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買い物。

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ーーーーー




同期の彼女とコーヒーもどうかと思ったけど、なかなか引かない彼女に俺はギブアップをした。


「・・・わかった。」

「!!」

「その代わりちゃんと小森に言ってくれ。俺とコーヒー飲んだって。」


疑われるのは好きじゃない。

仕事がしにくくならないように全てオープンにしてもらおうと彼女に言った。


「?・・・わかりました。まぁ、いつも全部報告するんで言うつもりですけど・・。」

「ならいいんだ。・・・行こう。」


俺たちは店を出て近くのカフェに入った。

そこで俺はブラックのコーヒーを、彼女はホットのココアを頼み二人で飲んだ。

特に話になる内容もない俺たちは基本無言だ。

時々彼女が話題を振ってきてはそれに答える。


それを繰り返してると・・・窓から射し込む光が彼女を照らし、髪の毛がきらきら光るのが目に入った。

ホットココアをふぅふぅと冷ましながらカップに口をつける彼女の仕草がキレイで・・・見つめてしまっていたから無言になってることは、俺自身気がついてなかった。


「なぁ・・・。」

「なんですか?」

「いくつ?」


小森のことを一瞬忘れて、俺は彼女のことを聞いた。


「私?21ですよ?」

「21・・・学生?」

「はい、ここからなら・・・5駅くらいのとこにある大学に通ってます。」

「へぇー・・・。一人暮らし?」

「はい、大学の近くに住んでます。桐生さんも一人暮らしですか?」

「うん。」



俺たちは話が弾み始め、お互いいろんなことを聞いた。

ハマってる食べ物や、朝起きたら必ずすることとか・・・。

彼女の話は面白く、とても分かりやすい説明だった。

悲しかったことの話をするときは悲しそうに話し、嬉しかった時の話をするときはほんとに嬉しそうに話す。

そんな彼女が可愛く思えだして・・・俺は自然と笑みがこぼれていた。


「学生だったら・・・卒業後は医療従事者目指してんの?」


カップに残っていたコーヒーを飲み干すようにして聞いた。

この前『スタットコール』を知っていた彼女。

あんなもの、医療従事者じゃないと知らないものだ。


「いえ、幼稚園の先生目指してます。」

「・・・へ?でも『スタットコール』知ってただろ?」

「あぁ、あれはかずくんが言うんで覚えたんですよ。『今日は珍しくスタットコールが二件も鳴った』とか?」


その言葉に俺は小森の存在を思い出した。

楽しく話をしてる目の前の女の子は・・『小森の彼女』だ。

俺の彼女じゃない。


「あ・・・そっか。」


俺は空になったコーヒーのカップを置いた。

そのまま伝票を持って席を立つ。


「俺、買い物あったの思い出した。・・・じゃあ。」

「え・・・あ、私払います・・・!」

「いいよ、七つも年下の女の子に奢ってもらうとか考えてないから。」

「いや、でも・・・!」

「小森によろしくな。じゃ。」


そう言って俺は会計を済ませてカフェを出た。

なんだか寂しいような・・・よくわからない感覚が心にある。


同期ひとの彼女と二人でカフェとか・・・行くんじゃなかった。)


『行くんじゃなかった』とか思いながら、思い返すのは彼女の笑った顔。

頭にこびりついて・・・離れそうもない。


(これ以上は考えないようにしないと・・・。)


同期の彼女に想いを寄せるのは悪いことだ。

実らない上に、バレた後の仕事関係が最悪になることは目に見えてる。

俺は何も考えないようにすることにし、家に帰った。






ーーーーー




その日の深夜、マンションのインターホンが鳴った。


ピンポーン・・・


玄関のドアを開けると、そこにはいつも来る・・・・ミエ?の姿があった。

胸の谷間がくっきり見えるような服に、羽織ってる上着が半分ずり落ちて肩が見えてる。


「ねぇ、シよ?」

「・・・また?」

「いいじゃんっ。」


女は入るなり玄関の鍵をかけた。

俺の腕をがしっと組んで、胸に押し当ててくる。


「今日はゴム持って来たんだぁ。」


そう言って鞄から箱に入ったコンドームを取り出した。


「いくつあんの?」

「えっとぉ・・・20コ?」

「ふーん。」


女は俺の手を引きながら迷うことなくベッドに向かっていく。

広めのワンルームは、玄関をくぐるとすぐにベッドが目に入る。

女はさっさとベッドに腰かけて服を脱ぎ始めた。


「ほら、早く寝て?」


服を全て脱いだ女がベッドをぽんぽんっと叩いた。

そう言われベッドに座ると、女は俺を押し倒してくる。

シャツのボタンを一つずつ外しながら身体を舐めてくる。


「気持ちイイ・・・?」

「・・・別に。」


カチャカチャとズボンのベルトを外し、俺のモノをしごいていく女。

舐めたり口に咥えたりしながら俺のモノを勃たせようと必死そうだ。


「あれー?全然おっきくならない・・・。」

「・・・。」


特にシたいとおもってなかったからか、俺はその気にならなかった。

『今日は気分じゃない』・・・そう言おうと女を見た時、ふと気がついた。

俺のモノを口に咥えてる女は・・・小森の彼女と似たような髪型だった。

ふわふわとした髪の毛に・・・一瞬彼女を重ねてしまう。


「ふぁ!?急に大きくなった・・・。」

(・・・しまった。)


女は持って来たゴムの箱を開け、一つ取り出した。

器用に俺のモノにつけていく。


「ねぇ・・・私の、触ってくれないの・・?」


上目づかいで聞きながら、自分で自分のを触ってる。

くちゅくちゅと音を立てながら指を二本、自分のナカに出し入れしてるのが見えた。


「・・・自分でシてんじゃん。」

「だって早く欲しいもん・・・。」


そう言いながら女は俺の上にまたがり、自分のナカに押し込んでいった。


「あっ・・・!おっきぃっ・・!」


そのままゆっくり腰を落として全部入れ、腰を振り始める。


ぐちゅっ・・・ぐちゅっ・・・


「あぁっ・・!イイっ・・!」

(俺・・・何してんだろ・・。)


勝手に腰を振ってる女が体の上にいる。

好きでもない女を・・・抱いてる。

その光景に嫌気がさしてきた。


愛のない営みなんて・・・単なる作業にしかすぎない。


「あん!!すごいぃっ!!・・イくっ・・イっちゃう!!あぁぁーーー!」


女が果てたのを見て、俺は女を体の上から下ろした。

そのまま自分のモノを引き抜く。


くぷんっ・・・


「はぁっ・・はぁっ・・・え・・?」

「もういいだろ?」

「・・・えぇ!?」

「服着たら帰れよ。もう来るな。」


俺はゴムを外し、ゴミ箱に捨てた。

脱がされた服を着て、キッチンに向かった。

冷蔵庫に入ってる炭酸水を取り出してごくっと飲んだ。


「もうシないのぉー?」


まだシたそうな女だけど、俺はもう嫌になっていた。

性欲処理をしに来てるこの女は俺のことを全然知らない。

何が好きで何が嫌いで・・・どんなことに興味があるのかなんて露ほども知らないだろう。

俺もこの女のことは知らない。

どんな仕事をしてるのかとか、普段、どんな生活を送ってるのか・・・。

知りたいとも思わなかった。


でもこの女は俺に足を開く。

知らないであろう俺に足を開く。

その軽さ加減にいい加減嫌悪感を覚えた。

それは自分自身にも当てはまるものだけど。


「今更だけど、お前・・・なんなの?」

「・・・・え?」

「先月の飲みの席で声かけてきて、ここに押し掛けるようになったよな?」

「そう・・だけど・・・。」

「ヤりたいだけならもう来るな。もうシない。」


女は自分の服をもそもそと拾い始めた。


「だって・・・気持ちイイんだもん・・・。」

「・・・・。」


ぼそっと呟くように言った女は、下着を穿き、ブラをつけ、服を着ていく。


「ねぇ、私を彼女にしてよ。体の相性はいいでしょ?」

「体の相性って・・・」

「私、口でするの上手いでしょ?現にさっき大きくなったし!」


『それは違う』・・・そう言おうかと思ったけどやめた。

俺の考えなんて俺にしかわからない。


「もうシない。二度と来ないでくれ。」


そう言うと女は服を全部着て、ベッドから下りた。

無言で玄関まで行って、靴を履く。


「あなたにその気が無くても・・・また会うことになるわ。」

「・・・え?」


女はそう言い残して帰っていった。

俺は閉められた玄関ドアを見つめた。


「また会うって・・・?」


よくわからない言葉が一瞬頭を悩ませたけど、それは女の最後の嫌がらせと思い、忘れることにした。

またベッドのシーツを剥がし、ゴミ袋に詰めていく。

新しいシーツを取り出してベッドにバサッとかけた。


「ふー・・・。女の香水の匂いがまだ残ってるな。」


俺は消臭スプレーを部屋中に振りまき、ベッドに寝ころんだ。

爽やかな石鹸の匂いに変わった空間で、彼女のことを思い出す。


(あの子・・・香水って感じより石鹸とかシャンプーの匂いが合いそう・・・。)


純粋な笑顔を思い出しながら、俺はうとうとと眠りにつき始めた。












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