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卒業試験。
しおりを挟む翌日・・・
先生「・・・始め。」
俺は今、りらと一緒に卒業試験を受けてる。
今日の授業が全て終わって、学校にいる生徒が全て去った後にテストが始まった。
たった二人で受けるテスト。
お互いのシャーペンの走る音だけが聞こえてくる。
カリカリ・・・カリカリ・・・
全ての教科が数枚に納まってるこのテスト。
制限時間は2時間。
その間に・・・全部の教科を解いていく。
問題数は少ないものの・・・どれもこれも難しいものばかりだ。
秋臣(これ・・・受かるかな・・・。)
分からない問題も・・・いくつかある。
制限時間が限られてることから、分からないものは飛ばしていき・・・次から次に解いていく。
時間が余れば・・・もう一度考えれる。
先生「・・・終了だ。」
あっという間の2時間。
俺とりらはシャーペンを置き、先生に答案を持って行った。
先生「この場で採点してやるよ。中谷は・・・しばらく休むんだろ?」
先生は赤ペンを取り出して、自分の鞄から回答を出した。
俺らの答案と照らし合わせながら丸を付けていく。
りら「もう来れないと思うので・・・できれば合格したいです。」
先生「・・・そうか。」
シュッ・・シュッ・・・と丸が付けられ、先生はりらに答案を返した。
先生「・・・全教科90点以上。・・・合格だ。」
りら「やった・・・!」
先生「卒業式には来いよ?最優秀で名前呼ぶからな?あと答辞とな。」
りら「・・・・がんばります。」
りらの次は俺の答案。
先生は赤ペンでシュッ・・シュッ・・と丸を付けていく。
先生「お前は?音楽の道に行くのか?」
秋臣「行くというか・・・もう行ってますし。」
先生「まー・・・特殊な世界だろうし、大変だと思うけど・・・頑張れよ?」
秋臣「はい。」
答案に点数を書いた先生は、俺に返してくれた。
先生「全教科90点以上。・・・工藤も合格だな。」
秋臣「よっし・・・!」
先生「お前も卒業式には来いよ?」
秋臣「はいっ。」
俺とりらは答案を受け取ったあと、二人で顔を見合わせて笑った。
りら「オミくん、おめでとうっ。」
秋臣「りらもおめでとう。」
笑い合いながらりらは自分の席で荷物をまとめ始めた。
置いてあった教科書や、体操服、ゴミ一つまで残さないようにして、全部の荷物をかばんに詰め込んだ。
秋臣「全部・・・持って帰るのか?」
りら「うん・・・。」
秋臣「俺が持ってくから・・・。」
パンパンになったりらの荷物をひょいと持ち上げ、俺はりらと一緒に歩き始めた。
教室を出る時、りらは振り返って自分の席を見つめて・・・
りら「・・・・ばいばい。」
と、小さく言った。
秋臣「調子いいときに来ればいいだろ?大丈夫、卒業式にも来るんだしな。」
りら「うん・・・そうだね・・・。」
寂しそうな顔をするりらと一緒に学校を出て、俺たちは病院に戻った。
放課後にテストをしたことでだいぶ遅くなった挙句、りらは数歩歩いては休憩を繰り返す。
俺たちが病院に戻ったのは夜9時のことで・・・お兄さんがかなり心配した様子で待ち構えていた。
葵「どっかで倒れてるのかと思ったぞ?」
ベッドにダイブして眠ってしまったりらに言うお兄さん。
返事をできないりらに変わって俺が答える。
秋臣「りら、テストに合格しました。卒業は確定です。」
葵「おぉ!よかったな!オミは?」
秋臣「俺もです。ずっとりらと一緒にいれる・・・。」
来週からは一緒に寝泊まりもできる。
俺はそれが楽しみで仕方なかった。
葵「・・・正直助かるよ。俺も仕事があるから・・・ずっとは側にいてやれないし。」
秋臣「任せてください。ずっとそばにいます。」
そう言うとりらのお兄さんは後ろ手に頭を一掻きしたあと・・・俺に深く頭を下げた。
葵「妹の・・・時間はもう少ない。助けてやれない代わりに幸せにしてやりたいんだ。・・・自分勝手なのはわかってる。妹を・・・りらをよろしくお願いいたします・・・。」
これでもかというくらい頭を下げるお兄さん。
俺のことを信頼して言ってくれたのがよくわかった。
秋臣「・・・誰よりも世界一幸せにしてみせます。こちらこそ・・よろしくお願いいたします。」
俺も深く・・・深く頭を下げた。
不安が無いといえば嘘になる。
でもそんなこと、りらに気取られるわけにはいかない。
葵「来週な、ベッドの搬入するから。あ、メシはどうする?」
秋臣「あー・・・りらと一緒のをお願いできますか?」
葵「それは大丈夫だ。あと、りらにはオミが一緒に暮らすことナイショにしてるから。驚くぞ?(笑)」
秋臣「ですね(笑)」
お兄さんと結託して、りらには俺が一緒に住むことは伝えてない。
驚きの刺激もいいかと思って・・・ナイショにすることにしたのだ。
葵「楽しみだな。」
秋臣「ですね。」
この日も俺はこのまま家に帰った。
今作ってる曲を来週までに最後まで仕上げていくため、ノートに書きこんでいく。
秋臣「これはこっちの音で・・・こっちはこのコード・・・で、こっちはーーーーーーーーー」
もうテスト勉強はしなくていい。
俺は夜遅くまで曲を書き続けて・・・今日を終えていった。
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