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告白。
しおりを挟む笑顔で答えた中谷。
秋臣「!!・・・なんで?」
りら「・・・・え?」
さっき顔を真っ赤にして涙を流した中谷の顔が離れない。
秋臣「なんで『ごめん』?」
りら「それは・・・心臓が悪いから・・・。」
秋臣「そんなの関係ない。俺は中谷の気持ちが聞きたい。」
りら「それは・・・・・。」
口ごもってしまった彼女。
言えないなら・・・違う方向から聞いてみる。
秋臣「俺が『好き』って言うの・・・わかってたんだろ?」
りら「え?・・・あ、それは・・・わかんなかった。」
秋臣「へ?」
りら「もう友達やめるって言われると思って・・・言われたくなかったから・・・・。」
秋臣(・・・・あぁ、そういうことか。)
中谷の体のことを知ってる友達はいない。
気を使わずに接することができるのは、俺だけなんだ。
『部屋』と言う名の病室で他愛のない話をしたり、一緒に勉強する。
学校帰りにクラスメイトとカフェに行ったりすることはできないけど、病院で出されるおやつを俺と一緒に食べたりする。
みんなと遊園地に遊びにはいけないけど、俺と一緒に病院の中庭を散歩する。
そんな些細なことだけど、彼女にとってはすごく楽しいことなんだ。
秋臣「・・・俺に絶縁状でも叩きつけられるとでも思った?」
りら「・・・・うん。」
秋臣「なんでそんなこと思うんだよ・・・。」
りら「・・・海・・入れないし・・・いつも病院だし・・・。」
見た目はみんなと一緒でも制限がある。
それは仕方のないこと。
そんな彼女を『守りたい』と思うのは・・・恋をしてるからだろうか。
秋臣「中谷は・・・俺のことをどう思ってる?」
りら「どうって・・・。」
秋臣「嫌い?」
りら「嫌いじゃないよっ。むしろ好・・・・・」
慌てて右手で自分の口を塞いだ彼女。
俺は彼女に近づき・・・その手を取った。
秋臣「『むしろ』・・・?」
りら「~~~~っ。・・・病院で・・・お兄ちゃんに私の病気のことを聞いてくれる?」
秋臣「?・・・今更?」
りら「聞いて欲しいの。聞いた後で・・・さっき言ってくれたことをもっかい考えて欲しい。」
よくわからないけど、俺は了承した。
とりあえず電車に乗り込み、病院に向かう。
社内の椅子に座ってる彼女は一言も喋らず・・・外も見ず・・・ただ自分の手を見ていた。
膝の上に乗せてる自分の手を・・・じーっと見ていた。
秋臣(病気って心臓って言ってたよな?お兄さんに話を聞けってことは・・・?)
いくら考えても先が読めない。
秋臣(まぁ・・・聞けばいいんだもんな。)
ガタガタと揺れる電車。
1時間ほど揺られて俺たちは病院の最寄り駅についた。
駅を出ても彼女は喋らない。
秋臣「・・・お兄さんは今日仕事?」
りら「・・・うん。」
秋臣「・・・。」
りら「・・・。」
『うん』だけ言って、また無言になってしまった。
俺たちはまるで喧嘩でもしてるかのように微妙な距離で病院まで歩いた。
ーーーーーーーーーーーーー
りら「お兄ちゃん、呼んで欲しいんですけど。」
病院についた俺たちはナースステーションに立ち寄っていた。
中谷が看護師に声をかけてる。
看護師「いいわよ?どうかした?」
りら「カウンセリングルームにって言っといてもらえますか?」
看護師「わかったわ。」
りら「工藤くん、こっち。」
秋臣「ん。」
中谷はナースステーションのすぐ隣の部屋を開けた。
りら「どうぞ。」
秋臣「オジャマシマス・・・。」
中は机と椅子があるだけのシンプルな部屋だった。
ホワイトボードもあるから・・・説明?をするような部屋っぽい。
りら「お兄ちゃんに『りらの全てを』って聞いて?そのあとは帰ってくれてもいいし、もう来なくてもいいから・・・。」
彼女はドアに手をかけて悲しそうに言った。
秋臣「『帰っても』ってことは『帰らなくてもいい』ってことだよな?」
りら「そう・・・だね。」
にこっと笑ってドアをあけ、彼女は出て行った。
俺は近くにあった椅子を引き、座った。
秋臣(『全て』・・・か。)
頭の中で色々考えを巡らせてる時、ドアをノックする音が聞こえた。
コンコン・・・ガラガラガラ・・・
葵「?・・・りらは?」
入ってきたのは中谷のお兄さんだ。
俺は中谷に言われたことをそのままお兄さんに伝える。
秋臣「俺に『りらの全て』を教えてください。」
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