死が二人を別こうとも。

すずなり。

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夕方。

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秋臣「・・・どこで聞けばいいんだ?」



学校が終わったあと、授業のノートを持って病院に来たのはいいけど、中谷のお兄さんが見つけれずにウロウロしていた俺。

近くにいた看護師さんに声をかける。



秋臣「あの、すみません。」

看護師「どうかされました?」

秋臣「人を探してて・・・中谷・・・」



お兄さんの名前がわからずに、一瞬詰まった。



看護師「りらちゃん?」

秋臣「え?」

看護師「りらちゃんなら5階の一番奥よ?」

秋臣「あ・・・わかりました・・・。」




看護師から出てきた『りら』って名前。

5階って言ってたことから入院してるっぽい感じがした。



秋臣「・・・行ったら分かるか。」



俺はエレベーターを探して5階に上がった。

エレベーターのドアの向こうは1本の廊下。

『一番奥』と言ってたから歩き進める。



秋臣「・・・『心臓内科』?」


ナースステーションにでかでかと書かれていた文字。

よくわからずに歩き進めていくと、一番奥に『中谷りら』と書かれた部屋があった。




秋臣「・・・入院してたのか。」




俺はドアをノックした。



コンコン・・・




りら「はーい。」



病室の中から聞こえた中谷の声。



秋臣(意外と元気・・・?)



俺はドアに手をかけ・・・開けた。



ガチャ・・・



秋臣「失礼します・・・?」


中は、病室とは思えないくらい広かった。

タンスや棚、テーブル、ソファー・・・

『家』と間違えてしまうほどの空間だ。



りら「え・・・工藤くん!?」



俺に気がついた中谷。

どうも机で勉強してたっぽかった。



りら「なんで・・・」

秋臣「さっき看護師さんが教えてくれて・・・入院?」

りら「そう・・・だけど・・・・。」

秋臣「病室にしては・・・豪華?」



辺りを見回しながら聞いてるとき、病室のドアが開いた。



ガチャ・・・




葵「りら、今日の点滴だけど・・・・って、工藤!?おま・・・なんでここに!?」

秋臣「・・・ども。」

葵「・・・。」

りら「・・・。」

秋臣「?」



二人は固まりながら俺を見てる。



葵「・・・どうする?りら。」

りら「・・・・・・。」



中谷は勉強してた机から離れ、俺とお兄さんのもとに来た。



りら「・・・言う。」

葵「わかった。」

秋臣「?」

りら「工藤くん、ソファー座って?」

秋臣「・・・うん。」





俺は言われた通りにソファーに座った。

俺の隣に中谷が座る。



秋臣「あ、これ・・・今日のノート。」

りら「わざわざ持ってきてくれたの?」

秋臣「うん。1週間も休んでたし・・・いるかと思って。」

りら「ありがと。」




ノートを受け取った中谷は、ペラペラとノートをめくった。




りら「・・・すごい。すごく詳しく書いてある。」

秋臣「中谷より成績は下だけど・・・俺は一応上位にはいるんだよ。」

りら「へへっ。」



ノートを見てる中谷より、俺は病室の中が気になって仕方ない。

私物で溢れてる室内。

生活感が溢れてるけど、ベッドの周りには機械がたくさん置かれてる。


秋臣「なんか・・・変わった病室・・・。」



そう言うと、中谷はノートを閉じてテーブルの上に置いた。





りら「私ね、ずっと入院してるの。」

秋臣「?・・・『ずっと』?」

りら「心臓が悪くて・・・毎日点滴しなきゃいけないからここから学校に通ってるの。」

秋臣「へぇー・・・。」





心臓が悪いってことは運動とか・・・ダメな気がする。

他にもいろいろ制限があったようなことを・・・テレビで言ってたのを思い出した。




りら「学校の先生たちは知ってるんだけど、生徒で知ってるのは工藤くんだけ。・・・だから内緒にしてね?」

秋臣「わかった。」




『内緒』と言われたら喋らない。

自分自身内緒にしてることがあるから、秘密事は慣れてる。

それよりも聞きたいことがあった。




秋臣「あのさ、離れの校舎にいたのって・・・やっぱ中谷?」



そう聞くと、中谷のお兄さんが口を開いた。




葵「離れの保健室のことも知ってるのか?」

秋臣「?・・・えーと・・・金曜日の昼休みに通りかかって?」

葵「ならバレるのも時間の問題だったってわけか。」




お兄さんは、離れの校舎にある保健室の説明をしてくれた。

体育は基本的にしちゃダメだけど、中谷の希望を尊重して出てること。

そのあと具合が悪くなるから、保健室で休んでることを。



葵「学校の先生たちにお願いして四時間目に体育をしてもらってる。昼休みを使えば回復するから。」

秋臣「なるほど・・・。」

りら「明日は学校行くし・・・よろしくね?」

秋臣「もちろん。」





あまり長居をいちゃいけないかと思って、俺はソファーから立ち上がった。





秋臣「じゃあ・・・俺はこれで・・。」

りら「ばいばーい。」

秋臣「ばい。」

葵「俺も仕事に戻るからあとでな。」

りら「はーい。」





俺は病室・・・もとい、中谷の部屋を出て廊下を歩き始めた。

歩きながらお兄さんが話しかけてくる。




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