらおうねー!」
私は幼稚園教諭の資格を取るために必須の教育実習に来ていた。
今まで何回か実習には来てるけど、今日と明日でラスト。
この二日で自作のものを使って園児たちと遊ぶのが最後の課題なのだ。
(最初に出席カードのチェックして、そのあとお庭遊び、終わったら手洗いとうがいをさせてお部屋に入れて・・・)
園の一日の流れをぶつぶつ言いながら復唱し、近くにいた園児たちと一緒に行動を始めた。
周りにいる園児にも気を配りながら全員に声をかけていく。
「お庭遊びする子は、いちか先生と一緒に行くよーっ。」
声をかけるとクラスのほとんどの子が廊下に出始めた。
「私はお部屋の子を見とくから。」
指導してくださる担任の先生に言われ、私は靴を履き替えて園庭にでた。
暑い陽射しが照り付けていて、思わず自分の腕で太陽を遮断する。
「暑い・・・熱中症も気をつけないと・・・。」
子供たちは外部からの温度干渉に弱く、すぐに体温が上昇してしまう。
少し走り回るくらいでも1度くらいは軽く上がってしまうのだ。
「こまめに水分補給と・・・あと、お庭遊びの時間を少し短くした方がいいかも。」
そんなことを考えながら、私は子供たちのところを回った。
砂場でおままごとをしてる女の子たちに入れてもらったり、滑り台を滑る子を支えたり、一輪車に乗ってる子の補助をしたりと、忙しく駆け回る。
「はぁっ・・はぁっ・・子供って元気だなぁ・・・。」
息を切らしながら動き回るけど、子供たちが楽しそうに遊んでる姿を見れば自然と笑みがこぼれる。
無邪気に遊ぶ子供たちは本当にかわいいのだ。
「ふふっ・・!鬼ごっこしたい子、こっちに集まれーっ!」
教育実習最後の二日間、後悔の無いようにしっかり勉強しようと私は子供たちと一緒に走り回った。
ーーーーー
「小森先生、明日の打ち合わせしましょうか。」
「はいっ。」
園児たちを降園させたあと、指導してくださる先生と打ち合わせを始めた。
「明日は給食があります。30分で完食できるように進めてるので時間を見ながら声掛けをしてあげてください。」
「はい。」
「午前は今日と同じような感じで園児たちは過ごします。午後からは新しいお歌を歌うので・・・その後、小森先生の『遊び』を入れましょうか。」
「!!・・・はいっ。」
「どんな遊びをするのか聞いてもいいですか?」
そう言われ、私は作って来た絵本を自分の鞄から取り出した。
「あの・・絵本を作ってきたので・・それを読み聞かせしようかと・・。」
取り出した絵本を先生に見せると、先生は驚いた顔をしながら絵本を手に取った。
「これを自分で作ったの・・?」
「はい。いろんな種類の魚たちがいろんな場所から集まってきて、同じ場所で暮らす話なんですけど・・・」
この話は私自身でちゃんとしたコンセプトがあった。
それを絵や、幼稚園児でもわかるような言葉で説明してあるのだ。
「これ・・『幼稚園』のお話?」
先生は私が作った絵本を読んでくれたようで、ページをめくりながら聞いてくれた。
「はい!そうです!いつかは卒園してしまう子供たちですけど、今、この時間を覚えてて欲しくて・・・。」
卒園する子供たちはこれから先、たくさんのことを学び、経験していく。
その膨大な情報を脳に吸収させていくことによって、過去のことが薄れていってしまうのだ。
4歳や5歳の出来事は、大人になって鮮明に残ってる人はかなり少ない。
その中でも、印象的なことがあれば・・・思い出すことがあるかもしれないのだ。
「大きくなった時にこの絵本のことを思い出して・・・それに関連づいたことも思い出してくれたらなと思って・・・みんなで楽しく遊んだこの時間を思い出してくれたらと思って・・・。」
そう話すと、先生は私に笑顔を向けてくれていた。
「いいわね、そういうの。」
「ほんとですか!?」
「私、卒園生を何人も見送って来たけど・・・大きくなった子たちはあまり園のことを覚えてないのよね。成長すると子供たちの顔つきも変わってくるし・・・この時間を大切にしたいって気持ちはよくわかるわ。」
先生は『余談だ』といいながら今まで担当した園児のことを話してくれた。
卒園した後も交流がある子もいるらしいけど、ほとんどは交流がないことを。
保護者の事情で引っ越しする子も多く、風の便りで時々卒園生のことを知るくらいだとか。
少し寂しい気もするけどその子たちが園児だった時を思い返すのも楽しいらしい。
「私はみんなのことを思い出すけど・・・みんなは思い出さないまま大人になって行くのよね。」
「そうですね・・・。」
「でもこういうことを覚えてる子も中にはいる。その時思い出して『幼稚園のとき、砂場でよく遊んだよね』とか話してくれたら・・・嬉しいな。」
そう言って先生は私の絵本をそっと撫でた。
そしてそれを私に返してくれた。
「明日の読み聞かせ、楽しみにしてるわね。」
「!!・・・はいっ!」
先生の想いに、私は『幼稚園の先生になりたい』という夢をより一層強く想い直した。
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