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デート・・・?2
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ーーーーー
「?・・・あぁ、場所知らないだろ?車のほうが近いと思うから・・・もう講義は終わり?」
「は・・はい。あ、でも鞄がまだゼミに・・・・」
「じゃあ車取りに行ってくる。そうだな・・・そこのバスターミナルで待っててくれる?」
「わかりましたっ。」
俺と一華は一旦別れ、一華は鞄を、俺は車を取りに戻った。
ーーーーー
一華と待ち合わせをしてるバスターミナルについた俺は、車から下りて一華が来るのを待っていた。
俺の車を知らないであろう一華が迷うといけないと思ったからだ。
じーっと大学の門を見つめてると、大きなリュックを背負った一華が門から出て来るのが見えた。
「あっ・・!桐生さんっ。」
(・・・可愛い。)
にこっと笑って大きく手を振る一華は、さっきとは別人のように見えた。
男に肩を抱かれて嫌そうにしてた一華はほんとに不機嫌そうで・・・男に肩を抱かれる前は凛としてきれいだった。
今は、無邪気に笑っててとても21歳には見えない。
(どーみても高校生だな。)
そんなことを思いながら俺は助手席のドアを開けた。
「どうぞ?」
そう言うと一華は大きなリュックを下ろして胸の前で抱えた。
「お願いしますっ。」
「お願いされます。」
助手席に座ったのを確認して、ドアを閉める。
運転席に乗り込んでエンジンをかけ、車を走り出させた。
「・・・どう?その後、体の調子は。」
そう聞くと一華は大きなリュックをぎゅっと抱きしめながら答えた。
「元気ですよー?」
「思ったんだけどさ、なんで外科に通ってんの?」
普通『血液の病気』なら血液内科だ。
もしくは内科だろうけど彼女は外科に通院していた。
「あ、お兄ちゃんが外科なんでそっちに通ってるんです。小さいころから私の身体はお兄ちゃんが知ってるんで。」
「まぁ、そうかなーとは思ってたけど。」
「『いちいち検査結果を議論するのが面倒くさい』そうで(笑)」
「わからんでもないけどな。」
小森もそうだけど、俺たち医者は基本的なことは全部学んできてる。
それぞれ進む『科』によってより深く知ってくことにはなるけど、だいたいのことはわかる。
だからいちいち・・・『なんでこの項目の検査をしなかったのか』とか『これは前も検査した』とかいうのがでてくるのが面倒だったんだろう。
「私も大学があるんで朝とか昼は病院に行けないし・・・。予約で行くのが難しいんです。血液検査なんて朝に行かないと結果出るまでめっちゃ時間かかるし。」
「あ、それもあるのか。」
「こういう時、兄がお医者さんでよかったなーって思います(笑)」
「ははっ。確かに。」
小森の言ってた通り、自分の病気を気にしてない彼女。
生活に合わせて検査を受けてるようだから一安心だった。
俺たちはその後、車の中で他愛のない話を繰り返した。
一華は今朝、お腹が空きすぎてサンドイッチを早弁したこととかを笑いながら話す。
俺は小森の学生時代の失態を一華にチクっていた。
「えー?お兄ちゃん、そんなことしてたんですか?」
「うん。教授とかにめっちゃ怒られてた(笑)」
「あははっ。」
30分くらいの時間なんてあっという間で、喋ってる間に俺たちはアクアリウムに着いた。
車から下りて入り口に向かい、チケットを買って中に入る。
「あのっ・・!チケット代・・・!」
俺が二人分を買ったからか、一華が財布をごそごそと出しながら後ろをついてきていた。
「いいよ、小森の妹なんだし。」
「でも・・・」
「気にするな。それより・・・デカい水槽があんましなさそうなんだけど・・・どうする?」
小さめなアクアリウムだからかあまりにも大きいものはなかった。
そこそこ大きいのはあるけど、これで一華の疑問が解消されるか心配だった。
「あ、そこは大丈夫です。大きくても小さくてもあまり変わらないと思うので。」
「そう?じゃあ・・・どうぞ?」
そういうと一華はリュックからバインダーを取り出した。
足りないであろうものをすぐに見つけたのか、描いていく。
「邪魔だろ?持っててやるよ。」
俺は一華のリュックを預かった。
一華は真剣に水槽を眺めながら描いて・・・水槽に近づいてじーっと見たりしてる。
この辺は・・・兄妹だなと思った。
(小森も集中したら回りが見えないというか・・・すっごい観察するんだよな。)
同じことをする二人に少し笑いながら俺は別の水槽を眺めることにした。
小さい魚だけの水槽に、大きい魚が優雅に泳ぐ水槽。
奥にはペンギンが数羽いてそうだけど、一華がまだ真剣に描いてるから近くのソファーみたいな椅子に座ってじーっと水槽を眺めていた。
(・・・癒しってやつだなー。)
ゆらゆらと揺れる水が、時間の流れを穏やかにしていく気がする。
ぼーっとしながら水槽を眺めてるうちに俺はいつの間にか瞼を閉じてしまっていた。
「?・・・あぁ、場所知らないだろ?車のほうが近いと思うから・・・もう講義は終わり?」
「は・・はい。あ、でも鞄がまだゼミに・・・・」
「じゃあ車取りに行ってくる。そうだな・・・そこのバスターミナルで待っててくれる?」
「わかりましたっ。」
俺と一華は一旦別れ、一華は鞄を、俺は車を取りに戻った。
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一華と待ち合わせをしてるバスターミナルについた俺は、車から下りて一華が来るのを待っていた。
俺の車を知らないであろう一華が迷うといけないと思ったからだ。
じーっと大学の門を見つめてると、大きなリュックを背負った一華が門から出て来るのが見えた。
「あっ・・!桐生さんっ。」
(・・・可愛い。)
にこっと笑って大きく手を振る一華は、さっきとは別人のように見えた。
男に肩を抱かれて嫌そうにしてた一華はほんとに不機嫌そうで・・・男に肩を抱かれる前は凛としてきれいだった。
今は、無邪気に笑っててとても21歳には見えない。
(どーみても高校生だな。)
そんなことを思いながら俺は助手席のドアを開けた。
「どうぞ?」
そう言うと一華は大きなリュックを下ろして胸の前で抱えた。
「お願いしますっ。」
「お願いされます。」
助手席に座ったのを確認して、ドアを閉める。
運転席に乗り込んでエンジンをかけ、車を走り出させた。
「・・・どう?その後、体の調子は。」
そう聞くと一華は大きなリュックをぎゅっと抱きしめながら答えた。
「元気ですよー?」
「思ったんだけどさ、なんで外科に通ってんの?」
普通『血液の病気』なら血液内科だ。
もしくは内科だろうけど彼女は外科に通院していた。
「あ、お兄ちゃんが外科なんでそっちに通ってるんです。小さいころから私の身体はお兄ちゃんが知ってるんで。」
「まぁ、そうかなーとは思ってたけど。」
「『いちいち検査結果を議論するのが面倒くさい』そうで(笑)」
「わからんでもないけどな。」
小森もそうだけど、俺たち医者は基本的なことは全部学んできてる。
それぞれ進む『科』によってより深く知ってくことにはなるけど、だいたいのことはわかる。
だからいちいち・・・『なんでこの項目の検査をしなかったのか』とか『これは前も検査した』とかいうのがでてくるのが面倒だったんだろう。
「私も大学があるんで朝とか昼は病院に行けないし・・・。予約で行くのが難しいんです。血液検査なんて朝に行かないと結果出るまでめっちゃ時間かかるし。」
「あ、それもあるのか。」
「こういう時、兄がお医者さんでよかったなーって思います(笑)」
「ははっ。確かに。」
小森の言ってた通り、自分の病気を気にしてない彼女。
生活に合わせて検査を受けてるようだから一安心だった。
俺たちはその後、車の中で他愛のない話を繰り返した。
一華は今朝、お腹が空きすぎてサンドイッチを早弁したこととかを笑いながら話す。
俺は小森の学生時代の失態を一華にチクっていた。
「えー?お兄ちゃん、そんなことしてたんですか?」
「うん。教授とかにめっちゃ怒られてた(笑)」
「あははっ。」
30分くらいの時間なんてあっという間で、喋ってる間に俺たちはアクアリウムに着いた。
車から下りて入り口に向かい、チケットを買って中に入る。
「あのっ・・!チケット代・・・!」
俺が二人分を買ったからか、一華が財布をごそごそと出しながら後ろをついてきていた。
「いいよ、小森の妹なんだし。」
「でも・・・」
「気にするな。それより・・・デカい水槽があんましなさそうなんだけど・・・どうする?」
小さめなアクアリウムだからかあまりにも大きいものはなかった。
そこそこ大きいのはあるけど、これで一華の疑問が解消されるか心配だった。
「あ、そこは大丈夫です。大きくても小さくてもあまり変わらないと思うので。」
「そう?じゃあ・・・どうぞ?」
そういうと一華はリュックからバインダーを取り出した。
足りないであろうものをすぐに見つけたのか、描いていく。
「邪魔だろ?持っててやるよ。」
俺は一華のリュックを預かった。
一華は真剣に水槽を眺めながら描いて・・・水槽に近づいてじーっと見たりしてる。
この辺は・・・兄妹だなと思った。
(小森も集中したら回りが見えないというか・・・すっごい観察するんだよな。)
同じことをする二人に少し笑いながら俺は別の水槽を眺めることにした。
小さい魚だけの水槽に、大きい魚が優雅に泳ぐ水槽。
奥にはペンギンが数羽いてそうだけど、一華がまだ真剣に描いてるから近くのソファーみたいな椅子に座ってじーっと水槽を眺めていた。
(・・・癒しってやつだなー。)
ゆらゆらと揺れる水が、時間の流れを穏やかにしていく気がする。
ぼーっとしながら水槽を眺めてるうちに俺はいつの間にか瞼を閉じてしまっていた。
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