好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。

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病室。

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ーーーーー





「おいおい・・・下がんねーぞ・・・。」


一華に解熱剤を入れて2時間が経った。

とっくに点滴は終わってるものの、思ったより熱が下がらない。

荒い息はそのままで、よくなってる気配すらしない。


「解熱剤が効かないのか?どっちにしてもこのまま帰すわけにいかないし・・・」


俺は内線電話の受話器を上げた。

外科にコールする。


ピッ・・ピッ・・ピッ・・・・


「はい、外科医局です。」

「内科の桐生です。小森はいますか?」

「小森先生は・・・まだオペですね。伝言預かりましょうか?」

「あー・・・じゃあ、『一華の熱が下がらない。空いてるベッドに移す』とお願いします。」

「わかりました。」


伝言を頼み、看護師を呼んだ。

空いてるベッドを探してもらい、そこに入れるためだ。


「先生、509号が個室で空いてます。」

「わかった。ありがとう。」


診察室で寝かせてあるベッドのロックを外し、診察室から出す。

そのまま509号室に運んでいった。


ーーーーー



「さて・・・小森のオペはまだかかりそうだし・・どうするかな。」


もう一本点滴を入れるかどうかを悩みながら一華のおでこに自分の手を乗せる。

自分の手が冷たいのか、一華のおでこが熱すぎるようなきがしてたまらない。

手をずらして一華の首元を触った時、一華の身体がもそっと動いた。

横向きになるように寝直してるみたいだ。


「んー・・・きもち・・いい・・。」

「気持ちいい?まぁ熱いしな・・・。」


俺の手がちょうどいい温度なのか、一華の荒い息が少し落ち着いた。

これくらいのことで一華の苦しさが軽減されるなら安いものだと思い、側にあった椅子を引き寄せて座った。


「んー・・・zzz。」

「・・・猫みたいだな。」


俺の手が気持ちいいのか、すりっとすり寄せながら寝てる一華。

じーっと見ながらも一華の顔立ちの良さに思わず見惚れてしまう。


「・・・どっかで見たことがあるような・・・?」


じっと見てるうちになにか頭に引っ掛かるものがあるような気がしてきた。

それは遠い昔のような、そんな遠くないような・・・。

でもその記憶を引き出すことができず時間が過ぎていく。


「ふぁ・・・まだ一華の目も覚めなさそうだし・・・俺もちょっとだけ寝よ。」


両手を一華の首に添え、そのまま突っ伏した。

姿勢は楽ではないけど仮眠くらいなら全然寝れる。

俺はそのまま眠りに落ちていった。




ーーーーー



「んー・・ぁ・・?」


首に違和感を覚えらながら目を覚ました私は、自分の状況に驚いた。

違和感のあった首には人の手がある。

その手を辿れば・・・ベッドに突っ伏してる桐生さんの姿が見えた。


「え・・・!?」


驚きのあまり、大きな声を出してしまった。

その声に気がついたのか、桐生さんは顔を上げた。


「ふぁ・・・あ、起きたのか。」


桐生さんは私の首元に置いてあった手を離しておでこにあてた。


「あぁ、少し下がったな。」

「き・・きりゅうさん・・・?」


驚きながら聞くと、桐生さんは聴診器を取り出して布団の中に手を入れ、服の下から聴診器を入れた。

耳に集中するようにして一点を見つめてる。


「・・・うん、大丈夫だろう。」


そう言って布団をかけなおしてくれた。


「あの・・・」

「もうちょっと寝ときな?解熱剤入れたけど熱下がんないから病室連れて来たんだよ。」

「あ・・そうなんですか・・。」

「今日は泊ったほうがいい。明日学校は?」

「昼から・・・」

「なら泊まりな。小森はオペが終わったら来るはずだから。」


桐生さんは自分の腕を少しまくり、腕時計を確認した。

外が見える窓を見ると、もう真っ暗だ。


(確か病院来たのが夕方だったから・・・もう日付変わってる?)


窓を見てから桐生さんを見ると、思ってたことがバレてしまったようで腕時計を見せてくれた。

その時計に表示されていた時間は『二時』。

日付が変わってしまってるのは間違いない。


「一人で寝れるか?小森はまだもう少しかかると思うけど・・・。」

「!?・・・子どもじゃないですよっ。」


少し怒るようにして言うと、桐生さんは私の頭をそっと撫でた。

大きな手で包まれる頭が気持ちよく、照れながら布団を口元まで引き寄せる。


「~~~~っ。」

「いい子で寝てろよ?」


そう言って病室から出て行ったのを、ずっと目で追いかけた。


(診察室で診てもらってから・・・ずっと側にいてくれてた・・・?)


熱で頭がやられてるのか、浮かれて仕方がない。

体調が悪いとはいえ、ずっとそばにいてくれたと思うと嬉しく思ってしまう自分がいる。

でも・・・


(私はお兄ちゃんの妹としてしか見られてないんだよね・・・。)







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