47 / 56
卒業試験。
しおりを挟む翌日・・・
先生「・・・始め。」
俺は今、りらと一緒に卒業試験を受けてる。
今日の授業が全て終わって、学校にいる生徒が全て去った後にテストが始まった。
たった二人で受けるテスト。
お互いのシャーペンの走る音だけが聞こえてくる。
カリカリ・・・カリカリ・・・
全ての教科が数枚に納まってるこのテスト。
制限時間は2時間。
その間に・・・全部の教科を解いていく。
問題数は少ないものの・・・どれもこれも難しいものばかりだ。
秋臣(これ・・・受かるかな・・・。)
分からない問題も・・・いくつかある。
制限時間が限られてることから、分からないものは飛ばしていき・・・次から次に解いていく。
時間が余れば・・・もう一度考えれる。
先生「・・・終了だ。」
あっという間の2時間。
俺とりらはシャーペンを置き、先生に答案を持って行った。
先生「この場で採点してやるよ。中谷は・・・しばらく休むんだろ?」
先生は赤ペンを取り出して、自分の鞄から回答を出した。
俺らの答案と照らし合わせながら丸を付けていく。
りら「もう来れないと思うので・・・できれば合格したいです。」
先生「・・・そうか。」
シュッ・・シュッ・・・と丸が付けられ、先生はりらに答案を返した。
先生「・・・全教科90点以上。・・・合格だ。」
りら「やった・・・!」
先生「卒業式には来いよ?最優秀で名前呼ぶからな?あと答辞とな。」
りら「・・・・がんばります。」
りらの次は俺の答案。
先生は赤ペンでシュッ・・シュッ・・と丸を付けていく。
先生「お前は?音楽の道に行くのか?」
秋臣「行くというか・・・もう行ってますし。」
先生「まー・・・特殊な世界だろうし、大変だと思うけど・・・頑張れよ?」
秋臣「はい。」
答案に点数を書いた先生は、俺に返してくれた。
先生「全教科90点以上。・・・工藤も合格だな。」
秋臣「よっし・・・!」
先生「お前も卒業式には来いよ?」
秋臣「はいっ。」
俺とりらは答案を受け取ったあと、二人で顔を見合わせて笑った。
りら「オミくん、おめでとうっ。」
秋臣「りらもおめでとう。」
笑い合いながらりらは自分の席で荷物をまとめ始めた。
置いてあった教科書や、体操服、ゴミ一つまで残さないようにして、全部の荷物をかばんに詰め込んだ。
秋臣「全部・・・持って帰るのか?」
りら「うん・・・。」
秋臣「俺が持ってくから・・・。」
パンパンになったりらの荷物をひょいと持ち上げ、俺はりらと一緒に歩き始めた。
教室を出る時、りらは振り返って自分の席を見つめて・・・
りら「・・・・ばいばい。」
と、小さく言った。
秋臣「調子いいときに来ればいいだろ?大丈夫、卒業式にも来るんだしな。」
りら「うん・・・そうだね・・・。」
寂しそうな顔をするりらと一緒に学校を出て、俺たちは病院に戻った。
放課後にテストをしたことでだいぶ遅くなった挙句、りらは数歩歩いては休憩を繰り返す。
俺たちが病院に戻ったのは夜9時のことで・・・お兄さんがかなり心配した様子で待ち構えていた。
葵「どっかで倒れてるのかと思ったぞ?」
ベッドにダイブして眠ってしまったりらに言うお兄さん。
返事をできないりらに変わって俺が答える。
秋臣「りら、テストに合格しました。卒業は確定です。」
葵「おぉ!よかったな!オミは?」
秋臣「俺もです。ずっとりらと一緒にいれる・・・。」
来週からは一緒に寝泊まりもできる。
俺はそれが楽しみで仕方なかった。
葵「・・・正直助かるよ。俺も仕事があるから・・・ずっとは側にいてやれないし。」
秋臣「任せてください。ずっとそばにいます。」
そう言うとりらのお兄さんは後ろ手に頭を一掻きしたあと・・・俺に深く頭を下げた。
葵「妹の・・・時間はもう少ない。助けてやれない代わりに幸せにしてやりたいんだ。・・・自分勝手なのはわかってる。妹を・・・りらをよろしくお願いいたします・・・。」
これでもかというくらい頭を下げるお兄さん。
俺のことを信頼して言ってくれたのがよくわかった。
秋臣「・・・誰よりも世界一幸せにしてみせます。こちらこそ・・よろしくお願いいたします。」
俺も深く・・・深く頭を下げた。
不安が無いといえば嘘になる。
でもそんなこと、りらに気取られるわけにはいかない。
葵「来週な、ベッドの搬入するから。あ、メシはどうする?」
秋臣「あー・・・りらと一緒のをお願いできますか?」
葵「それは大丈夫だ。あと、りらにはオミが一緒に暮らすことナイショにしてるから。驚くぞ?(笑)」
秋臣「ですね(笑)」
お兄さんと結託して、りらには俺が一緒に住むことは伝えてない。
驚きの刺激もいいかと思って・・・ナイショにすることにしたのだ。
葵「楽しみだな。」
秋臣「ですね。」
この日も俺はこのまま家に帰った。
今作ってる曲を来週までに最後まで仕上げていくため、ノートに書きこんでいく。
秋臣「これはこっちの音で・・・こっちはこのコード・・・で、こっちはーーーーーーーーー」
もうテスト勉強はしなくていい。
俺は夜遅くまで曲を書き続けて・・・今日を終えていった。
10
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説


虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる