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無事終了。
しおりを挟む一般テストが始まって2週間が経った。
前倒しテストも無事終わり、今は中谷と一緒に海に来ている。
前に中谷が倒れた・・あの海だ。
りら「夕方もきれいだねー。」
秋臣「そうだな。」
日差しが緩くなる夕方に時間を絞ってきた俺たち。
この前みたいに岩に座って、ぼーっと海を眺めてる。
中谷は日傘を準備していたようで、隣でさしていた。
りら「どう?テストの手ごたえは。」
秋臣「あー・・・多分大丈夫。中谷は?」
りら「満点は無理かな(笑)」
秋臣「おー・・言うねぇ・・・。」
ザザーっと音を立てて寄せてくる波。
決まった動きをしない波を見てると、時間が一瞬で流れてしまいそうだった。
りら「・・・工藤くんって海に入ったことある?」
秋臣「ある・・・けど?」
りら「波って感じるの?」
秋臣「表面だけかな?あんまり激しくなければ。」
りら「そっか・・・。」
遠くを見るようにして海を見てる彼女。
心臓が悪いって聞いてることから、海はダメなんだろう。
秋臣「泳いじゃ・・・ダメなんだよな?」
りら「うん。」
秋臣「お風呂は?」
りら「そんな深くなければ大丈夫だよ?」
秋臣「そっか。」
少しずつ引き出してきた中谷の情報。
『知らない』なら『知れば』いい。
勉強は・・・何のためにするのかわからないけど、好きな子のことを知るための勉強なら喜んでする。
みんなそんなものだろう。
りら「・・・へへっ。」
秋臣「---っ!」
無邪気に笑う彼女。
学校で見せる顔とはまた違う。
秋臣(好きだって・・・言いたい。)
毎日のように中谷の部屋に遊びに行った。
今日だって二人で海に来てる。
一緒にいる時間は・・・どのクラスメイトよりも長い。
何より・・・彼女の秘密を知ってる。
りら「そろそろ帰ろっか。」
長時間、熱いとこにいると危険。
それはこの前身をもって学習した。
秋臣「あぁ。その前に・・・話がある。」
そう言うと、中谷は一瞬悲しそうな顔をした。
りら「それは・・・聞きたくない・・かも?」
秋臣「・・・なんで?」
りら「・・・なんででも。」
日傘を畳んで立ち上がった彼女。
クルクルと傘を回して閉じていく。
秋臣「俺がなんの話をするかわからないだろ?」
りら「わからないけど・・・なんとなくわかるから・・・。」
『聞かない』と言わんばかりに中谷は歩き始めた。
砂浜に足を取られながら駅に向かって歩いていく。
秋臣「待てよ・・・!」
りら「話をしないなら待つ。」
ずんずんと進んで行ってしまう彼女。
もう声を届けるには叫ぶしかない。
秋臣「っ!・・・好きだ!」
俺の言葉に・・・彼女は足を止めた。
ゆっくり振り返る。
りら「え・・・・?」
秋臣「中谷のことが好きだ。・・・付き合って欲しい。」
中谷は驚いたのか・・・持っていた荷物を全て落としてしまった。
両手で口元を隠し、俺を見てる。
りら「今・・・なんて・・・・。」
秋臣「同じクラスになってから・・・いつも笑ってる中谷に惹かれた。誰とでも屈託なく話す姿が・・・頭から離れなくなっていって・・・。」
りら「---っ!」
秋臣「・・・付き合って欲しい。」
期待半分、怖さ半分で中谷を見る。
中谷は・・・顔を真っ赤にしながら涙をこぼした。
秋臣「え・・・?」
りら「あ・・・。」
自分が涙をこぼしてることに気がついたのか、中谷はごしごしと目を擦った。
落としてしまった荷物を拾い上げ、俺を見る。
りら「へへっ・・・ありがとう。でも・・・ごめん。」
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