死が二人を別こうとも。

すずなり。

文字の大きさ
上 下
35 / 56

黙ってたわけじゃないけど黙っててごめん。

しおりを挟む
ーーーーーーーーーー







ーーーーーーーーーー





翌週・・・土曜日。





りらを病院に迎えに行き、手をつないで街にくりだした。

久しぶりの外だからか、りらは少し興奮気味だ。




りら「へへっ、外だ外だっ。」

秋臣「無理すんなよ?体調が悪くなったらすぐに言えよ?」

りら「わかてるよぉっ。・・・どこいくの?」

秋臣「ナイショ。」




駅に向かい、電車に乗り・・・目的地に・・・向かう。





ーーーーーーーーーー








りら「・・・・・ここ?」




ついたところはライブハウス。

貸しきりの予約をしておいたところだ。




秋臣「ここ。」




りらはライブハウスを見上げて固まってる。

どうも初めてライブハウスを見たみたいだった。




りら「私・・・ライブって初めてなんだけど・・・なんでライブ?」

秋臣「今日はりらが好きなバンドが来るんだよ。」

りら「?・・・私が好きなバンド?クレセントがこんなとこに来るとは思えないんだけど・・・?」





雄星が所属するバンド『クレセント』は全国をツアーで回ってる。

何万人も動員して・・・十代や二十代の人たちの間で知らない者はいないほどの人気だ。



俺はりらの手を引いて、ライブハウスの中に入った。



秋臣「クレセントもスタートはライブハウスからだったの知ってる?」

りら「そうなの?」

秋臣「うん。最初は・・・ほとんどお客さんがいなくて・・・『向いてない』『やっていけない』って思うことが多かったんだって。」

りら「へぇー・・・。」



中に二つ置いてある椅子。

その椅子にりらを座らせて・・・ステージを見させた。




秋臣「それで・・・このライブハウスがクレセントが有名になったきっかけの場所。」

りら「そうなの!?」

秋臣「そう。だからここで・・・聞いて欲しいことがある。」

りら「聞いて欲しいこと?」

秋臣「りらが病気をナイショにしてるように・・・俺にも内緒ごとがある。それは親と学校と・・・翼しかしらないことなんだよ。」

りら「私と一緒なの?・・・わかんないけど・・・ちゃんと聞くよ?。」




俺はりらの隣に座った。

ほどなくして照明が軽く落ちて・・・雄星たち『クレセント』がステージに現れる。




雄星「・・・今日はライブに来てくれてありがとう。」




雄星の声を聞いて・・・りらが驚きながら俺を見た。



りら「!!・・・クレセントの雄星!?」

雄星「当たり(笑)小さめな音で弾くからもし気分が悪くなったら言えよ?」




りらは言葉を失って・・・顔を上下に振って答えた。


雄星「おっけ(笑)じゃあ最初の曲から!」



♬♪♬!





流れる音は家で聞くくらいの音量だ。

身体でビートを感じるくらいは響かない。

客もりら一人。

盛り上がるわけがない。



でも・・・

りらは目を輝かせながら見入っていた。

両手で口元を隠して・・・足をぱたぱたさせながら。




秋臣(嬉しそう。)



そんなりらの姿を見てるうちに1曲目が終わり・・・雄星が俺を呼んだ。




雄星「・・・・オミ!」

りら「!?」

秋臣「・・・ちょっと行ってくる。」

りら「え!?・・・え!?」




『訳がわからない』って顔であちこちを見てるりら。

俺は椅子から立ち上がり、そのままステージに上がった。




雄星「次はピアノがメインなんだよ。」

りら「・・・ピアノ!?」

雄星「オミが弾いてくれるからちょっと待ってな?」




俺は用意してもらってたピアノの椅子に座って・・・鍵盤を押し始めた。



♪~・・・♬♫♪ー・・・




りら「わ・・・きれい・・・。」





俺のピアノに合わせてボーカルが言葉を乗せていく。

ときどきりらを見ると・・・りらはずっと『俺』を見てくれていた。

演奏が終わるまで・・・ずーっと・・。






ーーーーーーーーーー





りら「すごいっ・・・!」




曲が終わると、りらはこれでもかってくらい拍手をしてくれ・・・椅子から立ち上がっていた。




りら「なんで!?なんでクレセントの雄星がオミくんのことを知ってるの!?」

雄星「それは・・・・」

秋臣「クレセントの曲は俺が作ったからなんだよ。」




そう言うと拍手をしていたりらの手が止まった。



りら「え・・・・?」

雄星「俺たちクレセントが売れたのは・・・秋臣の曲をもらったからなんだよ。作曲は秋臣だ。」

りら「嘘っ・・・。」

秋臣「本当。」

りら「だってさっきの曲・・・2年くらい前の曲だよ!?」

秋臣「中学に入ったころから作ってる。もう辞めてたんだけど・・・最近活動を再開し始めたんだ。」




りらは両手を口に当てて・・・目を見開いた。

俺と雄星を交互に見てる。



りら「じゃ・・じゃあ、私が好きな曲ってもしかして・・・全部・・・・・」

秋臣「・・・俺の曲だった。」

りら「!?」

秋臣「作曲を再開するつもりはなかったんだ。でも・・・りらと付き合えることになって・・・音が止まんなくなって・・・」

りら「私!?」

秋臣「また作り始めた。・・・黙ってたわけじゃなかったんだけど・・・黙っててごめん。」




そういうとりらは・・・口元にあてていた手を外して胸の辺りでぎゅっと握った。

顔は俺の方を向いて・・・言った。




りら「もっと・・・聞かせてもらっていい?」

秋臣「!!・・・あとは雄星たち『クレセント』に任せるよ。一緒に聞こう?」




そういうとりらは椅子に座って、俺の席をぽんぽんっと叩いた。



りら「うんうんっ!!」

秋臣「雄星、頼んだ。」

雄星「おっけ!じゃあ今日は時間の限り聞いてくれよ?」




俺が作った曲を演奏するクレセント。

それをりらは目を輝かせて見てる。




秋臣(雄星たちに頼んでよかった。)




たった30分だけど俺の為に空けてくれたクレセントに感謝しながら、俺とりらはこの時間を目一杯楽しんだ。













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

あの頃に戻れたら、会いたいだけで会いに行ける

川原にゃこ
恋愛
文官アルドリック・オルテガと女官メルロスは誰もが羨む恋仲であった。もう三つの春を共に過ごしたのだから、その付き合いは長い。そもそもの始まりは堅物のアルドリックの方からメルロスに何度も何度も熱っぽく求愛したのだから、何とも分からないものである。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

処理中です...