死が二人を別こうとも。

すずなり。

文字の大きさ
上 下
38 / 56

月日が流れるのは早いもの。

しおりを挟む





ーーーーーーーーー







ーーーーーーーーー








ーーーーーー







りらがうちに遊びに来てから・・・数週間。

時々学校を休むことはあっても、りらは元気に学校に来ていた。


暑い季節は終わりを告げて、朝晩が寒い季節に突入する。

コートこそはまだいらないものの、りらは風邪を引かないようにとマフラーをしてくるようになった。





りら「オミくんっ、テスト、どこまでいった?」



お昼ご飯を食べてるときに参考書を広げながらりらが聞いてきた。



秋臣「あー・・結構進んだけど?」

りら「やばい・・・追いつかれる日も近いかも・・。」

秋臣「すぐに抜いてやるさ。」




そんな話をしながらお弁当を食べていた時、翼が俺たちの前に現れた。



翼「なーなー、オミー。俺、今日パン1個しかないからおかず分けてくれっ。」



そう言って俺の弁当に手を伸ばして卵焼きを一つ奪い取った。



秋臣「あっ!!」

翼「いっただっきまーす!」



ぱくっと口に放り込んだ翼。

もぐもぐ食べながらも・・・味がないことに気がついたようだ。



翼「・・・あれ?」

秋臣「・・・・。」




卵焼きを飲み込んだあと、翼は俺の弁当に入ってるかぼちゃの煮物にも手を出した。

ぱくっと口に放り込んで味を確かめてる。



翼「・・・・・。」

秋臣(どうしよう・・・。)




翼が何て言って口を開くのか待ってると、翼は口を開かずにりらの弁当のおかずに手を出した。

一つ、つまんで口に放り込む。





翼「・・・・ふーん?ごちそうさま。」




そう言って翼は教室から出て行った。




りら「・・・味ないの・・気づいたよね・・?」

秋臣「たぶん・・・。でも翼は大丈夫だと思うんだけど・・。」




俺の秘密を教えたあとも、翼は誰にも話してない。

信用に値するやつなのは間違いない。




秋臣「言われたら・・・言っていい?」

りら「私のこと?いいけど?」

秋臣「ちゃんと口止めしとくから。」

りら「オミ君くんのことも知ってるんでしょ?なら大丈夫だと思うし・・・。」




今日の放課後あたりに翼は俺に聞いてくると思っていた。

でも聞いてくることなく時間は過ぎていき・・・いつも通り翼は帰っていった。



翼「じゃーなー、オミ。」

秋臣「おー・・・。」



スタスタと歩いて教室を出て行った翼。

翼のことだから気になってきたらきっと聞いてくるはず。

その時に説明することにして・・・俺もりらと一緒に帰った。







ーーーーーーーーーー








ーーーーーーー








ーーーー








年は明け、時間は過ぎて・・・俺たちは2年生になった。

クラス替えのないこの高校は・・・3年間、同じメンバーで過ごしていく。




りら「また同じクラスだねー(笑)」

秋臣「・・・クラス替えがないの知ってるだろ?」

りら「うんっ。オミくんと一緒ー。」



いつもと同じように授業を受けて、りらと一緒に弁当を食べて、病院に送って行く。

二人で時々出かけることもあるけど・・・俺はこの夏に一つ、計画してることがあった。

それはりらのお兄さんにも相談をしていて・・・ちゃんと許可も取ってある。

ただ一つ・・・問題があるんだけど。




秋臣(今度翼に頼むか。)









そんなことを考えながら、りらを病院まで送って行ったある日・・・








病院で翼が俺たちを待ち伏せしていた。












翼「・・・・よ。」

りら「!?」

秋臣「翼・・・。」





5階のナースステーションの前にある待合。

そこのソファーに・・翼が座っていた。





翼「・・・中谷ってさ、ここに入院してんだろ?」

りら「!!」

秋臣「どっから仕入れた?その情報。」

翼「この病院の人たちから。・・・事情、聞いてもいいか?」




俺たちは待合にのソファーに座り・・・りらの病気のことを話した。

心臓が悪いこと。

ここで寝泊まりしてること。

運動はだめなこと。

ご飯も・・・みんなと同じものは食べれないことを。




秋臣(余命のことは言わなくていいよな、ほんとかどうかもわかんないんだし・・。)



そう思って余命のことだけ伝えなかった。





翼「だからあの弁当、味が無かったのか。」

りら「あのね?このことみんなにはナイショにしてもらえるかな。負担に思われたくないから・・。」




『できるだけみんなといっしょがいい』と思ってるりら。

特別扱いは・・・好きじゃない。




翼「言わないよ?でもまぁ・・・なんかあったら言えよ?俺でできることならするし。」

りら「ありがとう。」

秋臣「翼、ちょっと待っててくれ、りらを送ったら俺も帰るから。」

翼「?・・わかった。」




俺はりらを連れて一番奥にある部屋に向かった。

ちゃんと送り届けるのが俺の仕事だ。




秋臣「悪い、りら。今日は帰る。」

りら「気をつけてねー?」

秋臣「うん。また明日な。」




そう言ってドアを閉め、俺は翼のところに戻った。




秋臣「翼、頼みがある。」

翼「?・・・なんだ?」




俺は夏に計画してることを翼に話した。

ものすごい金のかかる計画に、翼は目をぎょっとさせた。




翼「・・・・プールを貸切る!?」

秋臣「あぁ。市民プールを一日貸切る。でもな、俺とりらだけだったらりらが怪しむだろ?クラス全員連れ出せないか?」

翼「クラス全員って・・・・!」

秋臣「プールの水は全部腰の高さまで抜いてもらうようにお願いしてある。貸切るからそれは可能なんだよ。そのへんも上手く使って・・なんとかならないか?」




翼は仕切るのが上手い。

クラス会なんかあるときは決まって翼が司会を担当する。

その方がスムーズに流れるから。




翼「!!・・・できるけど・・。」

秋臣「なら頼むよ・・!」




海には入ったことがないってりらは言ってた。

それはおそらくプールも同じ。

波のあるプールに・・・入れたあげたいと思った。




翼「・・・・わかった。中谷の為なんだろ?」

秋臣「そうだ。」

翼「なら協力してやる。お前も俺が助けを求めた時は助けろよ?」

秋臣「もちろん。」




その日から俺は翼と綿密な計画を立て始めた。

どうやってクラス全員をプールに誘うか・・・

どうやって日にちを合わせるか・・・

毎日毎日少しずつ話を詰めていき・・・とうとう実行に移す日がやってくる。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

あの頃に戻れたら、会いたいだけで会いに行ける

川原にゃこ
恋愛
文官アルドリック・オルテガと女官メルロスは誰もが羨む恋仲であった。もう三つの春を共に過ごしたのだから、その付き合いは長い。そもそもの始まりは堅物のアルドリックの方からメルロスに何度も何度も熱っぽく求愛したのだから、何とも分からないものである。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

処理中です...