好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。

文字の大きさ
上 下
11 / 36

デート・・・?2

しおりを挟む
ーーーーー




「?・・・あぁ、場所知らないだろ?車のほうが近いと思うから・・・もう講義は終わり?」

「は・・はい。あ、でも鞄がまだゼミに・・・・」

「じゃあ車取りに行ってくる。そうだな・・・そこのバスターミナルで待っててくれる?」

「わかりましたっ。」


俺と一華は一旦別れ、一華は鞄を、俺は車を取りに戻った。




ーーーーー




一華と待ち合わせをしてるバスターミナルについた俺は、車から下りて一華が来るのを待っていた。

俺の車を知らないであろう一華が迷うといけないと思ったからだ。


じーっと大学の門を見つめてると、大きなリュックを背負った一華が門から出て来るのが見えた。


「あっ・・!桐生さんっ。」

(・・・可愛い。)


にこっと笑って大きく手を振る一華は、さっきとは別人のように見えた。

男に肩を抱かれて嫌そうにしてた一華はほんとに不機嫌そうで・・・男に肩を抱かれる前は凛としてきれいだった。

今は、無邪気に笑っててとても21歳には見えない。


(どーみても高校生だな。)


そんなことを思いながら俺は助手席のドアを開けた。


「どうぞ?」


そう言うと一華は大きなリュックを下ろして胸の前で抱えた。


「お願いしますっ。」

「お願いされます。」


助手席に座ったのを確認して、ドアを閉める。

運転席に乗り込んでエンジンをかけ、車を走り出させた。


「・・・どう?その後、体の調子は。」


そう聞くと一華は大きなリュックをぎゅっと抱きしめながら答えた。


「元気ですよー?」

「思ったんだけどさ、なんで外科に通ってんの?」


普通『血液の病気』なら血液内科だ。

もしくは内科だろうけど彼女は外科に通院していた。


「あ、お兄ちゃんが外科なんでそっちに通ってるんです。小さいころから私の身体はお兄ちゃんが知ってるんで。」

「まぁ、そうかなーとは思ってたけど。」

「『いちいち検査結果を議論するのが面倒くさい』そうで(笑)」

「わからんでもないけどな。」


小森もそうだけど、俺たち医者は基本的なことは全部学んできてる。

それぞれ進む『科』によってより深く知ってくことにはなるけど、だいたいのことはわかる。

だからいちいち・・・『なんでこの項目の検査をしなかったのか』とか『これは前も検査した』とかいうのがでてくるのが面倒だったんだろう。


「私も大学があるんで朝とか昼は病院に行けないし・・・。予約で行くのが難しいんです。血液検査なんて朝に行かないと結果出るまでめっちゃ時間かかるし。」

「あ、それもあるのか。」

「こういう時、兄がお医者さんでよかったなーって思います(笑)」

「ははっ。確かに。」


小森の言ってた通り、自分の病気を気にしてない彼女。

生活に合わせて検査を受けてるようだから一安心だった。


俺たちはその後、車の中で他愛のない話を繰り返した。

一華は今朝、お腹が空きすぎてサンドイッチを早弁したこととかを笑いながら話す。

俺は小森の学生時代の失態を一華にチクっていた。


「えー?お兄ちゃん、そんなことしてたんですか?」

「うん。教授とかにめっちゃ怒られてた(笑)」

「あははっ。」


30分くらいの時間なんてあっという間で、喋ってる間に俺たちはアクアリウムに着いた。

車から下りて入り口に向かい、チケットを買って中に入る。


「あのっ・・!チケット代・・・!」


俺が二人分を買ったからか、一華が財布をごそごそと出しながら後ろをついてきていた。


「いいよ、小森の妹なんだし。」

「でも・・・」

「気にするな。それより・・・デカい水槽があんましなさそうなんだけど・・・どうする?」


小さめなアクアリウムだからかあまりにも大きいものはなかった。

そこそこ大きいのはあるけど、これで一華の疑問が解消されるか心配だった。


「あ、そこは大丈夫です。大きくても小さくてもあまり変わらないと思うので。」

「そう?じゃあ・・・どうぞ?」


そういうと一華はリュックからバインダーを取り出した。

足りないであろうものをすぐに見つけたのか、描いていく。


「邪魔だろ?持っててやるよ。」


俺は一華のリュックを預かった。

一華は真剣に水槽を眺めながら描いて・・・水槽に近づいてじーっと見たりしてる。

この辺は・・・兄妹だなと思った。


(小森も集中したら回りが見えないというか・・・すっごい観察するんだよな。)


同じことをする二人に少し笑いながら俺は別の水槽を眺めることにした。

小さい魚だけの水槽に、大きい魚が優雅に泳ぐ水槽。

奥にはペンギンが数羽いてそうだけど、一華がまだ真剣に描いてるから近くのソファーみたいな椅子に座ってじーっと水槽を眺めていた。


(・・・癒しってやつだなー。)


ゆらゆらと揺れる水が、時間の流れを穏やかにしていく気がする。

ぼーっとしながら水槽を眺めてるうちに俺はいつの間にか瞼を閉じてしまっていた。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...