死が二人を別こうとも。

すずなり。

文字の大きさ
上 下
21 / 56

告白。

しおりを挟む



笑顔で答えた中谷。




秋臣「!!・・・なんで?」

りら「・・・・え?」




さっき顔を真っ赤にして涙を流した中谷の顔が離れない。




秋臣「なんで『ごめん』?」

りら「それは・・・心臓が悪いから・・・。」

秋臣「そんなの関係ない。俺は中谷の気持ちが聞きたい。」

りら「それは・・・・・。」




口ごもってしまった彼女。

言えないなら・・・違う方向から聞いてみる。



秋臣「俺が『好き』って言うの・・・わかってたんだろ?」

りら「え?・・・あ、それは・・・わかんなかった。」

秋臣「へ?」

りら「もう友達やめるって言われると思って・・・言われたくなかったから・・・・。」

秋臣(・・・・あぁ、そういうことか。)





中谷の体のことを知ってる友達はいない。

気を使わずに接することができるのは、俺だけなんだ。

『部屋』と言う名の病室で他愛のない話をしたり、一緒に勉強する。

学校帰りにクラスメイトとカフェに行ったりすることはできないけど、病院で出されるおやつを俺と一緒に食べたりする。

みんなと遊園地に遊びにはいけないけど、俺と一緒に病院の中庭を散歩する。



そんな些細なことだけど、彼女にとってはすごく楽しいことなんだ。




秋臣「・・・俺に絶縁状でも叩きつけられるとでも思った?」

りら「・・・・うん。」

秋臣「なんでそんなこと思うんだよ・・・。」

りら「・・・海・・入れないし・・・いつも病院だし・・・。」




見た目はみんなと一緒でも制限がある。

それは仕方のないこと。

そんな彼女を『守りたい』と思うのは・・・恋をしてるからだろうか。




秋臣「中谷は・・・俺のことをどう思ってる?」

りら「どうって・・・。」

秋臣「嫌い?」

りら「嫌いじゃないよっ。むしろ好・・・・・」



慌てて右手で自分の口を塞いだ彼女。

俺は彼女に近づき・・・その手を取った。



秋臣「『むしろ』・・・?」

りら「~~~~っ。・・・病院で・・・お兄ちゃんに私の病気のことを聞いてくれる?」

秋臣「?・・・今更?」

りら「聞いて欲しいの。聞いた後で・・・さっき言ってくれたことをもっかい考えて欲しい。」




よくわからないけど、俺は了承した。

とりあえず電車に乗り込み、病院に向かう。

社内の椅子に座ってる彼女は一言も喋らず・・・外も見ず・・・ただ自分の手を見ていた。

膝の上に乗せてる自分の手を・・・じーっと見ていた。




秋臣(病気って心臓って言ってたよな?お兄さんに話を聞けってことは・・・?)


いくら考えても先が読めない。




秋臣(まぁ・・・聞けばいいんだもんな。)




ガタガタと揺れる電車。

1時間ほど揺られて俺たちは病院の最寄り駅についた。

駅を出ても彼女は喋らない。



秋臣「・・・お兄さんは今日仕事?」

りら「・・・うん。」

秋臣「・・・。」

りら「・・・。」





『うん』だけ言って、また無言になってしまった。

俺たちはまるで喧嘩でもしてるかのように微妙な距離で病院まで歩いた。






ーーーーーーーーーーーーー







りら「お兄ちゃん、呼んで欲しいんですけど。」




病院についた俺たちはナースステーションに立ち寄っていた。

中谷が看護師に声をかけてる。



看護師「いいわよ?どうかした?」

りら「カウンセリングルームにって言っといてもらえますか?」

看護師「わかったわ。」

りら「工藤くん、こっち。」

秋臣「ん。」





中谷はナースステーションのすぐ隣の部屋を開けた。




りら「どうぞ。」

秋臣「オジャマシマス・・・。」



中は机と椅子があるだけのシンプルな部屋だった。

ホワイトボードもあるから・・・説明?をするような部屋っぽい。



りら「お兄ちゃんに『りらの全てを』って聞いて?そのあとは帰ってくれてもいいし、もう来なくてもいいから・・・。」




彼女はドアに手をかけて悲しそうに言った。



秋臣「『帰っても』ってことは『帰らなくてもいい』ってことだよな?」

りら「そう・・・だね。」



にこっと笑ってドアをあけ、彼女は出て行った。

俺は近くにあった椅子を引き、座った。




秋臣(『全て』・・・か。)



頭の中で色々考えを巡らせてる時、ドアをノックする音が聞こえた。



コンコン・・・ガラガラガラ・・・




葵「?・・・りらは?」




入ってきたのは中谷のお兄さんだ。

俺は中谷に言われたことをそのままお兄さんに伝える。








秋臣「俺に『りらの全て』を教えてください。」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

あの頃に戻れたら、会いたいだけで会いに行ける

川原にゃこ
恋愛
文官アルドリック・オルテガと女官メルロスは誰もが羨む恋仲であった。もう三つの春を共に過ごしたのだから、その付き合いは長い。そもそもの始まりは堅物のアルドリックの方からメルロスに何度も何度も熱っぽく求愛したのだから、何とも分からないものである。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

処理中です...