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プラネタリウム。
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夏休みに入ってすぐ、俺はりらとプラネタリウムに行くことになった。
ケータイで調べると、電車で5駅ほどのところにプラネタリウムがあるのがわかった。
俺は病院に迎えに行って今、りらと一緒に電車に乗ってる。
りら「楽しみだねー。」
秋臣「そうだな。」
電車の椅子に座ってるりらは、腰まである髪の毛の耳のところで可愛い飾りをつけていた。
それは星の形をしていて、今日のプラネタリウムに合わせたみたいだった。
秋臣「星・・・好きなのか?」
そう聞くとりらは笑顔を振りまきながら答えた。
りら「好きだよ?」
秋臣「そっか。」
りら「オミくんは?」
秋臣「俺は・・・あんまり気にして見たことないから・・・今日は楽しみ。」
りら「そっか。」
きらきら光る髪留めが眩しくて、俺は細目にりらを見ていた。
髪留めが眩しいのか・・・りらが眩しいのかはわからないけど。
りら「あっ、もう下りる?」
秋臣「お、そうだな。」
電車で5駅はあっという間。
目的の駅に着いた俺たちは電車から降りてプラネタリウムに向かった。
ーーーーーーーーーーー
りら「すごいねぇー・・・。」
プラネタリウムについた俺たちはチケットを買って中に入った。
『カップルシート』と呼ばれるソファーベッドみたいなのがいくつかあって、りらはそれを選んで寝っ転がった。
俺も隣に寝ころび・・・天井を見上げる。
秋臣「よく見えそう。」
りら「楽しみー・・・。」
ほどなくして室内は暗くなっていき、ドーム型の天井に星が映り始める。
アナウンスはソファーに埋め込まれてるスピーカーから聞こえる仕組みになっていて・・・俺とりらの二人の世界のようにも感じれた。
りら「・・・・ねぇ、オミくん?」
スピーカーからの説明を聞きながら、天井に散らばる星たちを見つめながらりらが俺に話しかけてきた。
秋臣「どうした?」
りら「あと二年くらいしたら・・・あの星のどれかに私がなるから・・・見つけて?」
秋臣「!!」
りら「・・・ごめんね。」
俺はなんて言っていいかわからなかった。
『りらの全て』を聞いてはいたけど信じてはいない。
こんなに元気なのに・・・高校を卒業するまでに死ぬとか・・・信じられなかったから。
秋臣「・・・わかった。」
俺は深く考えずに答えた。
この答えが後々に・・・俺を悩ますことになるなんて思いもせずに。
りら「・・・ふふ。ありがと。」
にこっと笑ったりら。
その顔があまりにも可愛くて・・きれいで・・・
俺はりらの顔に自分の顔を近づけた。
りら「?」
ゆっくりと・・・近づけると・・・りらは意味が分かったようでそっと目を閉じた。
秋臣「!!」
俺たちはそのまま静かに唇を・・・重ねた。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
りら「・・・もー・・全然説明が頭に入ってない。」
プラネタリウムの上映が終わった後、顔を真っ赤にして俺を見るりら。
説明が頭に入ってないのは・・・色んな意味で俺も一緒だ。
秋臣「・・・かわいかったから。」
りら「!?・・・もうっ。」
秋臣「ショップ見て帰ろっか。疲れる前に帰った方がいいだろ?」
りら「・・・うん。」
少し俯くりら。
まだデートしたそうだけど・・・
秋臣「毎日病院に行く。それならいい?」
そう聞くとりらの表情が一気に晴れた。
りら「うんっ。」
秋臣(あー、もう・・・ほんとにかわいい・・。)
りらの手を取って、俺はショップに向かって足を進めた。
ショップでいろいろ見てるりらをずっと見て・・・どういうのが好きかを覚えていった。
ーーーーーーーーーー
りら「楽しかったーっ。」
葵「そりゃよかったな。」
プラネタリウムを出て病院に戻ってきた俺は、ソファーに座って水を飲んでいた。
りらはベッドでお兄さんに聴診されてる。
葵「しんどくないか?」
りら「大丈夫ー。」
葵「プラネタリウム、どうだった?」
りら「えーっとねー・・・。」
りらはお兄さんに聞かれてプラネタリウムのことを話そうとした。
話そうとしたけど・・・俺と唇を重ねたことを思い出したようで、途端に顔を赤く染めた。
りら「---っ!」
葵「?・・りら?」
りら「たっ・・楽しかったっ・・・よ・・?」
葵「?」
りらがおかしな答え方をしたからか、お兄さんは俺の方を見た。
その瞬間、なんか悪いことをしたような気がして・・・俺は目線を反らした。
葵「・・・。」
秋臣「・・・。」
葵「・・・・。」
秋臣「・・・・。」
気まずい空気が流れる中、りらが口を開いた。
りら「もういい?」
葵「え?・・・あぁ、いいぞ。心臓の動きも問題ない。」
りら「やったっ。」
ベッドから下りて俺の隣に座ったりら。
おもむろに参考書を手に取って俺に聞いてくる。
りら「オミくん、次のテスト、いつ受ける?」
秋臣「俺は・・・夏休みの間に3つくらい受けたいけど・・・ちょっと用事もあって・・・。」
りら「用事?」
秋臣「うん。・・・来週の水曜日だけ・・・ここに来れないんだよ。ごめん。」
毎日来るって言ったのに来れない日がある。
申し訳なく言うと、りらはにこにこしながら言った。
りら「全然大丈夫だよ?毎日なんて申し訳ないし・・・。」
秋臣「その代わりって言っちゃなんだけど・・・調子いいときにうちに来る?」
りら「・・・いいの!?」
秋臣「かぁさんも喜ぶと思うよ。」
りら「行く!」
新しい約束を取り付け、俺たちは勉強に励んだ。
この1年でりらに追いつきたい俺は頑張るしか道はない。
秋臣(来週学校行って一個受けて・・・受かったらそのまままた受けて・・・。)
色々考えながら、俺はりらと勉強をして過ごした。
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