死が二人を別こうとも。

すずなり。

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翼。

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翼「お前、ほんとに喋んないんだな・・・。」





ボーリング場で3ゲームした俺と翼。

4ゲーム目に突入したのにまだ翼は聞いてくる。




秋臣「お前もしつこいけどな。」

翼「まぁ、『いつか』言ってくれるんなら『今』でもいいんじゃないかと思ってさ。・・・別にいつでもいいんだけどな。」

秋臣「・・・・。」





『いつか』翼にも俺の仕事のことを言う。

それは決めてたけど・・・『いつ』言うかは決めてない。




秋臣(まぁ・・・『今』でもいいのか。)



俺はボーリングの球を台に置き、椅子に座った。

鞄からケータイを取り出して、イヤホンをつける。




秋臣「これ、知ってるか?」




そう言って翼にイヤホンを差し出した。



翼「どれ?」




翼はイヤホンを受けとり、耳に入れる。

俺はケータイの画面に表示されてる再生ボタンを押した。



ピッ・・・・




♪~・・・




翼「『クレセント』の曲?一番代表的な奴じゃん。」

秋臣「・・・俺が作ったんだよ。」




そう言うと翼は目を見開いて俺を見た。



翼「作ったって・・・・え!?」

秋臣「『クレセント』の曲は大半が俺の曲なんだ。これから先に出す曲は・・・ほぼ俺の曲になる。」

翼「え!?・・・は!?」

秋臣「このこと知ってるのは親と学校、りらと・・・翼だけだからな。言いふらすなよ?」




そう言うと翼はイヤホンを抜き取り、俺に返してきた。

驚きを隠せないのか、俯き加減に床を見つめてる。




翼「・・・まさかこんなデカい秘密だったなんてな・・。」

秋臣「抱えきれないなら・・・距離を置いてくれていい。でもまだ公表はしたくないから・・・言わないでほしい。」





今はまだクレセントの作曲者の詮索はされてない。

なにかのきっかけで詮索され始めると・・・きっと学校にも通えなくなる。



今は・・・りらと学校を優先したい。






翼「・・・はぁー・・言っただろ?オミ。お前とは一生つきあうって。」

秋臣「!!」

翼「なめてもらっちゃ困る。俺は人の秘密やその人の迷惑になることは話さない。」

秋臣「・・・助かるよ。」





翼はボーリングの球を持ってピンに向かって投げた。

いい音を立ててピンは全部倒れ、見事ストライクを取った。

でも・・




秋臣「・・・翼、俺のターン・・。」

翼「細かいこと気にすんなって(笑)」

秋臣「いや、気にするし・・・。」



俺たちはこの後もボーリングをし続け、夜遅くに解散した。





翼「来週、学校でなー。」

秋臣「おぅ。」




ボーリング場を出たところで翼と解散し、暗い夜道を歩き始めた。

重たいボールを投げすぎて右腕がだるい俺は、左手で揉みながら歩く。




秋臣「・・・やりすぎた。」




若干後悔はするものの、楽しかったことは事実。

今日はもうピアノは弾けないことを確信しながら・・・俺は家に帰った。









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