死が二人を別こうとも。

すずなり。

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もう一度、告白。

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りら「・・・聞いた?お兄ちゃんから。」

秋臣「うん。」



いつも座るソファーに腰かけると、隣に中谷が座った。



秋臣「で・・・返事・・・。」

りら「え?」

秋臣「すぐに欲しいとは言わないけど・・・・・。」




そう言うと中谷は俺の顔を覗き込んできた。




りら「・・・ちゃんと聞いたんだよね?」

秋臣「聞いた。でも・・・正直・・わからない。」

りら「『わからない』?」

秋臣「先のことはわからないけど・・・俺は中谷が好きだ。・・・付き合って欲しい。」




そう言うと中谷はおかしな表情を俺に見せた。

驚いてるような・・・

呆れてるような・・・

嬉しいような・・・

悲しいような・・・・




りら「・・・・。」

秋臣「今日はもう遅いし・・・明日、また来る。おやすみ。」

りら「おやすみ・・・。」





俺はソファーから立ち上がり、荷物を持って部屋を出た。




ーーーーーーーーーー






ーーーーーーーーーー






りらside・・・




『おやすみ』と言って部屋を出て行った工藤くんの背中をずっと見送った。

思いがけない展開に、頭が混乱する。



りら「・・・工藤くんが私を好きってことも驚いたけど・・・返事って・・・。」




『返事』なんてできるわけがない。

私は彼と一緒に未来を歩くことができないんだから・・・。




りら「どうやって答えたらいいんだろう・・。」



頭を悩ませながらベッドに転がった時、部屋のドアが開く音が聞こえた。

ノックも無しに入ってくるのはお兄ちゃんくらいだ。



葵「りら?まだ起きてんのか?」

りら「お兄ちゃん・・・。」



ベッドに転ばせてた体を起こして、椅子みたいにして座る。

お兄ちゃんは私の前にきて、屈んだ。




葵「どうした?寝れない?」

りら「・・・さっき、工藤くんが来て・・・。」




そう言うとお兄ちゃんは驚いた顔をした。




葵「そうか・・・。」

りら「?」

葵「ほら、もう寝ろ。」




私の体をベッドに沈め、布団をかけてきた。

よしよしと頭を撫でられ、お兄ちゃんは私の体を少し診る。



りら「・・・お兄ちゃんは・・聞いた?」

葵「何を?・・・あぁ、工藤がりらのこと好きってやつ?」

りら「・・・うん。」

葵「聞いて・・・りらはどう思った?」

りら「どうって・・・・。」





そりゃあ・・・よく知らない人から『好きです』とか言われても困るけど・・・

工藤くんは同じクラスで・・・よく知ってる人だ。

同じクラスの男の子たちの中でも大きい体格で目を引く存在。

休み時間とかは男の子たちとよく遊んでて・・・よく笑う。

男女問わず優しく接してくれてて・・・気がつけば目で追ってた。

私も彼に惹かれてる。





葵「・・・・その顔じゃ、りらも好きってことか。」

りら「え?」

葵「まぁ・・・りらはずっと『大人の中』にいるから・・・同級生たちと比べると精神年齢が上だ。だから・・・諦めたり、先のことを考えすぎたりすることが多い。我慢もな。」

りら「そうかな?」

葵「工藤もそんな感じしたけど・・・ちょっとは自分のことを考えてみたらどうだ?やりたいことはやったほうがいい。それはみんな一緒だ。」

りら「やりたいこと・・・。」





・・・両想いってわかったら・・・付き合いたいに決まってる。

でも・・・この先私はどうなるかわからない。

工藤くんに心配や迷惑をかけることも多い。

多いってもんじゃない。

『迷惑』しかない。。





葵「あいつは・・・・」

りら「?」

葵「工藤は、りらと一緒にいたいって思ってんだろ?その気持ちも考えてやれよ?・・おやすみ。」

りら「・・おやすみなさい。」




電気を消して病室を出て行ったお兄ちゃん。

薄っすらと光ってる天井のライトを見つめながら、工藤くんのことを考えた




りら「『先のことはわからない』って言ってたよね。・・・私もわかんないけど・・。」



自分が工藤くんの立場だったらどうだろう。

好きな人が・・・余命短い。

その事実を知った後、私なら・・・?



りら「・・・側にいたいって思う。」



でも私は『遺す側』の人間だ。

自分は死んで・・・『意識』というものが無くなる。

そうなると私は何も『思う』ことができなくなる。

出来なくなるというか、『無』になる。

そうなったとき・・・きっと工藤くんは悲しむだろう。

そのことを考えるだけで私の胸が締め付けられる。

なら、側にいないほうがいい。



でも・・・




りら「私の命が短いことを・・・工藤くんは知ってる。」






『遺される側』の気持ちは・・・計り知れないけど、工藤くんともう一度話すことが大事だと思った。





りら「明日・・・ちゃんと、ゆっくり話そ。」




疲れた体を癒すため、私は目を閉じた。







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